【 『シータ』空の姫君 】
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贈呈者 |
DAIDAI【橙】
さま |
2012年8月1日 |
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DAIDAI【橙】様から
シータ(ルシータ・トゥエル・ウル・ラピュタ)嬢をいただきました♪
・・・山深いゴンドアの谷でヤクを飼いながら、静かに暮らしていた少女シータ。
しかし、突然現れた政府特務機関の男たちによってその平和な生活は破られ、少女はムスカ
大佐に拉致されてしまいました。ところが、護送されていた飛行船が空中海賊ドーラ一家に
襲われ、その騒ぎの隙に少女は逃げ出そうとして飛行船から転落してしまいます。
墜落の恐怖に気を失い絶体絶命のシータでしたが、その時、少女の家に先祖から代々伝わる
ペンダントが輝き、少女の体を青い光で包みました。そして、ゆっくりと地上へ舞い降りて
くる少女を助けたのは、鉱山の見習い機械工の少年パズーでした。
シータが軍や海賊に追われているのを知った少年は、少女を守って鉱山の奥深くへ逃げ込み、
そこで、少女の持つ不思議なペンダントの石が古のラピュタ人しか結晶化する術を知らない
飛行石である事、そして、少女の真の名がルシータ・トゥエル・ウル・ラピュタである事を
知ります。ラピュタ、それは空に浮かぶ城にあるという伝説の王国、そして少年の父が発見
したにもかかわらず世間からは信じてもらえず、いつか自分の手で見つけ出そうとしていた
ものだったのです。ラピュタは本当にあるんだと喜ぶ少年でしたが、その矢先、再び現れた
ムスカによって少女は捕らえられてしまいます。
自分がラピュタ王家の正統の跡継ぎであると聞かされて戸惑う少女に向かって、ラピュタの
在処を執拗に尋問するムスカ。しかし、彼もまたラピュタ王家の末裔であり、王国を再興し、
自ら王となる野望を抱いていたのです。
こうして、ラピュタの鍵を握る少女シータを巡るムスカ、軍、海賊、そしてパズーの戦いと
冒険が繰り広げられていくのでした・・・
この作品からは、世が世ならばルシータ姫として天空城の王女宮で暮らしていたであろう
シータ嬢の、凛とした気高さが感じられます。
もし、シータ嬢が本当にラピュタの姫君として生まれ育っていたなら・・・
13歳となった姫君が大人の女性への一歩を踏み出した徴(しるし)を受け、今朝はその
お祝いを兼ね、古来よりのしきたりに則り正式な第一王位継承権者として青のペンダントを
身に付け、皆にお披露目を日でした。
侍女を下がらせ一人禊ぎを終えた王女は、ドレスに伸ばした手をふと止め、壁のスイッチを
押しました。すると、微かにブーンとうなって結晶構造を変えたセラミックのドーム天井と
外壁が、外側は白亜の城壁の堅固そうな外見そのままに、内側からはみるみる透明になり、
最初からそこには遮る物などなかったかのように外の景色が見えるようになりました。
王女がそうすると侍女たちは大抵落ち着かない様子でしたが、それは、まるで自分が大空に
抱かれているような気持ちにさせ、特に、地上では朝まだきのこの時間、一足早く天空城に
射し初める陽の光に白んでいく空を見るのが、少女はとても好きでした。
振り返った王女は鏡に映る自分を見つめます。鏡の中の少女にはまだ幼さが残っていますが、
王女は自分がもう子供ではないのを自覚していました。ただ、庭園で小鳥やキツネリスたち
と時を忘れて戯れる事はもうできないのだと思うと一抹の寂しさを感じますが、それよりも、
いつかお母様のような立派な女王になりたいという思いが少女の胸を満たしていきます。
いつの日か、わたしにも娘ができて、その娘が同じ年頃になった時、今わたしがお母様に
抱いているような憧れをわたしにも向けてくれるかしら・・・
いいえ、きっとそんなすてきな女性(ひと)になってみせるわ・・・
ああ、もうこんなに空が明るく・・・もう行かなくては
物思いから醒めた王女は身支度を整え、王宮へ続く回廊を進みます。
今日のこの日の思いを決して忘れまいと心に誓いながら、少女の瞳はどこまでも真っ直ぐに
前を見つめていました。
・・・と、こんなシーンがあったのかもしれません。
あるいは、もっと幻想の翼を広げて、もう一人の王女の物語を紡げるかもしれません。
そう、これは、この国最後の女王とその姫の物語です。
それは今から七百年くらい前、とある小さな王国の錬金術師が、ほんの偶然から、物質を
特殊な方法で結晶化すると物性が変わり、それまで想像もしなかった力が現われる事を発見
します。そこから瞬く間に研究は進み、飛行石や記憶演算結晶、天の雷、オートマトン等が
次々に発明され、巨大な城を天空に浮上させたその国は百年も経ずに地上すべてを睥睨する
までになりました。
それから三百年余り、栄華を極めた王国にもやがて陰りが見え始めます。原因は王族間の
権力闘争でした。文明がいくら発達しても人から嫉妬や妬みが消え去る事は無いのでしょう。
そもそもはこの王国も他の国同様王様が君臨する国でしたが、ある代の王の治世、強大な
力を秘めた天空城の核心たる制御装置を動かすキーである制御結晶を王しか使えないように
するため、錬金術博士に命じて彼の遺伝情報を認識する機能を付け加えた新たな制御結晶を
作らせたのです。そして、その秘密を封印するために、その博士は完成後に亡き者にされて
しまいます。
しかし、おそらく博士もそうなる予感がしていたのでしょう、新しい制御結晶は王ではなく
歳若く心の優しい王妃にしか反応せず、しかも今までの制御結晶は使えなくなっていました。
王が制御結晶を使える方法はただ一つ、それを王妃の膣に収め、交合して放った彼の精の
遺伝情報を認識させる事でしたが、それでもその効果は三日しか続きませんでした。そして
王妃の危機に際しては彼女を守ることを最優先指令とし、彼女にしか使えない天空城を活動
停止または崩壊させるコードが結晶には組み込まれていました。
これは、密かに王妃を愛していた博士が、傲慢な王に彼女をないがしろにさせないために
したことでしたが、思わぬ副作用として、それが遺伝情報を探査するわずかな放射が王妃の
肉体に影響を及ぼし、王妃とその子孫には女の子しか生まれなくなってしまいました。
やがてこの王国は代々女王が統べる国となり、その時の王様の前妃が産んだ男子から発した
分王家と女王家は、時には和合し時には反発しながら、微妙なバランスを保ってきたのです。
主要登場人物紹介&あらすじ
【ルシータ姫】少々お転婆な部分はあるが責任感が強く心の優しい少女、13歳、婚約者の
ロクバルを兄のように慕っていたが裏切られ、すべてを奪われ彼の浮遊城に幽閉の身となる。
制御結晶を我が物とし続けるためロクバルから陵辱を繰り返される日々に一時は死を望んだ
が、自分が身ごもっているのを知り、生きることを選ぶ。幽閉から一年近く後、蜂起した旧
女王派によって助け出されるが、味方の浮遊城群が天の雷によって次々に撃破され、多くの
人々が非業の死を迎えるのを目の当たりにして、王国の持つ力が人間が持つには大き過ぎる
ものだという事に気付く。子供時代遊び場にした秘密の抜け道を使い、天空城の中心区画へ
侵入、ロクバルと対決する。戦闘用オートマトンに包囲されあわやという刹那、制御結晶が
ロクバルを所有者と認めるタイムリミットが過ぎ、オートマトンたちは彼の命令を受け付け
なくなった。怒り狂った彼が発砲に及んだ時、制御室の自動防衛機構がロクバルを排除する。
すべてが終った時、傷ついた天空城を再建できるほどの錬金術師たちはほとんどが死に絶え、
ルシータは国民に天空城を捨てる事を宣言したが、初めて自ら受けた自らの強大すぎる力に
慄いた国民たちに異議を唱えるものはなかった。分王家の生き残りに国民たちを託し、母の
眠る天空城を空に帰したルシータは、天空城の力が再び使われる事が無いよう、自らの身を
隠せる場所を求めてさ迷い、人里から隔絶したゴンドアの谷に辿り着く。そこで娘を産んだ
彼女の傍らにはアスランが連れ添っていた。
【アスラン】正義感の強い見習い錬金術師の少年、15歳、子供時代、王女宮を抜け出した
ルシータと庭園で何度か遊んだ事があるが、その時は少女が王女である事を知らなかった。
いつか自分の船(飛行クルーザー)で世界中を探検するのが夢であり、飛行機械や非戦闘用
オートマトンの制御に詳しい。幽閉された王女の奪回に加わりルシータと再会、以後行動を
共にし、後に結ばれる。
【フェリス女王】ルシータ姫の母、35歳、夫とは死別。国民からは国の母として敬われて
いたが、ロクバルの野望に気付いた時、彼によって殺されてしまう。
【ロクバル】分王家の嫡子、18歳、ルシータ姫の婚約者だったが、幼い頃に聞かされた現
女王家誕生の秘話に憤りを感じ、自分こそがこの国の王でなければならないと頑なに信じた。
そして、それを覆す方策を探して陰で制御結晶の研究を行い、優しい仮面の裏で王位奪還の
野望をいだく。後に女王を暗殺し、奪った制御結晶を自分の意のままにするため、軟禁した
ルシータ姫を陵辱し、得た力を背景に王家復活を宣言した。
なお、ロクバルには御手付きの小間使いがいたようであり、彼の研究資料はその娘の子供を
通じ代々受け継がれていった。
その他の人々
【自由商人】飛行武装商船を駆り、王国と地上世界との商売(時には密貿易)や情報屋など
かなり怪しげな稼業を営む。昔、フェリス女王に助けられた恩義から、ルシータ救出に尽力
する。
構想10年、執筆は順調に進み、上梓まであとわずか、乞うご期待!!(ウソウソw)
otto |
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