【 招かれざる婿 】
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贈呈者 |
おしろい伯爵
さま |
2003年10月22日 |
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おしろい伯爵様から「長靴をはいた猫」のローザ姫をいただきました
父親が亡くなって、ピエールは強欲な兄たちから遺産も分けてもらえず家を追い
出されました。友達になった猫のペロにはげまされ、広い世の中に出てみることに
なり、ほどなくペロとピエールは王様のお城のある町に差しかかりました。
――この世で一番大金持ちで、この世で一番武勇に優れた人物を姫の婿にする――
ペロはお年頃になったローザ姫のお婿探しの噂を聞きつけると、ピエールを姫の
お婿さんにしてあげようと考えます。
様子を探ろうとお城にもぐりこんだペロは、居流れる家来たちの前で王様の呼び
かけに集まった求婚者たちに対して婿選びが進んでいくのを見ていました。
そこへ突如、絢爛たる玉座の間に闇が翼を広げ、雷鳴が轟き、巻き起こった強風が
人々を木の葉のように吹き飛ばしてしまいました。
つむじ風が蝙蝠の羽根を折りたたむように凝り集まると、残された王様とローザ姫、
鎧飾りに隠れていたペロの前に天井に背が届きそうなほどの大男が姿を現しました。
「フハハハハッ わしこそは世界一の大金持ち、魔王ルシファー
おお、麗しの姫よ、ローザ姫よ、わしの妃となれ」
初めは魔王と聞いて怖気づいた王様も、魔王の見せた金銀財宝に目をくらまされ、
半ばその気になってしまいます。しかしローザ姫は子供の頃に乳母から聞いた咄が
脳裏に蘇えって、その肌が粟立つのを感じました。
『ローザ様、決して一人で、お城の外に出てはなりませんよ。
ここからずっと北の、お日さまも射さない暗〜い森の奥には、不気味な城があって、
そこには魔王が棲んでいます。
魔王は30年ごとに処女をさらっては、お妃にするの。
でも、その処女をその後に見た者はいないのです。
どうして、ですって?
いいですわ、お話して差し上げます。それは……』
それは幼い姫には判らない部分もありましたが、身の毛もよだつものでした。
新床で恐ろしさに震えて、抗う事もできない処女の純潔を奪った魔王は、内ももを
流れ伝うその血も乾かぬ内に、息も絶え絶えとなって横たわる娘のすべらかな腹を
鋭くのびた爪で生きながら裂き、まだヒクヒクと蠢く臓物を貪り、喰い破った心臓
からほとばしる血にその身を浸して若返る。
そうして魔王は齢を重ねて数百年も生きてきたのでした。
紅い満月の夜には今も娘たちの断末魔の絶叫が聞こえ、森に巣くう狼たちでさえも
尾を垂れて鳴き声をひそめるのだということです。
「イヤッ! 死んでもイヤです!」
「なにぃ? 嫌、だと? 嫌だと申したかッ?!
むむううぅぅ……このわしに背くとどうなるか、知っているのか?
見よ、わしの力を!!」
怒り猛った魔王が魔法を揮うと、瞬く間に壮麗だった城は毀れ落ち無残な廃墟と
化してしまいました。
「どうだ! これでも嫌だと申すのか!
王よ、おまえは世界一の大金持ちを姫の婿にすると宣したではないかッ!
どうなのだ!!」
強大な魔王の力を目の当たりにし使い魔の蝙蝠たちに脅かされて、王様には為す
すべもありませんでした。
「ハハハハハハハ、それでよいのだ。ローザ姫は魔王ルシファの妃にする!
さあ、姫、王の許しは出た。
では念のため、わしもわが妃となる姫の品定めをさせてもらおうか……」
魔王の腕が姫に向かって差し伸べられると、王様に寄りすがっていたローザ姫の
身体が空中にふわりと浮かび、魔王の足元に横たえられました。姫は後ずさりして
逃れようとしたのですが、魔王の目に射すくめられて身動き一つできません。
再び魔王の腕が動き、指先がローザ姫の足元を指してから、さっと、しなうように
撥ね上ると、裳裾の布がまるで初めからそこに切目が入れてあったようにすうっと
割れました。
そこに舞い降りた蝙蝠たちがその端を噛んで両側に引いていきますと、殿御に常に
隠されていて父王さえも目にした事が無い、姫のくるぶしから上が徐々に晒されて
いき、とうとうその付け根を柔らかく飾る黄金色の萌え草までも露にされました。
魔王の作り出した禍々しい光の中で、姫から発する柔肌の白さが処女の証のように
輝いて、さしもの魔王もしばらくは見詰めることしかできませんでした。
「うむ……蜜を含んで熟れ始めた果物のような、この瑞々しい肌の色艶……
ホトからは微かに、醸し出したばかりの美しい葡萄酒ような酸味を帯びた匂い……
良いだろう……思ったとおり、姫の胎の様子も丁度頃合……
ローザ姫よ、我が胤を与えられる誉れは汝(なれ)のもの
それを宿せれば真の我が妃となれよう、だができぬ時は……
王よ、今日から三日後、満月の晩、姫をわしの城へ差し出すのだ
三日後の月はさぞ紅かろうて! アーハッハッハハハハ……」
笑い声を響かせ、魔王は再びつむじ風となって城から消えていきました。
魔王の呪縛から解かれた姫は自分を襲った悲運に震え、いまにも気絶しそうになり
ながら裳裾の前をかき合わせようとして、どこにも裂け目など無く布地が元のまま
であることが分かると、あらためて魔王の力の恐ろしさを知るのでした。
ようよう、人々が玉座の間へ恐る恐る戻りだして来て、救いを求める姫が愁いを
湛えた瞳をご家来たちに向けても、彼らは首を垂れるばかり、返ってくるのはただ
男たちの力なく出るため息と女たちの嗚咽しかありませんでした。
そんな様子を確かめ、城を抜け出たペロは城下の森で待っているピエールの所へ
急ぎました。
『ピンチの時こそチャンスあり!
お姫様を魔王から救えれば、きっとピエールをお姫様のお婿にできる
うん、我ながらいいアイデアだ!!』
自慢のひげをピンと立て、ペロは意気揚々とこれからの計画をピエールに話します。
さて、続きはまた次の満月の夜にでも(^-^)/
otto |
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