『 西の空へ 』


  国の3分の1が北極圏に属するスオミの初夏は太陽が
 なかなか沈まずに居座り続けて、月は肩身の狭い思いを
 させられるのだそうです


  そんな北国の片隅で、カトリという名の少女が貧しい
 家を少しでも助けようと奉公働きをしておりました。
 少女に任された仕事は、自分より何十倍も大きな牛達を
 放牧地まで連れて行き、牧草を食べさせる事でした。

  その日の放牧も終わり牧場に戻ったカトリはサウナに
 入りました。熱く蒸されたサウナで汗を流すと、仕事の
 疲れも一緒に流れ出ていく気がします。
 サウナでたっぷり汗をかいたカトリは熱くなった身体を
 湖に飛び込んで冷まし、その畔で心地良いそよ風に肌を
 嬲らせていました。

  すると、足元に可憐な白い花が群がり咲いているのを
 見つけました。
 それはドイツスズランでした。
 ドイツの名を聞くとカトリはどうしてもお母さんの事を
 思い出してしまいます。
 カトリのお母さんは夫を亡くして、幼い娘を祖父の許に
 残し、ドイツへ働きに出て行ったのです。





  カトリはその花を手折ると西の空を見上げ遠い異国の
 お母さんへ想いを馳せました。
 その先にはトゥルクの港町があり、その海はドイツへと
 繋がっているのです。


  月は、親と早く一緒に暮らせるようになりたいという
 娘の健気な想いを必ず母親に伝えると誓ったそうです。
 ですから、この本を読んだあなた達も、カトリの願いが
 叶うよう祈ってあげてください。