【  赤毛のアン  】


贈呈者 おしろい伯爵 さま 2012年3月10日




おしろい伯爵様から

アン・シャーリー&ダイアナ・バリー嬢をいただきました♪


・・・1897年、リンゴの花が咲き乱れる季節、カナダ東部のプリンスエドワード島に、
ノヴァスコシアの孤児院から来た、燃えるような赤い髪の少女が降り立った。
 アボンリー村で農業を営むカスバート兄妹が歳をとって、手伝いのできる男の子を養子に
欲しいとスペンサー夫人に頼んだのだが、何の手違いか、駅まで出迎えに行ったマシュウ・
カスバートがそこで目にしたのは、11歳の女の子だった。少女の名はアン・シャーリー。
戸惑いながらも、とりあえずアンをグリーンゲイブルズへ連れ帰ることにしたマシュウは、
道すがら、次第に少女のおしゃべりに引き込まれていった。
しかし、グリーンゲイブルズに着いた早々、マシュウの妹マリラ・カスバートから孤児院へ
帰すと言われ、アンは悲しみに突き落とされてしまう。だが、マシュウのたっての願いで、
アンはグリーンゲイブルズに置いてもらえることになった。
 それからしばらくして、お隣のバリー家に招待されたアンは、その家の同い年の、黒髪の
少女ダイアナと出会い、永遠の心の友を得たのだった・・・



 そして、今日、午後に用事で出かけるマリラの許しをもらったアンは、ダイアナをお茶に
招き、大喜びをしたダイアナは、2番目に上等な晴れ着に身を包み、グリーンゲイブルズへ
やって来た。
「ごきげんよう
よくいらっしゃいました、ミス・ダイアナ・バリー」
「今日は、お招きいただきありがとうございます、ミス・アン・シャーリー」
「さあさ、どうぞお入りくださいな」
 アンは、お茶の前にダイアナを自分の部屋に案内した。
「ここがわたしのお部屋、ダイアナのお部屋みたいに美しいタペストリーとかはないけど、
窓の外の景色はとってもきれいで、春には雪の女王が満開になるの
それに、丘の上のダイアナのお家も見えるのよ」
「本当にいい眺めね、それにお部屋も片付いててきれいだわ
わたしお片付けが苦手で、よくお母さんに叱られるの」
「ありがとうダイアナ
それにしても、ダイアナの服、とってもすてきね
わたしもいっぺんでいいから、そんなの着てみたいわ
マリラったら、せっかく新しい服を作ってくれたのに、地味なのばかりなのよ
子供がごてごて着飾るなんて、バカらしいんですって」
「なら、アン、お洋服、取り替えっこしてみない?」
「え? 本当? 本当にいいの、ダイアナ」
「ええ、アンが喜んでくれるのなら、わたしもうれしいわ」

 そう言うと少女たちは服を脱いで、下着姿になりました。そして、ダイアナが自分の服を
アンに差し出したのですが、なぜか、アンはそれを受け取ろうとしませんでした。
「アン、どうしたの?」
「あの、ダイアナ・・・ついでと言っては何だけど、もう一つ、お願いしてもいいかしら?」
「なあに、アン」
「ねえ、ダイアナ・・・ダイアナは、もう、お股に毛が生えてる?」
「え?・・・急にそんなこと聞いて、どうしたのよ、アン」
「あのね、わたしが前にお世話になった、トーマス家にいたエリーザお姉さんは、とっても
美しい金髪だったの・・・それでね、エリーザさんはわたしに優しくて、台所でよく一緒に
桶で行水してくれたわ
そして、見たの・・・お股の毛も金髪なのを・・・
 ほら、わたしの髪の毛、こんな色でしょ? わたし、まだ生えてないけど、お股の毛まで
赤くなるのかと思うと、気が気でなくて・・・
もしダイアナのが黒かったら、もう運命だと思ってあきらめるしかないわ
だから、お願いよ、ダイアナ・・・」
「アンたら、そんなこと、気にしてたの・・・いいわ・・・見せてあげる
だって、わたしたち、太陽と月のあらん限り、友情を誓い合った仲ですものね」
「ありがとう、ダイアナ! ああっ、持つべきものは心の友ね?
もちろん、ダイアナだけにさせないわ、わたしもダイアナに見てもらうわ
心の友には、どんなことも隠し事はなしよ」

 窓辺から射す午後の日差しに少女たちの裸身が照らし出されます。ダイアナを見たアンは、
今日返ってくるはずだった結果の不安だった試験の答案が先延ばしにされたように、どこか
ほっとする気持ちがしました。
「役に立てなくてごめんなさい、アン、わたしもやっぱりまだなの」
「ううん、そんなことない、ダイアナがわたしのためにしてくれたこと、一生忘れないわ
ダイアナ、とってもきれいよ」
「恥ずかしいわ・・・
だって、わたし甘いものが大好きだから、太ってるんですもの
いつか、ジョーシー・パイみたいになってしまうんじゃないかって、心配なの」
「あら、ダイアナ、女の子らしくてすてきよ
それに比べて、わたし、やせっぽちでしょ?
マリラったら、もう少しおしゃべりを止めれば、きっとおまえにも肉が付いて、ちょっとは
見栄えがよくなるだろうよ、なんて言うのよ」
「まあっ!? ウフフフ、マリラおばさんらしいわ」

 グリーンゲイブルズでは、夏の木漏れ日のような少女たちの笑い声が明るくさんざめいて
いました。


 アンの疑問が解明されるには、それからもう1年ほど自身の成長を待たねばなりませんで
した。そして、そのことでアンはまた騒動を起します。
それは13歳になったアンが物語クラブの面々ときらめきの湖で白百合姫を演じた時のこと、
死せる白百合姫に扮したアンは、役になりきろうとして、黒いショールのみを身にまとい、
ボートで流されます。ところがそのボートは船底が傷んでおり、浸水して沈みだし、途中に
架かっていた橋の橋脚にしがみついたアンは、ちょうど近くで釣りをしていたギルバートに
助けられます。しかし、橋脚からギルバートのボートに飛び移ろうとしたアンはバランスを
崩し、ボートで尻餅をついた拍子に両手で船べりをつかんで、身体を蔽っていたショールを
はだけさせてしまいました。
突然、アンのあられもない姿を見てしまったギルバートは、目を逸らすこともできず呆然と
してしまい、思わず『ここの毛も赤いんだ』と口走ってしまいます。それを聞いたアンは、
教室でギルバートから自分の赤毛をからかわれた記憶が鮮明によみがえり、目に涙を溜め、
恥ずかしさに今にも泣き出しそうだったのも忘れて少年の頬を打ち、再び、そして今度こそ、
自分が生きている限り、一生ギルバートを許さないと心に固く誓ったのでした。


                                      otto