【 イザベル 】
パットと約束はしたものの、イザベルはお店に飛び込んで『わたしを雇ってください』と見ず知らずの他人にお願いするのにはどうしても気後れしてしまって、どこか道々のお店に求人の張り紙でもないかしらと探しながら、とぼとぼと歩いていました。
そんなイザベルがとある裏通りに差し掛かったころ、当人はまったく気付いてはいませんでしたが、いつからか彼女の様子を窺がっていた一人の男がそっと横丁へ消えていきます。そしてそれはイザベルがその裏通りをそろそろ抜け出ようという時に起こりました。
彼女があっと思った時には、横丁から急に飛び出してきた子供たちと鉢合わせになって、路上に倒されてしまいました。
その子供たちは寄ってたかってイザベルを助け起すと、ぶつかったのを謝りながら、足早にまた横丁へ駆け去っていきます。
そして、突然の出来事にあ然としていたイザベルが立ちあがろうとした時に、肩に下げていたポシェットが無くなっているのに気がつきます。
『さっきの子たち!?』
ようやく自分がひったくりにあったのを知ったイザベルは子供たちを追って、入り組んだ路地をあちこち必死に探してみましたが、その時にはもう後の祭、すでにその姿はもうどこにもありませんでした。
そうこうする内に彼女は自分が今どの辺にいるのか分からなくなってしまい、あらためて周りを見てみるとそこは雰囲気のあまり良くない薄汚れた一角で、助けになってくれそうな人は誰もいません。
もう走る元気も無くなって、イザベルは石段に腰を下ろすと途方に暮れて手に顔をうずめてしまいました。
「ああっ、どうしましょう!
あれにはお母さんから預かった院長先生へのお手紙と、汽車賃が入ってたのに……」
「姉ちゃん、どうかしたんかい?」
「え? あ、あの?」
「いやね、この辺にゃ似合わねえ、きれいなべべ着た姉ちゃんが、そんなとこで、ベソかいてるだで、悪ガキどもになんか悪さでもされたんでねいかと思っただよ」
「ベソ?……あっ、わたし泣いてなんか……でも……」
「ふーん、やっぱ、なんかあっただな?
どれ、よかったら、わっしに聞かせてみちゃあ、どうかね?
話によっちゃあ、助けてやれるかもしんねいでなぁ?」
「……あの…実は……」
知らないうちに、今まで来たことも無かった下町へ迷い込んでしまい、心細くなっていたイザベルはいかにも労務者風で言葉づかいもあまり上品とはいえませんが、親切そうなこの男にこれまでのいきさつを話しました。
「そうけえ、そりゃあ、災難だったなぁ……
まあ、見てのとおり、わっしにゃあ、金の工面なんぞできねえが、働き口ならなんとか世話できっかもしんねい
知合いに口入れ屋がいるで、姉ちゃん、そこ、行ってみっかね?」
「え、ええ、ご親切にありがとうございます」
イザベルがその男に連れられて裏通りをいく筋も奥へ奥へと歩いて行くと、ターナー職業紹介所という、だいぶ色あせた看板を掲げたみすぼらしい事務所に着き、中に案内されます。
「おーい、ジョン、ジョン・ターナーは居るかねぇ?……
なんだぁ、留守かぁ?……
ああ、心配えしねぇでえいよ、奴がいそうなとこぁ、ちゃぁんと見当つっから、ちょっくら呼んでくらあ!
っとそん前に、姉ちゃん、のど渇かしてねいかね?
そうだ、たしかレモネエドがあそこに……お、あったあった、今、コップ出すで、姉ちゃん、そこの椅子に座ってな」
「ありがとう、おじさん、わたし、朝からずっと歩きっぱなしで、もう足は痛いし、のどもカラカラだったの」
飲み物を用意すると言って隣の食堂に姿を消した男が、まさか自分の様子を窺がっているとも知らず、イザベルは椅子から身を屈めてサンダルの紐をゆるめ、歩きづめでパンパンになったふくらはぎをさすっていました。
脚に手を差し伸べる彼女の動きにつられてドレスの裾が乱れ、少女のすらりとした太ももが覗いてしまっているを盗み見ながら、男は上着の隠しから薬の包を取り出して、その中身をグラスの中に落としました。
「どれ、おまちどう様、さ、遠慮なんぞいんねえから、たんと呑むとえいさ」
イザベルは炭酸の泡が弾ける涼しげな音を聞いて急に強い渇きをかきたてられて、男から受け取ったグラスを口に傾け、少し苦味の強い感じがするレモネードを何の疑いも無くコクコクと飲み干しました。
「ふうー、美味しかった、おじさん、ありがと…う……
あ…れ?……どうし…たの…かしら…急に……眠…く…………」
「姉ちゃん? どうしただ、姉ちゃん、でいじょうぶか?
あれまぁ、寝ちまったんかね?…………」
「クックック、もうクスリが効いたか……
このターナー様にかかっちゃ、小娘をたぶらかすなんざ、ちょろいもんだぜ!
寝てる間に自分が何をされたかを知ったら、さぞかし驚くこったろうて」
眠り薬で眠らされたイザベルは、夜伽話しで語られる、悪い仙女の呪いで城もろとも深い眠りに落とされた年若い姫が行きずりの無頼な王子に我が物とされて、眠ったまま穢れないその身に口に出すのもはばかられるような辱めを受けたように、もうどんな事をされようと男の思いのままでした。
イザベルを食堂の細長いテーブルの上に乗せた男は、ぐったりと横たわる彼女の身体からサマードレスをスリップごとめくりあげ、パンティーをずり下ろして少女の秘められた白い肌を露わにしただけでは飽き足らず、太ももを目一杯に開かせた上、股が閉じられないようテーブルの左右の縁から脚をぶら下げさせて、まだ薄い恥毛がまるで絹のように艶々としている下腹部をむき出しにさせました。
もはやイザベルが身に着けているのは足に履いていたサンダルしかなく、殺風景な食堂にあるには似つかわしくない少女の裸体が薄暗がりの中で白く奇しく浮かび上がっています。
そのあられもなく開かされた、娘と呼ぶにはいまだ幼さを感じさせる、伸びやかな肢体をねっとりと絡みつくような視線で嘗め回してしていた男は少女の「女」としての育ち具合を確かめようとイザベルの胸に手を伸ばします。
彼女のそれは豊満なバストが好みだった男にしてみれば小さすぎましたが、薄い膨らみは玩ばれていく内に先端を固くして、それでも充分に敏感な事を示していました。
男はやがて胸から腹部へ、そして緩やかにくびれる腰へとスレンダーな外見にしては意外なほど手に柔らかいイザベルの肌をまさぐっていき、さらに少女の大事な最期の部分へ迫っていきました。
男はイザベルの太ももの付け根に両手を置くと、その中心をはしる、大股開きにされてもほとんど閉じたままでいるスリットに親指をかけ、内部に隠れていた桜色の花弁ごと大きく剥いて、少女の入口を暴きました。
そこはいかにも小さくて、指先ですら無理に挿れれば壊れてしまいそうに見えましたが、男はかまわず唾で濡らした指をそこに衝き立てます。固い蕾を突かれて、意識の無いままに身体を緊張させる少女の中へ、ごつごつした指がゆっくり、しかし着実に食い込んでいき、狭い花芯を異物によって侵入される苦痛に彼女が呻き声をあげても、それは止められる事はなく、とうとう男は根元まで沈めてしまいました。
ようやく指の動きが止まり、イザベルの身体から力が抜けたのもほんの束の間、再び動き出した指が少女の中を蠢いて内側を擦りあげ、そのたびに彼女は硬い板の上で跳ねるように身をよじらせ息を喘がせていましたが、やがて彼女の肉体はそれを受入れて、しだいに男の思うとおりの反応をするようになっていくのでした。
「ホォー、この年頃でオボコたぁ、感心感心
このあたりのアマっこときた日にゃあ、色気づいたとたんに男を銜え込むわ、小遣い稼ぎに股ぁおっ広げるわでバージンなんざとっくにねえのが普通だってぇのに、さすがええとこの娘っこは違うねぇ……
それにまるっきりネンネェみてえな顔して、ちょいとイタズラしただけでこんなにボボを濡らしてキュウキュウ締め付けてくるたぁ、こん先、どんくれぇ男好きするアマになるか、これからがお愉しみ、ってぇもんだ」
「おっ、やってるやってる!
ほらよっ、こいつの持ってたもんだ、たしかに渡したぜ!」
「おう、ジャックか! ご苦労だったな、さ、駄賃だ、とっときな!」
「へへへ、あんがとよ!
ところでなあ、おっちゃんよぉ、やっぱ、いつもみてえにすんだろ?
だったら、なぁ、おいらにもその、やらしちゃくんねえか?」
「バーカ、ケも生えそろってねえガキのくせして、おめえが犯ろうなんざぁ、10年早ええっていうんだよっ!」
「チェ! オンナをやりゃあ、オレ様にもハクがつく、って思ったのによぉ……
ま、いいや、じゃあな、アバヨッ、おっちゃん!」
「ケッ、ガキが一丁前に色気づきやがって……
さてと、俺様もここで一発味見して、お愉しみといきてぇとこだが……
普段どおりなら、かどわかした娘っこの股座に穴ぁぶち抜いといて、カワイイ娘がキズ物になっちまったことをバラスぞっ、とでも脅かしゃあ、奴ら世間体気にして、サツにもチクれねぇから楽に稼げるもんを、その親がビタ一文も出せねえ始末たぁ、とんだ見込み違いよ
だったら仕方ねえ、どこぞの娼館にでも売っぱらうか……
でもなぁ、なじみんとこじゃあ、二束三文にしかなりゃしねえしなぁ……
もっと高く買ってくれそうなとこってぇと、さぁて………
そうだ! たしかあの野郎、こういう上物の小娘を集めてるって言ってたな
ご同業のくせに紳士気取りのいけ好かねえ野郎だが、あいつの方が実入りが良さそうだぜ
そうと決まりゃあ、生娘のまんまのが値が付くだろうから、ちょいと惜しい気もするが
お遊びもここまでにしとくか……
さぁて、それじゃあ、こいつが目ぇ覚ます前に、とっととケリぃつけるとしようかい」
男はある場所に電話をかけ、イザベルを売り込んで裏商売の話をつけると、彼女の汚れてしまった股間に有り合いのボロキレを押し当て、陰部に割り込ませて、そこから漏れ出したぬるぬるの汁を念入りにぬぐい取った後、大事な売物に風邪でもひかれないようにシーツを掛けておきました。とはいえ、これから来る相手が値踏みをする時に邪魔にならないよう、もちろんその下に眠る彼女は裸のままです。
そうしてターナーが相手を待っていると、小一時間ほど経った頃に、まわりからは死角となっている事務所の裏手に一台の車が到着しました。
車から降りてきた男はイザベルの身体に掛けてあったシーツを取り除けて、彼女の肉体を丹念に調べ終ると満足げに頷き、ターナーに周旋料を渡します。
受取った金を数えてニンマリとほくそえんだ男はイザベルに服を着せ直し、椅子にもたれかけさせると気付け薬を嗅がせて、さも彼女が最初からずっとそこに座っていたかのように装って、何食わぬ顔でイザベルを起しました。
「姉ちゃん、おい、姉ちゃん」
「………う…ん………」
「かえーそうに、姉ちゃん、よっぽど疲れてただなぁ
姉ちゃんが眠ってる間にジョンの奴、帰ってきてなあ、ええ塩梅に話つけてってくれただよ
ほら、こっちの旦那んトコで雇ってくれるそうだで、もうなんも心配いんねぇよ」
「初めましてお嬢さん、わたくしはウイリアムと申します。わたくしの主人は丁度あなたのような方を探していたのです。よろこんで歓迎させていただきます」
「お給金も、たあんとはずんでくれるそうだで、ほんと、よかっただなぁ」
「ありがとう…おじさん……でも、あの……パットが……」
「ああ、姉妹と待ち合わせしてるとか、言ってただなぁ……
なあに、わっしもこれから駅の方に用事があるで、ついでに言付けしといてやる
後で一緒になれっから、なあんも心配なんていんねえよ、姉ちゃん」
「ほんとう…に…ありが…と……う………おじ……さ………」
朦朧とした意識の中で、姉妹との待ち合せの約束が守られると聞いて安心したイザベルは身体からまだ抜け切らない眠り薬の力に負け、また眠りに落ちてしまいました。
こうして本人の知らないところでその身を売られたイザベルはウイリアムに付従う屈強な男に抱えられて車に乗せられ、とある館へ、引き返すことの叶わぬ運命へ向かって運ばれていきます。
そして、悪党のターナーはこの時の約束を守りませんでしたが、双子の運命は姉妹を引き離す事はありませんでした。
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