『 青い目覚め 』


  それは夏休みも終り、その間にすっかり仲良しになった
 ガールフレンドのアリスがスターリング少年の家を訪れた
 時に起きた出来事だそうです。
 学校でクラスの皆のペットを見せ合おうという話になり、
 アリスはボーイフレンドの飼っているラスカルを一等賞に
 したくて、一生懸命おめかしさせようと張り切りました。

  けれど本人とってそれは有難迷惑でしかなく、しつこく
 体を洗われたラスカルは暴れ出し、桶を引っ繰り返して、
 アリスを下着までびしょ濡れにしてバスルームから逃げて
 行ってしまいました。
 それを見ていて慌てた少年は、濡れた服を洗うから脱いで
 おくようアリスに言って、姉の子供時代の服から着替えを
 見繕うと2階へ上がって行ってしまいました。

  独り残されたアリスは少し困惑してしまいます。今この
 家には自分達二人きりなのに、少年はアリスに裸になって
 待っていろと言ったのです。
 男の子同士、たとえばオスカーとならばそれでも構わない
 でしょうが、わたしは女の子なのよとアリスは思います

  それでもアリスは、少年が親切でそう言ってくれたのが
 分かっていたので、言われた通り濡れた服を皆脱いで籠に
 畳んで入れました。
  スターリングが戻って来たのはその直後の事でした。
 少年が中へ声をかけるとドアが少しだけ開けられ、ドアの
 下の方から手が出てきて脱衣籠を外へ押し出しました。

  少年は着替えを手渡したいからアリスに中から出てくる
 よう言いましたが、彼女はドアの陰に隠れてもじもじし、
、なかなか出てこようとしませんでした。

  それでもアリスは少しずつドアの陰から姿を現し始め、
 少年はそんなアリスの様子をいつもの彼女らしくないなと
 思いながら見ていましたが、アリスが「本当に、そっちへ
 行かないとだめなの?」と言ってドアから身を乗り出すと
 何物にも覆われていない彼女の素足が、太ももが、そして
 肩が露わとなり、スターリングはようやく自分の迂闊さに
 気付きました。
 アリスは今、全裸だったのです。




  それに気付いた少年が目の遣り場に困り視線を逸らすと
 さらに胸をドキドキさせる光景が飛び込んできました。
 本人は気付いてないようですが、奥の洗面台の鏡に彼女の
 裸の後姿が映っていたのです。
 少年は彼女のそんな姿を見てはいけないと思いましたが、
 そこから目が離せませんでした。
 女の子の裸ってなんて綺麗なんだろう、白いお尻がとても
 柔らかそうで、あんなすべすべのお尻を触ったら、きっと
 気持ち良いんだろうなと思いました。

  そんな事を考えていると急に股間が窮屈になりズボンの
 前がテントを張ったように膨らんでしまいました。少年は
 そこがそんなふうになる理由をまだ知りませんでしたが、
 その事がとても恥ずかしく思えました。
  そして、アリスにそこを見られぬように前屈みになり、
 脱衣籠の濡れた服と着替えの服を持ち替え、それを洗って
 くると言って一散にその場を後にしました。

  一方、少年に取り残されたアリスはふぅと息を漏らすと
 急にくすくす笑いが止まらなくなりました。
 男の子の前に裸で居た事の緊張が解けたのもありますが、
 少年が股間の違和感にあたふたしていたのが可笑しかった
 からです。
  アリスは男の子がそうなる理由を知っていました。姉の
 結婚が間近で、お婆さんから『男を確実に堕す方』などと
 色々吹き込まれてもいましたが、そうでなくても女の子は
 何時の世も男の子と違って早熟なのです。

  やがて笑いも止み、アリスの心に浮かんだのは、少年が
 自分の体に魅力を感じてくれた事への喜びでした。
 実はアリスは鏡に自分の後姿が映っているのを知った上で
 わざとそれを見せ、少年がどう反応するか試したのです。
 それは、女が誰に教わるでもなく生まれ持って知っている
 『誘惑』という名の恋の手管でした。

  アリスは思います。さっき自分がすべてを見せていたら
 スターリングはどうしたでしょうか?
 もしかしたら、とても恥ずかしい事をされてしまったかも
 しれません。
 けれどもアリスは、胸の奥にそれを望んでいる自分が居る
 気がします。
 そして、どんな恥ずかしい出来事が待っていたとしても、
 スターリングが望むならば、そうした事を躊躇ってしまう
 心の扉を全て開け放って少年を受容れたいと思いました。


  こうしてその日、月が語ったのは、とてもとても青くて
 甘い、少年と少女の性の目覚めのお話でした。
  この二人がその後どうなったか、もしかしたら月がまた
 語ってくれるかもしれません。