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レディ・ペリーヌ物語 19



              レディ・ペリーヌ物語 第二部


〜 レディ・ペリーヌ物語 19 〜

【 ― 別離の都パリ 前編 ― 】


 ペリーヌ様が国境の町から病に臥されたマリ様と共にようやくパリまで辿り着かれた時、
季節はもう夏を迎えていました。
市内に入るため税関の順番を待たれていたお嬢様は、そこで偶然ミラノで別れたサーカスの
少年マルセルと再会しました。少年に自らの肌を許したイタリアでの一夜の事が思い出され
気恥ずかしくもありましたが、誰一人知る者とて無い大都会で見知った者に出会えたことを
お嬢様は喜ばれました。
話が弾む中で泊まり場所を訊ねられ、お嬢様は適当な広場に馬車を泊める積りだと答えられ
ましたが、マルセルは、パリは恐い所だ、そんな事をしたらパリカールを盗まれてしまうと
忠告して下町にある周りを塀で囲まれたシモン荘という安宿を紹介しました。
 翌日マリ様のお見舞いに行くと約束してサーカス団へ戻っていったマルセルは、少年には
思いも及ばないような大都会の本当の恐ろしさ、無慈悲な運命がすぐそこまでお嬢様の身に
迫っていたことなど知る由もありませんでした。


 シモン荘に泊まることとなられたお嬢様は、ここで2、3日休養を取ればお母様も元気を
取り戻されてマロクールへ出発できると思われていらっしゃいました。
ところが翌日お医者様の往診を受けるとお母様のご病状が思いのほか重かったのが分かった
のです。
不安に小さな胸を震わせながら医師から渡された処方箋を持って薬屋へ向かわれたお嬢様を
迎えたのは五十がらみの店主モーリスでした。

「この処方だとかなり高くなるよ」
「ええ、知ってます」
「それならいいが…
ええと、粉薬と水薬、それにキナ葡萄酒で、しめて7フラン50サンチームだね」
「え、そんなに?…どうしよう…」
「どうしたんだね、お嬢ちゃん」
「あの…お金が1フラン足りなくて…」
「そう…じゃあ、キナ葡萄酒はすぐでなくてもいいから、薬だけにしておこうか
それなら、3フラン50サンチームで済むからね」
「え、ええ……あの、でもそれって、とても体に良いんでしょう?」
「ああそうだよ、滋養強壮に良く効くから、あれを飲めば元気が出るんだ」
「そう、なんですか……あの、おじさん、足りない分のお代は後で必ず持ってきますから、
それも一緒にいただけませんか?」
「うーん、困ったな、うちはツケはしてないんだよ
それに、お嬢ちゃんは初めての客だしね」
「お願いですおじさん、わたし、病気のお母さんにぜひ飲ませてあげたいんです」
「と言われてもなあ……」
「どうかお願いします、おじさん」

 普段はあまり客の顔をまじまじ見たりしないモーリスでしたが、必死になって哀願される
お嬢様のお顔を眺めていると、ふと見覚えがあるような気がしてきました。
それが何時何処でであったのか考えている内に男ははたと思い当り、改めてお嬢様を上から
下まで見直しました。
「そうか、もしかしたら…」
「え、おじさん、何が、もしかしたらなの?」
「あ、ああ…
なあ、お嬢ちゃん、ひょっとしてお嬢ちゃんの名前、ペリーヌって言うんじゃ…」
「え、ええ、そうですけれど…どうしておじさんが?」
「それは…いや、そんな事よりどうだい?
もしお嬢ちゃんがおじさんの手伝いをしてくれるなら、キナ葡萄酒代の足りない分は負けて
あげてもいいよ」
「まあ、本当に? ありがとうおじさん!
わたし、お掃除でも洗い物でも、言われた事、何だってします!」
「なあに、お嬢ちゃんなら簡単にできる事だよ…お嬢ちゃんにならね…
わたしはちょっと準備があるから、先に奥の部屋に行ってておくれ」
「はい、おじさん」

 お嬢様が部屋に入るのを見届けたモーリスは、表に[外出中]の札を下げ、入口のドアの
鍵を掛けて不在を装いました。
お嬢様が調剤室兼薬品庫になっている奥の部屋に置かれていた薬の本の背表紙や色々な形の
瓶、乳鉢などを物珍しそうにご覧になっていらっしゃるとモーリスが入ってきました。

「やあ、待たせたね、ペリーヌちゃん」
「もう、おじさんったら、わたし子供じゃないのよ、もう何でもできる大人なんだから
だから『ちゃん』なんておかしいわ」
「フフフ、確かにマドマゼルは、何でも出来る大人、らしいね」
「おじさん? なんでお部屋に鍵をかけるの?」
「それはね、お嬢さんの事をもっとよく知りたいからさ
ところでお嬢さんは、クロード・ボルネという名に覚えはないかい?」
「クロード、ボル、ネ?…ボルネって、まさか、あのッ?!
い、いいえッ、わたし、ボルネさんなんて知らないわッ!」
「フ、やっぱり知ってるんだね?
隠さなくても、ほら、ここにちゃんと、あんたの事が書いてあるよ」

 モーリスは、お嬢様には手の届かない本棚の上段に並んでいたそれほど厚くもない数冊の
本の列から一冊を取り出し、お嬢様のすぐ横にあった調剤台の上に置きました。
その紙表紙本の標題には【愛の牢獄 ―若過ぎた愛人―】と書かれていました。
『ボルネって、やっぱりあの?…だったら、これって、あの時の…
 ううん、だけどこの題名、ギリシャ神話らしくないわ…
 でも、おじさん、わたしを見て、ペリーヌだって…
 それに、わたしの事が書いてあるって、どういうことなの?…』
 そう思うと、お嬢様はそれを確かめずにはいられませんでした。

 けれど、その本を手にされたお嬢様は見る見るお顔を蒼ざめさせていかれました。
表紙を開いたお嬢様の目に飛び込んできたのは、全裸で寝そべり股間も露わに片膝を立てて
誘うような上目遣いでこちらを窺う少女の絵、しかもその顔も体付きも紛れも無くお嬢様の
ものだったのです。そんな絵が描けるのはお嬢様のすべてを知っているボルネしかいません
でした。
 ですが、彼は、お嬢様はあくまで素材であり、それを元にギリシャ神話に登場する年上の
アンドロメダ姫として描くと言っていたはずなのに、何故この本にはありのままのお嬢様が
描かれているのでしょう?

『こ、これ、わたしだわッ! 裸だなんてッ! それにこんな格好ッ!!
 約束したのに、これじゃわたしだって分かってしまうわ!
 おじさんの言ってたわたしの事って、こういう事だったのッ!
 ボルネさん、いったいどんな本を作ったの!?』
 不安に駆られたお嬢様がさらに頁をめくっていくと、そこにはやはりお嬢様ご本人にしか
見えない未成熟な肢体の少女が一人ならず殿方とまぐわい、その幼い性器を不釣合いなほど
長大な陰茎によって刺し貫かれている様子までもあからさまに描かれた卑猥な挿絵が次々と
現れました。

 何という事でしょう、ボルネが広く世に出してしまったのは、お嬢様が殿方に陵辱されて
いく姿を描いたポルノグラフィ(好色絵草紙)だったのでございます。
 けれどもお嬢様にとって何より衝撃だったのは、殿方に犯されている同じ顔をした少女が
性の快感に酔って恍惚の表情を浮かべていることでした。
 それらの絵を見ているとボルネから陵辱を受けた時の感触が生々しく甦ってきます。
あの時お嬢様は、そんな淫らな表情をボルネに見せてしまっていたのでしょうか?
そんなことを考えると手が震え、お嬢様は本を取り落とされてしまいました。
「イ、イヤッ! こんなのッ、こんなのわたしじゃないわッ!!」
「おっと、そんなに邪険に扱わないでくれよ、これはボルネの久しぶりの新作なんだ
物が物なだけに、なかなか手に入らない代物なんだよ
あんたが読まないのなら、わたしがどんなお話なのか教えてあげよう
今度の話はな、絵描きをしている中年の男やもめと、ある娘の物語なんだ―――」

 そう言ってモーリスは本の粗筋を語り始めました。その内容は、やはりギリシャ神話とは
まったく関係が無く、ボルネの、お嬢様を本人とは分からないようにアンドロメダ姫として
描くと言った約束は守られなかったのです。
 以前お嬢様は、イタリアで商売敵のロッコに犯され、陵辱されているお姿を写真に撮って
ばらまかれそうになった事件がありましたが、とうとうそれが現実のものとなってしまった
のでございます。
 この本を今いったい何人の殿方が手にしているのでしょう? 百人?…千人?…それとも
もっと?…そんな事は考えたくないと思われれば思われるほどそれが頭から離れません。
そして、いつしかお嬢様は、ご自分が本の中に入り込んで挿絵の構図そのままの淫らな姿で
殿方に犯されていて、しかもそれを無数の好色な目に見られている、そんな悪夢に襲われて
しまいます。
 けれどもそれは単なる悪夢ではなく、現実にお嬢様の身に起きた出来事でもありました。
クロアチアで衆人環視の中、処女を失われたお嬢様は、その時はまだ何もご存知では無く、
羞恥は感じても破瓜の苦痛に耐えるのが精一杯でご自分に向けられた視線に込められた強い
欲望に気付かれる余裕もございませんでしたが、今のお嬢様にはその意味するところが十分
過ぎるほど判ります。まだ半年も経たず忘れたくても忘れられないその時の情景と悪夢とが
重なり、ご自分へ向けられる男達の邪まな欲望がありありと感じられて、お嬢様はお身体の
震えが止まりませんでした。

「―――という話なんだ
まだ小さいのに男無しではいられないだなんて、何て早熟で淫乱な娘なんだとあんたもそう
思うだろ?
いや、自分の事だから言われるまでも無いか
何しろ、この娘の名前もペリーヌというそうだからな」
「ち、違いますッ! わたしはそんな…」
「本当に?
知ってるかい、ボルネは自分が実際に抱いた娘を題材に作品を描くって、専らの噂でね
その時の様子をあんまり生々しく描くんで、ほとんどが発禁本になっちまうのさ
なあ、あんたもボルネに抱かれたんだろ?」
「それは……」
「ふーん…でも彼に自分の裸を描かせたのは事実なんだろ?
でなきゃ、この本の挿絵を見てあんなに取り乱したりはしないからな」
「………」
「これにも答えたくないのかい?
しょうがない、それじゃあ、あんたにここで裸になって貰って、挿絵と見比べてみようじゃ
ないか、そうすればはっきりする」
「そ、そんなッ」
「大丈夫、言うとおりにしてくれれば、この本に描かれているのがあんただって事は誰にも
内緒にしておいてあげるよ」
「それって…うぅぅ、分かり、ました……」

 高窓から射す光に浮かび上がった、目に涙を溜め羞恥に震えるお嬢様の裸身をモーリスの
視線が舐めていきます。
「隠しちゃいけないよ、さあ、手を退けて…やはりな、ボルネの絵と寸分違わない
フフフ、小さいが、わたし好みの形の良いポワトリーヌだ…
そして、ここは…柔らかそうに盛り上がって美味しそうだ…あんたのここは、とても具合が
良いそうじゃないか…」
「ああ、いや、お願い、見ないでください…」
「それにしても、クレバスはぴったり閉じてるし恥毛も薄いし、そうと知らなければ処女に
しか見えないのに、もう男を欲しがるなんて、やっぱりあんたはいけない娘だな」
「違いますッ、わたし、そんな女の子じゃありません」
「恥ずかしがる事はないさ、今からそうなら将来が楽しみだ、きっと良い女になれるよ
それで、ボルネが初めてでなかったのはあの本から察しがつくが、だったらこれまで何人の
男に抱かれて来たんだい?
5人?…それとも、もう10人を越えてるのかい?」
「そんなッ、10人だなんてウソよッ!」
「そう言うってことは、10人まではいってなくても、それに近いってことか…
そうだな…7、8人ってところ…そうなんだろ?」
「!」

 これまでの旅の中でまだ幼いペリーヌ様の肉体の上を7人の男達が通り過ぎて行ったのは
本当の事でしたが、お心の清いお嬢様にどうしてそれを諾うことができたでしょう。
けれども耳まで紅くされたお嬢様のお顔がそれを認めてしまいます。
「フフフ、もうそんなに男を知ってるなんて、あんたは本の娘以上に淫乱なんだな
だったら、これからする事もきっと気に入るよ」
「これから、って…おじさんもなのッ?!
イ、 イヤッ! お願い、いやらしい事しないでッ!」
「おやおや、あんたが男の前で平気で裸になるから、てっきりそういう事を期待していると
思っていたんだがな」
「だって、それはおじさんが…
わたし、あんな事、絶対にされたくないんです」
「本当にそうかな?
まあいい、そんなに嫌なら、その代わり、約束した手伝いをやって貰おうか
手伝いって言うのは、あんたの体で薬の効き目を確かめることなんだ
さ、立ったまま、その台の上に腹這いになるんだ」
「お、お薬って、何の?」
「なあに、わたしは薬屋だからね、珍しい薬が手に入ったから験したいのさ
いいから、さっさと言うとおりにしなさい
そうしないと、母親に薬を持って帰れないよ」
「うぅぅ…はい…」」

 部屋の真ん中に据え付けられていた真っ黒に塗られた大きな台に半身を腹這いになられた
お嬢様が不安げに待たれている間、モーリスは薬品戸棚からいくつか物を取り出し、何やら
準備しました。
やがてコトッ、コトッと音がし、そちらを窺われたお嬢様は、それがモーリスの言っていた
薬なのでしょう、薬の瓶らしい小瓶とガラスの水差しが置かれているのを見ました。
けれども水差しに浸っていたのは枯草を編んだ物のように見えました。そんな物が薬なので
しょうか。
 ですが、そんな事を考える暇もあらばこそ、お嬢様は秘裂に触れられそこが開かれるのを
感じてビクンッとお身体を撥ねさせました。
「アアッ!? ヤッ、何をするのッ!!」
「何って、膣(なか)に薬を塗るために決まってるじゃないか、そう言っただろ?
このままじっとしているんだよ」
「そんなの聞いてなッ、ンアアアアッ!」

 モーリスはお嬢様の言葉を無視して、小瓶から黄色みを帯びた乳白色の軟膏薬をたっぷり
すくい取った2本の指を突き入れ、膣内に塗り拡げていきます。
その直後、敏感な粘膜にすぅっと冷感が広がったと思うとすぐにヒリヒリ痛み出し、やがて
それは灼熱感へと変わっていきました。
「ヒッ、ヒイイィィィ、ナニを塗ったのッ!? 冷たいのに、熱いィィッ!」
「フッフッフ、これは媚薬といってね、惚れ薬なんぞというインチキ薬とは違って、本当に
女のここを気持ち良くする薬なんだ
どうだい、気持ち良いだろ?」
「そんなこと…ない…」
「そうかい?
それにしちゃあ、指をグイグイ締め付けて、あんたのここはこれを気に入ったようだ
そんなに気に入ったなら、もっと塗ってあげよう」
「アアッ、ダメッ、もうこれ以上、ヒアアァァ…」

『ンフッ、指が奥までッ、自分でした時とぜんぜん違うッ、中が掻き回されちゃうッ
 こんなにされたらわたしッ…ううんだめよペリーヌ、がまんしなくちゃ
 そうしないと、いけない娘だって…でも、でも、わたしもう…』
「アッ、アッ、ンッ、ンッ……アクッ、フアアァァ……アン、アアンッ、ンアアァァ……」
 それから5分以上も手淫を受け続けて、お嬢様は指が抜かれるまでに何度も絶頂を迎えて
しまわれました。

『フッフッフ、メントールとカンファーを入れた虫刺され薬を塗っただけなのに、こんなに
 乱れるとは、この娘、ずいぶんと開発されていたんだな
 さて、そろそろあっちも使えるようになった頃合いだな、これであれを使ったらさぞかし
 善がり狂うことだろうよ』
 そう、モーリスの用意した“媚薬”は、まだもう一つ残っていたのです。
 モーリスが用意していたのは、長さ7寸太さ1寸5分あまりの、草の茎ような物で表面を
精緻な模様を浮き立たせて編み上げられた見事な手工芸品でしたが、両端が大小の亀頭状に
編まれているところをみると、形と言い大きさと言い、その使い道は自ずと知れました。

 水差しから引き上げられたそれに付いた水がさっと払われると、部屋に甘ったるい匂いが
漂いました。
まだ息を喘がせていらっしゃるお嬢様の秘部へ小さな方の亀頭から押しつけられたそれは、
表面がぬめってヌルンと吸い込まれ、固い芯のおかげでへたりもぜずに奥へ進み子宮を叩き
ました。
「ハウッ?! ンンン…ンアッ!
イッ、イヤアァァ、変な物、入れないでェッ」
「フフフ、ちっとも変じゃないさ、これが二つ目の媚薬だよ」
「うそよッ、こんなのお薬じゃ、ウアアッ、イヤッ、動かさないでェッ」
 モーリスはそれをゆっくり抽挿し時に手首を回して膣に馴染ませるように動かし、表面に
浮き出る編み目で嬲りながら草の茎の一本一本から滲み出てくるぬめりを肉襞へ擦り付けて
いきました。

 そうされている内にお嬢様は膣内が熱くなってくるのを感じます。それは表層だけだった
軟膏を塗られた時とは違いお腹の奥から湧き出てくる熱でした。その熱はどんどん溜まって
いって、肌を紅潮させたお嬢様の上げられる喘ぎ声が艶めいていきます。
「アッ、アッ、アン、フ、ウン、ン、ン、フア、ア、アアン……」
「ふふ、すっかりこれがお気に召したようだ
これが立派な媚薬だって分かっただろ?
これはヒゴ=ズイキといって、遠い東の国、ジャポンで作られたものなんだ」
 モーリスの言った事は本当でした。ヒゴズイキとは、催淫成分を含んだサトイモ科植物の
干した茎を編み上げた物で、モーリスの用いている芯の入った張型は本来女が夜の侘しさを
慰めるために自ら使う物でしたが、他にサック状の物もあって、これを陰茎に被せて殿方に
使われると女は編み目の刺激と催淫効果とで随喜の涙を流してしまうのです。
 1867年の第2回パリ万国博覧会に参加して以来、貿易をするようになった日本からは
様々な文物が輸入されるようになり、他の欧州国に比べ性に寛容な国民性からフランスでは
このような淫具や春画、あぶな絵などいった性風俗物が珍重されていたのでございます。

「ハァ、ハァ、ハァ…気持ち、よく、なんか…」
「そうか、まだ効果が出ないのか、なら、もっと強くしなくちゃいけないな」
「アアッ、待っておじさ、ンンン…
ハウッ、アウウッ、ヤメテェッ、そんなに、強く、アッ、アッ、アッ、アアアァァ……」
 ヒゴズイキを一旦抜き出したモーリスが向きを変えて大きい方の亀頭から膣に突き入れて
激しく抽挿しだすと、溢れ出る熱い蜜にまみれて催淫成分がますます溶け出してきて粘膜に
吸収され、高鳴る心臓の鼓動に合わせてお嬢様の肉襞はビクビクと脈打ちだします。
 けれどもお嬢様が絶頂を迎えようとされた刹那、淫具が抜かれてしまいました。
あまりにも強かった性の刺激を突然止められたお嬢様は、狂おしいほどの切なさに襲われて
花びらをヒクヒク震わせ、辛抱出来ぬ気に擦り合わせる内股を滴る蜜で濡らしました。

「……続きが……欲しいんだろ?……
   ……挿入れて……あげるよ……
     ……自分で……開きなさい……」
 浅く早く息を喘がせ奔流となった血潮でざわめくお嬢様の耳にそんな囁きが途切れ途切れ
届きます。
『続き?……わたし…何を…欲しいの?……
 そう…わたし…入れて、欲しい…もっと、して欲しいんだわ…
 開けば…いいのね?…そうすれば……
 でも、どこを?…ああ…そうだわ…あそこだわ…』
 媚薬によって性の欲求という熱に浮かされたお嬢様は、恥じらいも忘れられ、夢遊病者の
ようにご自分のお身体の中で今最も熱く感じられる部分へと手を伸ばされ、モーリスの前に
自らそこを開いてしまわれました。

「ハアァァァ…」
 花芯深くに侵入を受けたお嬢様は、ご自分が何をされたのかも知らず、満たされた吐息を
漏らされました。
 けれども、挿入された物にこれまでのような肉襞をこそげる編み目は無く、妙に密着感が
あって熱を帯び、お嬢様のお身体はその違和感を感じ取って、やがて靄にかすむお心にまで
届きました。その感触は、哀しくもお嬢様が良くご存知のもので、それがお嬢様を淫夢から
現実へと引き戻します。

『ん…ん…んう…なんだか…さっきと…ちがう…お腹の中の…こんなに…熱かった?…
 あうっ、あううっ…なんで、そんなに強く、お尻にぶつかってくるの?…
 これって…これじゃ、まるで……』
「アッ、アッ、アッ、ンアアッ?!
何? おじさん何をして…アアッ、イヤアァッ! おじさんのが中にッ!!
ひどいッ、うそつきッ!
お薬の効き目を、確かめるだけって、いやらしい事は、しないって、そう言ったのにッ」
「嘘なもんか、これは薬の効果を確かめるためにしてるんだよ
媚薬が女のここを気持ち良くするって言っただろ? あれは、冷感症の女でもこれを使えば
体が熱って堪らなくなり、抱かれた男に極上の快楽を与えられるようになるということで、
媚薬とはつまり、男を気持ち良くさせるための薬なんだよ
だから、その効果を確かめるには、実際にこうするしか無いのさ
それにもう少しすると、淫乱なあんたをもっと悦ばせられるから、楽しみにするといい」
「アアッ、またッ! もう動かないでッ! もう抜いてェェ……」

「ンッ…ンッ…ンッ…ンアッ?…アウッ?!…ウアアアッ!!
ヤッ、なんでッ!? おじさんのが、中で大きくッ、大きくなってくッ!!」
「分かるかい? あんたの膣(なか)に残ってる媚薬がわたしにも効いてきたんだ
どうだい、こんなに太いものを挿入れられて、嬉しいだろ」
「アグウゥゥ、お腹がァ…これ以上、大きく、ならないでェッ!」
「ふ、いくら淫乱と言っても、さすがにこれは苦しいか…
なら、せめて他の事で気を紛らわせてあげよう」
 後ろから貫いたままお嬢様を抱え上げたモーリスが椅子にどかっと座ると膣内で一回りも
二回りも大きくなっていた陰茎がさらに深く潜り込んできて、お嬢様に苦悶の声を上げさせ
ましたが、彼の言った他事とはこれではありませんでした。

 自分の腰の上でお嬢様の股を割らせたモーリスは最初に使った軟膏を乳房に、次いで女の
最大の弱点に塗っていきます。すると、外気に触れる中、軟膏のメントールが体温で急激に
昇華し氷の塊りを押し付けられたような疼痛を与えました。
「ヤッ、お胸に触らなッ、ヒアッ! ヒイィィ…」
「どうだね? 同じ薬でも膣(なか)で使われるのと違って、これはこれで良いもんだろ?
フッフッフ、こんなに乳首を固く尖らせて…
そんなに気に入ったんなら、もっと念入りに塗ってあげような」
「ヒインッ、イタイッ、お乳、潰さッ、イタヒィィ、ヤメテッ、ヤメテェェ…」
「オオッ、良い締め付けだ、だったらこっちにも塗ったらもっとわたしを気持ち良くさせて
くれるのかな?」
「ヒッ、そこはダメッ、そこだけはッ、イギッ、ヒギイィィ…」
 ただでさえ敏感なのに、強い刺激物でさらに過敏となった部分を執拗に責め立てられて、
剥き出しの神経を逆撫でされたような強烈な痛みが走って悲鳴を上げられたお嬢様の花芯は
そのたびにきつく締まり、モーリスに快感を与えます。

「い、いいぞ、その調子だ、お返しに、あんたも、気持ち良く、させて、あげるよ」
 下からゆさゆさ突き上げられながら、またしても殿方に犯されてしまったお嬢様の目から
止処無く涙が零れます。
やはりご自分はこのような運命に付きまとわれているのだと。
 けれどそれ以上に哀しかったのは、こんな酷い事をされているというのにお身体が勝手に
快感を感じてしまう事でした。女の性感帯において苦痛と快楽は表裏一体とも申せ、次第に
太過ぎる陰茎にも膣が馴染んで、お嬢様の中で快感がいや増していきます。
『ああ、なんでなの? お腹の奥が熱く、どんどん熱くなって、蕩けてしまいそう…
わたしの体、どうなっちゃったの? こんなひどい事、されてるのに、気持ちい…
ち、違うわ、気持ち良い、だなんて…そう、そうよ、きっとお薬の、せいだわ…
だけど…だけど熱いの、どんどん熱くなるの、もう動かないで…
アアッ、ダメッ、このままじゃわたしッ…恐い、怖いわ、助けて、お母さーん…』

「アアッ、ダ、ダメェ、これ以上、ンアッ、ンッ、ンッ、アッ、アッ、アッ、アアァァ…」
「ウオッ、何てことだ、よもやこれ程とはッ
これまで、薬代代わりに抱いた、どの娘とも、比べ物にならん!
主人公の、未練が、よく分かる、何時までも、こうして、いたいぞ
だ、だが、ウウ、そろそろ、射精(で)そうだッ」
「あ?…アアッ、イヤッ、中はイヤァッ、中に出さないでェッ」
「何を、言うんだ、女にとって、男の精は、最高の媚薬、じゃないか
たとえ、今は、そうじゃ、なくても、すぐに、欲しくて、欲しくて、たまらなく、なるさ
ムウウ、さ、さあ射精(だ)すぞ、わたしの媚薬を、子宮で全部、呑み乾すんだッ!」
「ヤッ、ヤメッ、アアアッ、イヤッ出てるッ! イヤッ、イヤアァァァ……」

 心ならずも性の快感を感じて下りてきた子宮に密着した鈴口から内部へドクドクと何度も
精液が注ぎ込まれ、絶望に息を喘がせぐったりとされたお嬢様を、けれどモーリスは休ませ
てはくれず、前に向き直させて、抜いても勃起のまったく治まる様子の無かった熱い肉塊を
再び挿入していきます。
「ん、んんんうん…はぁ、はぁ、はぁ…
ヒア、イヤァ、お尻に触らないで、もういやらしい事しないでェ」
「膣(なか)をあんなにくねらせて、わたしのものを美味そうに咥え込んでいたのに、まだ
自分が淫乱な娘だと認めないのかい?
 あんたの体にはな、一人だけでは満足できず次々と男を虜にせずにはいられないような、
そんな魔性がひそんでいるんだよ、たとえ自分では気が付いていなくてもな
ボルネもあんたの中にそれを見たんだろう、だから本の最後で、本当の自分に気付いた娘は
次の愛人を求めて主人公の許を去ったんだよ
 さあ、それじゃあ、ズイキの効き目がどれだけ続くか験しがてら、わたしの特製の媚薬を
ここにたっぷり呑ませてあげるよ、あんたが自分の事を良く分かれるようにな」
「ハウゥ…イヤア、入って、入って来る
ンッ、ンッ、ンウッ、動かなッ、ンアッ、アッ、アッ、ウアアッ、もう、許してェェ……」

 こうして悲痛な涙は無情にも顧みられず、さらに回を重ねるごとに淫らな体位を取らされ
より激しく犯されていったお嬢様は何も考えられなくなり自らも快楽を求めて腰をくねらせ
歓喜の声を上げるようになってしまわれます。
やがて、すべてが終った時、お嬢様の子宮内には7回分のモーリスの特製薬が注ぎ込まれて
いました。
「ふう…こんなに射精(だ)したのは若い時以来だ…
フフフ、あんなに乱れて、媚薬の効き目は抜群だったな
あんたも満足できて良かっただろう?」
「そんな…う、うううぅぅ…」
「さて、億劫だが、そろそろ店を開けなくちゃならんな
さ、あんたも早く服を着て、薬をお母さんに持って帰ってあげるんだ
分かってると思うが、今日の事は誰にも内緒だよ
その代わり、わたしもボルネの本の事は誰にも言わないでおくからね
じゃあ、また淫乱の虫が疼いたら何時でも来なさい、わたしが治してあげるよ」

 薬を受け取り薬屋を出たお嬢様は一刻も早くそこから離れたくて駆け出されました。
けれどもその足はすぐに止まってしまいます。あれほど激しく犯され続けた膣が熱を持って
疼いたのはもちろんですが、それよりもお嬢様のスカートの下で、モーリスの前では憚られ
清められないまま胎内に残っていた精液が秘部から漏れ出してくるのを感じたからです。
 これまで何度も感じたその感触が鼻腔に精液の青臭い匂いを生々しく甦らせ、その匂いを
他の人にも気付かれてしまうのではないかと不安になられたお嬢様は、道を行き交う人々を
避けて壁に寄りかかられました。
 ですが、通行人が減るのを待って背中を向けているとお嬢様の不安は却って高まってきて
心臓がどきどきと波打ち始め、人々の蔑みの視線やひそひそと交わされる謗り言がご自分へ
向けられている気がしてきます。そして、その声はだんだんと大きくなっていきました。

『おい見てみろよ、あの娘から男の匂いがぷんぷんするぜ
 真昼間から男遊びをするなんて、とんだ淫乱だぜ』
『ふん、ふん…おお、確かに匂う、匂うぞ、こりゃあやりたてだな
 だのに、もう次の遊び相手を探してるとは、なんて淫乱な娘なんだ』
『あらやだ、本当だわ、まだ小さいのに、なんてふしだらなの
 早くどっかへ行ってくれないかしら、娘に淫乱が移ったら大変だわ』
『まあまあ奥さん、そんな事言っちゃ可哀相ですよ、きっと生まれ付きなんですよ
 ほら、よく聞くでしょ、小さい頃から男が好きで好きで堪らないっていう淫乱娘の話
 あたしたちはあんなふうに生まれなくて良かったって、神様に感謝しなくちゃ』
『違う、違うわッ! わたし、淫乱なんかじゃ、そんな女の子じゃないわ!』
『いいや、お前は正真正銘の淫乱だ』
『そうだよ、自分が淫乱だと、ちゃんと認めなきゃいけないよ』
『汚らわしい淫乱な子よ』
『可哀相な淫乱な子だわ』
『止めてッ、もう止めてェェ……』

 それは、押し寄せる官能の波に流されてしまったご自身への嫌悪から生まれた幻でした。
そんな謂れ無き自己嫌悪の深みからお嬢様を我に帰らせたのは、マルセル少年でした。
「…ヌ、ねえ、ペリーヌったら」
「え?…あ、マルセル!?」
「やあ、ペリーヌ、そんな所でしゃがみこんで、どうしたんだい? お腹、痛いの?」
「お腹…あ、ち、違うの、お腹は何でもない、わ
お母さんのお薬をもらって、帰るとこなの
そ、それより、マルセルこそ、どうしてこんな所に? サーカスの練習はいいの?」
「うん、おばちゃんのお見舞いに行きたいって言ったら、父ちゃんも行って来いって」
「そう、だったの、ありがとう、マルセル」
「うん、じゃあ一緒に行こうよ、ペリーヌ
ね、手をつないで、いいかい?」
「いいわよ、マルセル」
「えへへ…
あれ、ペリーヌから、なんか匂いがするよ
何だろこの匂い、どこかで嗅いだ覚えが…」
「エッ? に、匂いって!? わ、わたし、何もされてなッ、う、ううん、何でもない」

『どうしよう、気付かれちゃったの?
でも、マルセルはまだ子どもだから、何の匂いだかなんて知らない…
ううん、だめよ、だってわたしとマルセルは…あの夜、終わった後も、しばらくすぐそばで
一緒にいたから、マルセル、わたしのお股からしたこの匂いを嗅いで覚えてるんだわ
もしそれを思い出したら、きっと何があったか分かっちゃう
あなたに今日の事、知られたくないの、だからマルセル、お願い思い出さないで…』

『どうしたんだろ、ペリーヌ、急にあわてて…それに、何もされてないって?…
 それにこの匂いは…そ、そうか、そうだったんだ、ペリーヌ、また誰かにむりやり…
 ごめんよペリーヌ、都会は恐いとこだって、自分で言ったのに、おいら、またペリーヌを
 守ってあげられなかったんだね
 チキショウ! おいらのペリーヌに、ひどい事した奴は誰だ、今度こそぶんなぐって…
 あっ、でも、そうすると、相手が誰か聞かなきゃ…
 そんなの聞けやしないし、ペリーヌはきっと、前の時みたいに、何も無かったことにして
 欲しいんだろうな…だったら、おいらにできるのは…』

「思い出したよ、ペリーヌ、これって、虫刺されの薬の匂い、だよね?」
「え?…あ、そ、そうだったわ、わたし、虫に刺されて…
そ、それで、お母さんのお薬をもらうついでに、虫刺されの薬を塗ってもらったの…」
『良かった、マルセル、気付いてない…
 きっと、最初に塗られた薬の匂いでごまかせたんだわ』
 少年の言葉を聞いてほっと胸を撫で下ろされたお嬢様は、マルセルが、ご自分がロッコに
犯された事を見破っていたのも、わずかに残るメントールの匂いに惑わされず今日お嬢様の
身に起きた事を見抜きながらお嬢様のお気持ちを察して嘘をついたこともご存知ありません
でした。そして、自分の愛する者を守ろうとして優しい嘘のつけるようになったマルセルの
成長を促したのが、身も心も捧げて少年に愛を教えたお嬢様ご自身であったことも。

「そうだったんだね、ああ、すっきりした
匂いのことも分かったことだし、ペリーヌ、さあ、帰ろう」
「ええ、マルセル」
『ペリーヌ、パリにいる間は、毎日来て、今度こそペリーヌを守ってあげるからね』
 そう心に誓ってご自分の手を力強く引いてくれる少年が頼もしく、お嬢様は救われた気が
しました。
ただ困ったのは、歩く度に精液の染み込んだドロワーズがぐじゅぐじゅと股間に絡み付き、
気持ちが悪かったことでした。お嬢様は誰にも気取られずにどうやってモーリスの残り香を
清めようかと思案されながら、お母様の待つシモン荘へと帰って行かれました。


 けれどもサーカス公演が迫る中、少年は外出が許されなくて立てた誓いを全うすることは
叶いませんでした。その間にも、往診のたびに薬の処方が変わってサンドリエ医師の指定店
であるモーリスの薬屋へ行かない訳にはいかず、そこで毎回お嬢様を待っていたのはやはり
あの奥の部屋でした。
 パリの片隅で、同じように脅されたり騙されたりして玩ばれ、哀しみの涙を流した少女は
他にも数多いたことでしょう。
ですが弱い者に無慈悲な大都会の闇はいよいよ濃く、モーリスに受けた陵辱すら物の数では
ない、さらなる淫惨な運命をお嬢様に用意していたのでございます。


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