〜 レディ・ペリーヌ物語 20 〜
【 ― 別離の都パリ 中編@ ― 】
お薬を貰いに行くたびに弱みを握られたモーリスから陵辱を受けねばならかったお嬢様の
お哀しみは如何許りだったでしょう。ですが、帰り道でどんなに涙を流されてもシモン荘に
帰ったお嬢様はその辛さを押し隠し、笑顔を浮かべて母様を甲斐甲斐しく看病していかれた
のでございます。そうしたお嬢様の唯一の慰めは同じシモン荘に住む貧しいけれど心優しい
人々の親切でした。
けれど、マリ様のご病状は悪化するばかりで高額な診察代や薬代にわずかな蓄えはあっと
いう間に底をつき、家馬車も亡くなったお父様の思い出の詰まった写真機も、終には長旅の
苦楽を共にしたパリカールまでも手放された母娘にはもはや何も残されていませんでした。
その大切なお金も残り少なくなって、どうしてもお嬢様をおじい様の許へ届けなければと
思っていらっしゃったマリ様は、せめてお嬢様を乗せる汽車賃だけは残そうと、これ以上の
お医者様の往診を頑なに拒まれました。
思い余ったお嬢様はサンドリエ医師の所へ行かれて診察代の猶予をしてマリ様を診てくれる
ようお願いされました。
「お願いです先生、お母さんを、お母さんを助けてください」
「そんなことを言われても、君、困ったな…」
「診察代はわたしが働いて、後で必ずお払いしますから」
「働くといっても、君みたいな娘を雇ってくれる所があるかどうか…
たとえあったにしても、わたしの診察料にはぜんぜん足りないだろうな」
「そこをなんとか、わたし何でも、どんなことをしてもお払いします、だから」
「ほう、どんな事でも、ねぇ…
ふむ、そういえば確か君は…そうか、それならば……
どうだろうお嬢さん、君にぴったりの仕事がある、私の仕事を手伝う気はおありかな?
引き受けてくれるなら、お母さんの事、考えてあげてもよいですよ」
「先生のお手伝い、ですか?」
サンドリエ医師からの申し出を聞かれたお嬢様は薬屋に騙された時とまるで同じ成行きに
デジャヴュに似た感覚を覚え、背中に一瞬戦慄が走りました。
ですが、マリ様を救いたい一心だったお嬢様は『先生みたいな立派なお医者様がそんな事を
するはずないわ』とその不安を胸の奥に押し込められました。
「どうしたのかね君、断るのかね?
それでも構わんよ、別に私は無理にもとは言ってないのだからね」
「い、いえ、是非わたしに先生のお手伝いをさせてください」
「そうですか…では、一応聞いておきますが、お嬢さんにはもう生理がおありかな?
「セイリ?」
「ああ、無いのですね、結構
もう一つ、局部に痛みや痒みがずっと続いているようなことはありませんかな?」
「局部?…ァ…そんなのありません」
「いや、これは失敬、仕事柄つい立ち入ったことを聞いてしまいましたが、大変結構
ただ、この仕事はちょっと辛いかもしれません
それでも宜しいのですね?」
「じゃ、じゃあ、本当にわたしを使ってくれるんですね?
わたし、どんなに辛くても我慢します!
お願いをきいてくださってありがとうございます、サンドリエ先生」
「いや、なに、こんなに親思いの娘を持って、君のお母さんも幸せだ
では、明後日、日曜日の朝9時にここに来てください」
こうしてお嬢様は一抹の不安を抱えながらもサンドリエ医師の申し出を受けてしまわれた
のでございます。
その日の朝、食が細る一方のお母様を心配されながらも精一杯の笑顔を浮かべてお世話を
済まされてサンドリエ医師の所へ行かれたお嬢様は手術室に通され、用意されていた検査用
ローブに着替えるように言われました。
「よく来てくれましたお嬢さん
では、早速そのローブに着替えてください
それと、下着は全部脱いで、ローブを直接肌に着けてくださいね」
「はい、でも…」
「ん、どうしました?
ああ、これは失礼、女性患者の裸など見慣れているので、うっかりしてしまいました
では、わたしは隣の控室に行ってますので、終わったらドアをノックしてください」
「ありがとうございます、サンドリエ先生」
部屋に一人残られたペリーヌ様は、ブラウス、スカート、そしてシミーズと、次々に脱衣
していかれましたが、ドロワーズに指をかけられた時にはさすがにその手が止まってしまい
ます。普段ここには何人もの患者さん達が訪れ、看護婦もいることでしょう。そんな風景を
思い浮かべると、その人達の声が聞こえてくるような気がしました。
『あらいやだ、あの娘、こんなみんなのいる場所で裸になってるわ』
『ホントに、もう子供じゃないのに、そんな事して恥ずかしくないのかしら?』
『ほら、アレよ、きっと、そういう病気、他人に裸を見られるのが好きなのよ』
『まあ、イヤラシイ、本当にふしだらな娘…ふしだらな娘…ふしだらな娘…』
『違うッ、わたしはそんな娘じゃないわ!
でもこれは、わたしがしなくちゃいけないことなの!』
そう心の中で叫ばれた瞬間、幻達は消え、恥じらいに打ち勝たれたお嬢様はドロワーズを
下ろしていかれました。ですが、ドロワーズから左足を抜かれ右足も抜かれて、これでもう
素肌を隠すものは何も無いのだと思うととても頼りない気持ちになります。
そんな中、何者かの視線を感じられたお嬢様はハッとして両腕で前を隠されました。
『誰?…誰なの?…まさか…』
恐る恐る視線を感じた方へお顔を向けられたお嬢様が見つけられたのは、けれどご自身の
お顔でした。
『なんだ鏡だったの…
ばかねペリーヌ、お母さんが、むやみに人を疑っちゃいけないっておっしゃってたのに、
サンドリエ先生を疑うなんて
先生を疑ったお詫びに、早くローブを着て、一生懸命先生のお手伝いをしなくちゃ』
けれども、ローブを身に着けようとされたお嬢様は困ってしまわれます。
その袖無しのローブは前身頃と後ろ身頃が紐で結ばれているだけで隙間が空き、両脇の肌が
脇の下から太ももまで覗き見えてしまう物でしたが、寸法がお嬢様には小さかったのです。
胸下で前を留める紐はなんとか結べましたが胸元が大きく開いて、かろうじて襟ぐりの縁に
かかった乳首の桜色をした乳暈のいくらかが見えてしまい、少しでも身をよじると乳房ごと
こぼれ出そうです。それに丈の短い裾の後ろを引っ張ると下腹部が、前を引っ張るとお尻が
裸出してしまいます。
事実、床に落としたままだったドロワーズを拾おうと身を屈められたお嬢様が鏡を見ると、
そこに映っていたのはローブが胸ではだけ裾もずり上がり、女の子の隠すべき部分がすべて
露わになっている、全裸よりも恥ずかしく思えるご自分のお姿が映っていました。
『どうしよう…ローブを取り替えてもらえるかしら…
でも、そんなのことをお願いして、もうお手伝いをしなくてもいいって言われたら…』
お嬢様のそうした逡巡を急かすように控室の中からドアをノックする音が聞こえました。
「もういいかね?」
「あっ、ハ、ハイ、どうぞ」
ドロワーズを脱衣籠の服の間に隠された直後、手術室に戻ってきたサンドリエ医師を前に
して、お嬢様は胸元で両手を握り締めます。
「あ、あの、先生…このローブ、なんですけど…ちょっと、小さいような…」
「ローブ? ああ、メードが昨日全部洗濯に出してしまって、今はそれしかないのですよ
それに、それは患者が検査を受ける時に着る服なので、それでいいんです」
そう説明をしたサンドリエ医師でしたが、お嬢様に用意されたそれが小さな子供用である
ことは言いませんでした。
「そう、なんですか…」
「そんなことより、これを見てください
どうです、すばらしい出来映えでしょう?」
サンドリエ医師が何か大きな物にかけられていたリネンのカバーを外し指し示したのは、
左右に分かれたレッグレストが太ももとふくらはぎを別に支えるようになっていて、あちら
こちらに革バンドやレバー、クランクハンドルが付けられた、とても変わった椅子でした。
「これはアメリカから輸入した最新式のバーバーチェアを私が改良した物なのですよ
このサンドリエ式診察台は、これからフランス中で、いいや、世界中で使われることとなる
でしょう
お嬢さんは、その栄えある最初の被験者となるのです
さあ、何も怖い事はありませんから、座ってみてください」
「はい、先生……ん」
診察台に座られる時に前を隠そうと裾を押さえられたお嬢様は、ローブの後ろがめくれて
お尻に革の座面が直に触れるのを感じました。
「おや、どこか当たりますか?」
「い、いえ、ただ、おし…ううん、何でもありません」
「そうですか…では、そのままじっとしていてくださいね」
「はい…アッ、せ、先生、何をなさるんです!?」
サンドリエ医師は自作の診察台に備え付けられていた革バンドで腕と手首を背もたれに、
太ももとふくらはぎをフットレストに固定して、お嬢様を身動きできなくしてしまいます。
「何って?…ああ、君にはまだ言っておりませんでしたかな?
これは婦人科用の診察台なのですよ、そして、婦人科というのは、診察の関係上どうしても
患者の局部を詳しく検査する必要があるのですが、中にはそれをとても恥ずかしがられて、
蹴ったり引っかいたりする方もいらっしゃるので、それを防ぐためにこうするのです
お嬢さんには、これからいらっしゃるお客様方にこれをお披露目する手伝いをしてもらう
関係上、それらしく見せるため実際に使う時と同じ処置をさせていただきましたが、これは
ほんの形ばかりのこと、あなたはそこに座っているだけで結構ですので安心してください」
「あの、先生…お客様って、男の人、なんですか?
わたし、こんな格好じゃ…」
「それが何か?
ああ…恥ずかしがる必要はありません、皆さん私と同じ医者で、患者のそんな姿は見慣れて
おりますからね」
その時、手術室のドアを叩く音がして、来客を告げられたサンドリエ医師は、ドアを細く
開け、隙間から室内の様子を見られぬよう自分の身体で隠しながら老メードに指図します。
「分かった、皆様を応接室にご案内してくれ、それが済んだら、君はもう帰っていいから」
「はい、ご主人様」
「噂をすれば何とやら、ちょうどお客様達が来たようだ…
いいですか君、今からご案内するのは大事なお客様です
ですから、お客様が何を言おうと何をしようと、決して逆らってはいけませんよ
お母さんのことは、あたなの働き如何にかかっているということをくれぐれもお忘れなく」
「はい、サンドリエ先生」
「宜しい
では、お客様方にお披露目するまでまたカバーを被せておきますから、それまでお客様方に
この診察台を紹介する挨拶でも考えながら待っていなさい」
サンドリエ医師が部屋から出て行った後、お嬢様はご自分の胸が小鳩のように高鳴るのを
感じます。もうすぐお客様がこの部屋に入ってきて、このカバーが外され小さ過ぎるローブ
しか身に着けていないこの恥ずかしい姿を見ず知らずの殿方達に見られてしまうのです。
『しっかりするのよペリーヌ、お父さんが亡くなった後、写真師のお仕事をするお母さんの
ために呼び込みの口上をした時だって、初めは恥ずかしくてドキドキしたじゃない
今度だってそれと同じ、お母さんのためなら、わたし、何だってできるわ
それに、先生があんなに気にしてるお客様だもの、きっとお年寄りのお医者様だわ
だから、わたしがこんな格好をしていても、いやらしい目で見るはずないわ
それに…それに…』
不安を打ち消そうとご自分を励まされるお嬢様の恐れるその時は刻々と近づいてきます。
その頃、応接室ではサンドリエ医師が三人の青年を迎えていました。
「諸君、我が特別授業へようこそ
本日は私の考案した新たな医療器具のお披露目も兼ねているので、後で諸君のお父上方にも
紹介していただけるとありがたい
さて、今日の授業の内容ですが…
嘆かわしいことに、花の都と謳われるこのパリでも一歩裏通りに入れば強盗、かどわかし、
はたまた強姦と悪事が横行していることは諸君もご存知だと思います…そして、そのような
被害を受けた若い婦女子の治療に我々は何時なんどき当たらねばならなくなるか分からない
わけです…
そこで今日は、それを諸君に、実際的に学んでもらおうと思います」
「実際にって、先生、人体模型でも使うんですか?」
「人体模型ですか…なるほど、それは言い得て妙ですね
まあ、見れば分かりますよ、クールフェラック君
これからご覧いただくのは、私が婦人科用に考案し、患者と医師、双方の負担を軽減できる
ようにしたものです
その主な使い方としては妊産婦の診察に用いるのですが、今回はより緊急度の高いケース、
そう、先ほどお話した中でも、複数の暴漢によって性交渉を無理強いされた婦女子の望まぬ
妊娠を避けるため、膣及び子宮の迅速な洗浄施術に用いることを想定しています
ここで複数のとわざわざことわった理由は、すぐに解ると思います
そうですね、アンジョルラス君?」
「それはもう…」
「宜しい、では諸君、手術室へ」
「ヘヘヘ、クールフェラック、今日はお前さんの特別な日になるんだぜ」
「特別な日って、何の事さ、バオレル」
「とっても良い事が待ってるってことさ」
「それではいよいよお披露目します、これが我がサンドリエ式診察台です!」
被されていたリネンがサンドリエ医師によって一気に取り除かれ、そこに現れた診察台、
いいえ、その上で伏し目がちにしている少女の半裸に等しい姿に青年達は目を見張ります。
そして、ご自分の前に現れたお客様が予想に反して若い殿方であることを知られたお嬢様も
また息を呑まれました。
『ああ、なんで?! お客様って、先生より年上だと思ってたのに!』
「さあ、どうしました諸君、私の発明に声も出ませんか?」
「へえ、これはこれは…」
「すげえ、もう何時でもってもんだぜ」
「せ、先生、この娘さん、何故あんな裸みたいな格好を?!」
『い、いやッ、見ないでッ!』
お嬢様は思わず肌を隠そうとなさいましたが、手足を拘束されていてそれもままならず、
目を瞑って耐えるしかありませんでした。
「おや、そっちの方が気になりますか?
さっき君が言った人体模型より、よほど気が利いていると思いませんか?
そんなに気になるなら、本人に挨拶をしてもらいましょう
さ、お嬢さん、皆さんにご挨拶を」
「あ…はい……
み、みなさま、本日はお集まりいただき、ありがとうございます
わたしが今腰かけております物をご、ご覧になってください
これは、そこにいらっしゃるサンドリエ先生が発明されたものでございます
見事なものでございましょう?
サンドリエ先生のこの発明は、将来ヨーロッパはもとより、全世界へ広まることでしょう
栄えあるお披露目の日に先生のお手伝いをさせていただけて、わたしは光栄に思います」
お嬢様は旅の写真師をするお母様を手伝ってお客様にした口上を思い出しながら一生懸命
ご挨拶をされました。ですが、そのお声は肌に刺さる食い入るような青年達の視線を感じて
震えていました。
「どうです、とても賢いお嬢さんでしょう?
とりあえず、P嬢とでもしておきましょうか、可哀想に、母親が重い病気を患ってしまい、
それで親思いのこのお嬢さんは、どんなことでもしますからと、私を頼ってきたのですよ
どんなことでも…とね
きっと、今日の特別授業の役に立ってくれるでしょう」
「なるほど…そういう事情があるのなら、何をされても…
生きた人体模型とは素晴らしい趣向ですね、先生」
「そうかね? 何事も医学の進歩のためだよ、アンジョルラス君」
「いや、大変良いご挨拶でしたよ、お嬢さん
その調子で、この後もよろしく頼みます」
「ありがとうございます、サンドリエ先生
それでは、どこかお部屋をお借りして、服を着替えてまいりますので、このベルトを外して
くださいませんか」
「着替えに行く?…いえ、そんな必要はありませんよ」
「え、でも、このままじゃ、先生のお手伝いができません
お披露目ももう済みましたし、これ以上こんな格好でいなくても…」
「いやいや、お嬢さんは勘違いをしていらっしゃる
ここにいらしたお客様達は、皆、いずれ劣らぬ大病院のご子息で将来それらを背負って立つ
身なのですが、なんといってもまだ医学生ですので、前々からこうして私の開く課外授業を
受けに来ているのです
そんな中、私の発明がようやく形となった折も折、あなたという又と無い被験者が現れて、
私は考えました、これは、医学の進歩を目指す私に示された天の配剤ではないかとね
そこで私は、今日予定していた授業ではいつもの無味乾燥な座学は止め、せっかく得られた
あなたという生きた教材を使ったより実践的な方法で、私の発明の有用性を実証することを
思いついたのです
それに、あなたに試していただきたい私の発明は他にもありますから、お披露目は終わった
どころか、これから始まるのですよ
ですから最初に言ったように、あなたは授業の間、そこに座ったままでいればいいのです
お分かりいただけましたか?
「え…ええ…」
「では、あまりお客様達を待たせてはいけませんから、授業を始めますね」
この時お嬢様は、サンドリエ医師の言葉にかすかな不安を覚えましたが、それはご自分の
今のお姿に恥ずかしさを感じているせいだと思いました。けれども、女の直感ともいうべき
その不安はすぐに現実のものとなり、お嬢様は普通では考えられない羞恥を味わわれること
となられるのです。
「それでは諸君、いよいよ本日の特別授業、<事後の避妊措置について、その一、観察>を
始めます
P嬢には先ほど想定した患者の役を務めてもらいますから、諸君も彼女を自分の担当患者
だと思って接してください」
サンドリエ医師はお嬢様の前に3人の青年達を立たせ、診察台のクランクハンドルを回し
始めました。すると、お嬢様の脚を固定したまま、レッグレストが左右に開いていきます。
「これくらいでいいかな? うーむ、素晴らしい、実に滑らかな動きをする」
強制的に開脚させられローブの前が今にも開いてしまいそうでハラハラしているお嬢様を
他所に、医師はハンドルを回したり戻したりして、自作診察台の手ごたえを確かめます。
「だが、まだ可動範囲は余っている…幸い、この患者は身体が柔らかそうだから、限界まで
試してみましょう」
「ま、待って、先生、そんなに広げたら、ローブが!」
けれど、お嬢様の声は無視され、サンドリエ医師の手が止められた時にはお嬢様の両脚は
真一文字に内股の筋が引き攣るほど広げられ、ローブの前もはだけていました。
「アア、見えちゃう! お願いです先生、ローブを、ローブを閉じてください!」
「ローブ?…ああ、これはうっかりしていた」
「アアッ、先生、やめて、イヤアッ!」
医師は胸の下で留めていたローブをはだけさせ、お嬢様のお腹から下腹部までのすべてを
露わにしてしまいました。
「どうです諸君、私の診察台を使えばこの通り、どんなに拒まれようといとも簡単に患部を
開かせたままにできるのです
ですが、これではまだよく観察できませんね? そういう時はこのレバーを引くと…」
レバーを引かれた診察台は、レッグレストごと背もたれが90度後ろに倒れ、座面も倒れ
落ちて、下腹部が宙に迫り出しました。
「キャアッ!」
「こうすると、患者の局部が見やすいでしょう?
もちろん、自分の腕の力でも患者にこうした姿勢を取らせることは可能ですが、そうすると
診察どころではありませんし、無駄に抗う患者にも負担になるのです
そして、人によって違う女性器の向きを合わせるには、こちらのクランクを回します…」
するとレッグレストがお嬢様の方へ傾いていき、その結果腰が持ち上がって男達の視線の
前に下腹部を上向かせます。
「これで、患部を心置きなく診ることができるわけです
フム、ずいぶん陰毛が薄いですね
生理もまだだというから、そのせいでしょう」
「ううう、お願い、見ないで…」
「おや、陰毛を見られるのが恥ずかしいのですか?
いいでしょう、ちょうど良い機会だから剃ってあげましょう」
「エッ、剃るって!?」
「観察に邪魔な物は無くしておく必要があるのですよ」
「諸君も覚えておきなさい、貧民街に住む婦女子は毛虱を持っていることが多いですから、
この部分を診るにも治療するにも剃毛は必要な処置なのです」
「さあ、お嬢さん、これから刃物を当てるので絶対動いてはいけませんよ」
「ああ、い、いや…ヒャウ! ん、んんん…」
「どうですかな諸君、患者がいくら嫌がってもこの診察台を使えばこのようにどんな処置も
容易に行えるのです」
剃刀が当てられトリエステで剃られて以来ようやく生え戻ってきていた陰毛を再び失った
お嬢様の恥丘は赤子のようにつるつるになりました。ですが、その柔らかく盛上がった形が
幼子ではないことを物語ります。そこへサンドリエ医師の指が押し当てられると中央に走る
亀裂が湿った音を立てて割れました。
「ンアアッ、せ、先生、何を!?」
「何って、見ているだけですよ
こうしなければ患者の膣前庭の様子を観察できないではないですか」
「ヤッ、イヤアッ、そんなとこ、拡げないでェッ」
「ほうら、これで良く見える
お嬢さんのここは色素の沈着もあまり認められず、悪い臭気も無い、いたって健康そうだ
さて、膣口は…なるほど、これならば…」
「では諸君、これからこの患者の膣内の状態を詳しく観察します
アンジョルラス君、ランプを持っていてくれ給え」
「お嬢さん、これが何だか知っていますか?」
「な、何ですか、それ!?」
「これは、クスコー氏式膣鏡といって、膣内を観察するための器具なのです
自らの名を冠した医療器具があるとは、クスコー氏は羨ましい限りですよ
これを今からお嬢さんの膣に挿入します」
額帯鏡を着けたサンドリエ医師が手にしたものはペリカンの嘴のような形をした金属製の
器具でした。
「ヒッ! そんなの入れるの!
見るだけじゃなかったの!?」
「もちろん見せていただきますとも、お嬢さんの女性器の内部を詳らかにね、それが観察と
いうものですから
これは大人の女性用なのであなたには少し大きいかもしれませんが、女性の膣というものは
融通がきくものなので問題ないでしょう
ではお嬢さん、すぐ済みますからちょっと我慢してくださいね」
「いや、怖いわ、サンドリエ先生」
「このように、患者の多くは医療のことをよく知らないので、不安がることもありますが、
医師たるもの、毅然とした態度で患者の診察を進めてください
では膣鏡を挿入します」
「ンッ、冷たい」
「ここでの注意点として、患者に器具を挿入する時は微温湯で器具を温めておくことです
そして、患者に躊躇う隙を与えず、すばやく挿入し、操作してください」
「アグウゥゥ、入ってくるッ、どんどん入ってくるッ、ンアアッ、中で動かさないでェ…」
サンドリエ医師は挿入角度を変えながら膣内へ膣鏡を押し込んでいき、奥に行き当たると
握り締めた把手を留金で固定しました。体内で大きく開いたペリカンの嘴で膣襞が無理矢理
押し広げられ、膣鏡の円形金具でぽっかりと開けられた膣口から吸い込まれた乾いた空気で
粘膜がひりひり刺激される、初めて感じる苦痛がお嬢様を苦しめます
「ウアアッ お腹の中がッ! ウウウゥゥ…」
「よく頑張りましたね、大丈夫、一番苦しいのはここまでですから」
「と、患者を労うことも忘れずに
では、わたしがランプを持っていますから、諸君も額帯鏡を着けて膣の内部をよく観察して
ください」
「奥で膣内に突出している部分があるでしょう?
それが子宮の下部で、中央に開口しているのが子宮口です
子宮洗浄はそこから行いますから、よく覚えておくように」
「ヘエー、こんなの直に見るの初めてですよ、これが子宮の入り口なんですね」
「こ、こんなので驚いてるのかいアンジョルラス、こんなの牛の子袋と同じさ」
「そんなことないよ、とってもきれいな桃色をしてるよ」
「イ、イヤアァァッ、見ないでェェ!」
自分で手鏡を使ったとしても見ることのできない秘部の奥、女体の神秘を器具で無慈悲に
暴かれ、あまつさえ何人もの殿方に息がかかるほど間近から覗き込まれるのが少女にとって
とれほどの恥辱であったことか…
けれども、サンドリエ医師の特別授業はまだ始まったばかり、お嬢様にはさらなる辱めが
待っていたのでございます。
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