【　　七つの海のティコ　　】
贈呈者	おしろい伯爵 さま	２０１１年９月９日
おしろい伯爵様から シェリル・C・メルビル嬢をいただきました♪ ・・・１１歳の少女ナナミは、海洋生物学者で幻のヒカリクジラを追い求める父親スコット、 その相棒でメカとお金儲けが大好きなアルとオンボロ海洋調査船ペペロンチーノに乗り組み、 赤ん坊の時からの親友であるシャチのティコと共に七つの海を舞台にして冒険を繰り広げて いきます。 　ナナミたちがサンフランシスコ湾を訪れた時、イギリスの財閥であるメルビル家の一人娘 シェリル嬢の乗ったクルーザーが巨大なホオジロザメに襲われる事件が起こります。平凡な 日々に退屈していたシェリルはそのサメに百万ドルの賞金を懸け、自ら先陣を切ってサメを 発見しますが、それは勘違いで、目的のサメではなくティコでした。ティコへ銛を打とうと するクルーザーをペペロンチーノ号を体当たりさせて止めたスコットは無茶をするお嬢様を たしなめたのでしたが、それでも懲りずに今度は潜航艇でサメを追ったシェリルは潜航艇が 故障して海底に沈んでいるところを逆に襲われてしまい、そこをナナミたちに助けられます。 　自由自在に海を泳ぎ回るナナミとそれに付き従う力強くも美しいティコの姿を間近に見て 魅了されたシェリルには、大学がもう始まっているのでイギリスへ帰りましょうと言う執事 ジェームスの言葉も耳に入りませんでした。それに、これは内緒ですが、まわりの女の子が みんな経験済みだというのに１８歳にもなって自分だけがいまだ未経験だったシェリルは、 この夏休みこそ素敵な相手とアバンチュールを楽しみたいと思っていたのに、集まってくる のはこれまでと代り映えのしない、彼女の受け継ぐ財産を目的に近寄ってくるような浮薄な 若者ばかりでがっかりしていたところだったのです。そこへ現れた、シェリルが財閥令嬢で ある事を知っていても別にへつらったりせず、それでいて危機に際して何も言わずに助けて くれた大人の男、スコットのことが気になって仕方なかったのです。 　こうしてシェリルは自らの冒険心を満足させるためにナナミたちと行動を共にすることを 決心したのでした・・・ 　あの手この手を使って強引にペペロンチーノ号へ乗り込んだシェリルは、さっそくアルを 追い出して船室を自分のものにしてしまいます。 「ああん、もう、なんだってここはこんなにガラクタばかりなの！？」 「あの、お嬢様、これはどうすればよろしいのでしょうか？」 「いいわ、みんな捨ててちょうだい」 「かしこまりました、お嬢様」 ・・・・・・・・・ 「うん、狭すぎるのが難点だけど、これで少しは我慢できるようになったわね」 「ああ、俺りゃあ、今夜からどこで寝りゃいいんだ？・・・」 「すっかりホコリだらけになっちゃったわ シャワーをたっぷり浴びないといけないわね」 「おいおい、この上、それくらいでシャワーときたか・・・ いいか、嬢ちゃん、海の上じゃ、水は貴重品なんだぞ シャワーは１日１回、１人３分が決まりだ、これだけは絶対譲らんからな！」 「フ〜ン・・・こんな小さなボロ船じゃ、それも仕方ないかもしれないわね」 「なッ、この・・・いいか、３分だけだぞ！」 「あら、本当の事、言っただけなのに、アルったら怒って行っちゃったわ じゃあ、ジェームス、わたしシャワーを浴びるから、その間にお茶を用意してちょうだい」 「はい、お嬢様」 「お嬢様、お茶の用意が出来ましてございます・・・ お嬢様？　はて、お嬢様はどこへおいでになられたのか？ お嬢様、お嬢様〜」 ・・・・・・・・・ 「あ、お嬢様、こんなところにおいでに？　お茶をお持ち・・・ なんと！　これは失礼いたしました」 「ああ、ジェームス、ありがとう、そこに置いておいてちょうだい」 「あの、お嬢様、バスローブをお召しになられた方がよろしゅうございませんでしょうか？ わたくし、すぐに持って参ります」 「いいわ、こうしていれば、すぐに乾くでしょうから ああ、風が気持ちいいわ」 「さ、左様でございますか？ さりながら、殿方の目もございますれば、御慎みあそばされませんと差し障りがあるかと」 「あら、平気よ、アルは、船倉でふて寝しちゃったみたいだから・・・ ご苦労様、ジェームス」 「・・・かしこまりましてございます、お嬢様」 『（そう、アルは、ね・・・ でも、あの人・・・スコットはブリッジで海を眺めているわ わたしを見たら、きっと喜んでくれる・・・ そして・・・ あ、でも、どうしましょう・・・わたし、ちゃんとできるのかしら？・・・ うん、大丈夫よ・・・だって、彼、大人なんですもの ウフフ・・・アレって、すごいんでしょうね〜 だって、みんな、とっても気持ちいいって言ってたもの）』 『（お嬢様、こんなに立派にお育ちになられて・・・ わたくしは、わたくしは嬉しゅうございますます、お嬢様ぁ）』 　さて、恋愛経験のまったく無いお嬢様の天真爛漫な恋の冒険の成果はというと、やはりと いうべきか、スコット様に子供扱いされて、今回は残念ながら失敗に終わってしまわれたの でしたが、それで諦めないのがお嬢様のお嬢様たる所以と申しましょう。シェリルお嬢様の お望みがとうとう叶ったのは、これから数ヵ月後、お二人が軽飛行機の事故で無人島に遭難 された時のことでございます。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　otto