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レディ・ペリーヌ物語 5

〜 レディ・ペリーヌ物語 5 〜

【 旅の続き ―イタリアでのいくつかの出来事 その3 前編― 】


 ロッコ達との一件から瞬く間に二週間ほどが過ぎ、ペリーヌ様とマルセルはすっかり打ち
解けて、事情を知らぬ他人の目にはもはやマリ様達が優しい母親とその仲の良い姉弟にしか
見えませんでした。
 けれども普段は明るく振舞う少年が時折顔を曇らせることがありました。それはきっと、
マリ様に優しくされればされるほど自分の本当の母親が恋しくなってしまうからでしょう。
 ご自身もお父様を亡くされたお悲しみを健気に忍ばれていらしたペリーヌ様には、そんな
マルセルの淋しげな表情が切なくて、慰めてあげている間に、お嬢様と年下の少年は姉弟を
越えた縁で結ばれることとなったのでございます。


 それは、マルセルの両親がいるエトワールサーカスに、あと少しというところで追い付け
なかったベローナの街を過ぎ、サーカスの次の巡業先ミラノを目指して旅を続けられていた
お嬢様達が、とある湖の畔の森の中で野宿をされた時のことでした。
 三人で質素ながらも楽しい夕餉を済ませると、辺りはすぐに暗くなり、マリ様とお嬢様が
馬車に入られ寝間着に着替えられた後、何やら森の中が騒がしくなりました。
お二人が表へ出ると、月明かりの射す中、マルセルが意気揚々と小鹿を抱えて帰ってきて、
その周りでバロンが得意げに吠えていました。その鹿はどうしたのかと訪ねられた少年は、
月が昇った後、偶然見つけた鹿の親子をバロンに追い立てさせて捕まえたと言います。
このところマルセルのお仕込みよろしく色々な芸を覚えたバロンは、少年の言うことをよく
きくようになっていたのです。
 ペリーヌ様は可愛い小鹿を見て喜ばれ、少年はサーカスに連れて行って芸を仕込むんだと
意気込みましたが、マリ様は少し悲しそうなお顔をなさいました。
母親から引き離されて小鹿が幸せなのかとマリ様に問われた少年は、自分が母親をこがれて
お嬢様達と旅をしているのを思い出し、自分が間違っていたことに気付きます。
その時、人を恐れて決して近づかないはずの鹿がすぐ近くまで寄って来て、悲しそうに鳴き
ました。それは母鹿でした。母鹿は子供を返してと訴えるようにこちらを見ていました。
「よかったな、おまえ…母ちゃんが、迎えに来てくれたよ」
「マルセル…いいの?」
「うん、ペリーヌ、これでいいんだ」
 少年が小鹿をそっと降ろすと、小鹿は嬉しそうに母鹿の許へ走り、二頭は連れ立って森へ
戻っていきました。
「マルセル、あなただって、もうすぐお母さんに会えますよ」
 二頭を見送る少年をマリ様が優しく抱き締めてくれました。

 それから三人はそれぞれの想いを胸に眠りにつきましたが、しばらくしてペリーヌ様は、
長旅で疲れていらっしゃるお母様を起こしてしまわぬようにそっと馬車を抜け出し、ロバを
繋いである所へ向かわれます。
そこには動物好きなマルセルがパリカールの脇で寝ているはずでした。お嬢様は、母子鹿を
見送った時のマルセルの様子がとても淋しそうだったのをご心配されたのです。
けれど、パリカールのそばにマルセルの姿はなく、周りにも見当たりません。
 マルセルを探してペリーヌ様が湖へ続く小径を歩かれていると、そこに小さくチャポンと
水音がします。それを耳にされたお嬢様が森を抜け出ると、湖畔に生えたとても大きな木の
根元に少年がうずくまっているのが見えました。

『マルセルったら、こんなところで何をしてるの?』
 少年に声をかけようとされたペリーヌ様は、かすかに聞こえてきた声にハッと息を呑まれ
ました。マルセルは肩を震わせて泣いていたのです。
「母ちゃん…会いたいよう…ウ、ゥゥゥ…」
『いつもあんなに元気なマルセルが、泣いてる…
 やっぱりそうだったのね…
 せっかくベローナで追いつけると思ってたのに、お母さんに会えなかったんですもの…
 マルセルはわたしより年下なんだから、無理ないわ
 でも、そんなに淋しかったんなら、どうして言ってくれなかったの?』
 そう思った瞬間、ペリーヌ様はすべてを理解されました。きっとマルセルは、母娘だけの
旅で苦労されているマリ様達に、これ以上余計な心配をかけたくなかったのでしょう。
それに、男の子としてメソメソしているところを見られたくなかったのもあるでしょう。
もしかしたら、これまで一緒に旅をしていた間も毎晩こうしていたのかもしれません。
 間を木立によって遮られ、大枝が垂れ下がって天蓋を形作るこの木の根元でなら、大きな
声で泣いても馬車のところまでは聞こえなかったでしょうに、そうしない少年の心を想うと
ペリーヌ様の目からも涙があふれ、居ても立ってもいられなくなられたお嬢様は駆け寄って
その胸にマルセルを抱きしめられました。
「マルセルッ! いいの、我慢しなくていいのよ
男の子だって、悲しい時は泣いたってちっともかまわないんだわ」
「ペリーヌ…ウ…ウアアァァァ……」

 ペリーヌ様に寄り縋ってひとしきり声を上げて泣いたマルセルは、落ち着きを取り戻すと
急に恥ずかしさを覚えました。
それは、女の子の前で泣いてしまったのが照れくさかったこともありますが、それよりも、
こうしてお嬢様の胸に顔をうずめていると、寝間着の下で息づく乳房の柔らかい感触が頬に
感じられ、いつかのあの川原でそれに直接触れた時のことが思い出されたからです。
 ですがお嬢様の温かい胸はとても心地よく、トク、トク、と穏やかに鼓動する心臓の音を
聞いていると心が休まって、マルセルはずっとこのままでいたいと思います。
「ごめんよ、ペリーヌ、寝間着、汚しちゃったね」
「そんなの、いいのよ」
「だったら、もう少しだけ、このままでいてくれる?」
「ええ、マルセルの気のすむまで、ずっとこうしててあげる」
「ヘヘヘ、おいら、母ちゃんにおっぱいをもらってた赤んぼの頃に戻っちまったみたいで、
なんだか恥ずかしいや」
「あなた、赤ちゃんの頃のこと、覚えてるの?」
「覚えてはないけど…だけど、母ちゃんのおっぱい、とってもおいしかった気がするんだ」
「そうだったの…」
『マルセル、まだお母さんのお乳が恋しいのかしら…
 でも、まだ子供なんですもの、しかたないわよね』
「ねえ、ペ…お姉ちゃん、お姉ちゃんって、母ちゃんとおんなじ、いい匂いがするよ」
『マルセルったら…いつもは呼び捨てなのに、お姉ちゃんですって…なんだか変な感じ…
 いつかわたしに子供ができたら、わたしも名前じゃなくて、お母さんって呼ばれるのね…
 そして、こうやってだっこした赤ちゃんにお乳をあげるんだわ…
 今わたしが本物のお母さんだったら、マルセルにもお乳をあげられるのに…』
「ごめんねマルセル、お母さんのこと、また思い出させちゃって…」
「ううん、いいんだ…
お姉ちゃんのいい匂いをかいでると、母ちゃんに抱かれてるみたいで気持ちいいんだ」
『それって、女の子の匂いってことなのかしら…それなら、わたしにだって……
 いいわ…わたしが今だけ、あなたのお母さんになってあげる…』

 こうしてご自分に母親の面影を重ねて赤ん坊のように甘えてくるマルセルがいじらしくて
堪らなくなられたペリーヌ様は、たとえ本物でなくとも母の肌の温もりの幾分かでも少年に
与えてあげたいと思われました。
「ねえ、マルセル、ちょっとだけ、目をつぶっててくれる?」
 マルセルがまぶたを閉じると、ペリーヌ様の身体が離れていきます。それから少しすると
ふわりと何かが頬をかすめ、お嬢様が何をされているのか気になった少年はつい目を開けて
しまいました。
「ダ、ダメよマルセル、まだこっちを見ないで」
 そう言われて慌ててまた目をつぶった少年でしたが、確か、お嬢様の寝間着はラベンダー
色だったはずなのに、その時一瞬見えた白い物はいったい何だったのだろうと思いました。
 一方お嬢様はといえば、目をつぶらせたマルセルの前に立ち上がって襟のボタンを外し、
長い裾をたくし上げて寝間着を脱いでいかれましたが、それをいつもの癖で塵をはたこうと
して振ってしまい、風をはらんではためいた寝間着が少年の頬に当たってしまったのです。
そのせいでマルセルにあられもない姿を見られ、とっさに手にしていた寝間着をかき抱いて
前を隠されたものの、ペリーヌ様はしばらくの間、胸がドキドキしてなりませんでした。
『恥ずかしがったりしちゃダメよ、ペリーヌ、だってもうマルセルには胸だけじゃなくって
 何もかも見られてるじゃないの』
 そうご自分をはげまされるペリーヌ様でしたが、あの時のお嬢様は、ロッコの手によって
すでに全裸にされてしまっていたのであって、たとえ相手が子供でも、異性の前で自ら肌を
晒していくことには、やはり羞恥を禁じ得ませんでした。
クロアチアでの出来事を考えると、その時の方がよほど惨酷で耐え難い羞恥をはらんでいた
はずなのに、ペリーヌ様が今そう感じられるのは、クロアチアでは、まだご自分が女である
という事をまったくご理解されていらっしゃらなかったお嬢様が、それを少しずつ学ばれて
こられた証左と言えたでしょう。

「もう…いいわ」
 ゆっくりまぶたを開いていった少年は、いつの間に月に雲がかかったのか、周りが暗くて
初めは何も見えませんでしたが、ほどなくその雲も流れていき、仄かな月の光が切れ切れに
届き始めると、目の前にお嬢様らしい人影が浮かんできました。
ですが、おぼろげなそのシルエットはどこか変でした。
「お姉ちゃん?」
 マルセルが目を凝らした瞬間、月を覆っていた雲が完全に切れ、さっと射してきた月影が
ペリーヌ様を照らし出します。
そこに映し出されていったお嬢様は、お尻をつけて座っている腰のあたりこそドロワーズを
まとわれておられましたが、それ以外は地面に手をつかせて身体を支えている華奢な肩も、
近頃膨らみが目立ち始めてきた乳房も、先ほどまで寝間着の下に隠されていた肌のすべてを
露わにされていらっしゃいました。
「ワッ! お、お姉ちゃん!?」
 ペリーヌ様のそんなお姿を正視できず、慌てて横を向いたマルセルは、寝間着がきちんと
畳まれて地面に置かれているのを見つけ、自分が目をつぶっている間にお嬢様が何をされて
いたのかだけは理解しましたが、何故そうされたのかまでは分からず混乱する頭のどこかで
『そうか、さっき見た白いのって、お姉ちゃんの下穿きの色だったんだ』などと見当違いな
ことを考えてしまいます。
 これまでも洗濯をされる時などペリーヌ様はよくシミーズ姿になられて、マルセルが旅に
加わって、男の子がいつもそばにいるようになってもあまりお気になさいませんでしたが、
物心がついた時にはすでにサーカスで暮らしていて歳の近い女の子と接する機会もほとんど
なく姉妹もいなかった少年にとって、薄い布ごしにお嬢様の胸の輪郭が見え隠れする光景は
とてもまぶしく、それに川原で見た裸身が重なってしまい、そんな時はバロンを散歩させる
とか何かと理由をつけてはその場を外していたほどでしたのに、それが思いもよらぬ場面で
再び乳房を見せられて、どうして良いか分からなくても当然だったでしょう。

「マルセル…わたしを見て」
「で、でも…」
「わたしの胸、前にも見てるじゃない、それなのにまだ恥ずかしいの?
でも、お母さんのだったら、そうじゃないでしょう?」
「うん、母ちゃんのなら…
おいらの母ちゃん、演技の前に馬車の中でいつも今のお姉ちゃんとおんなじ格好になって、
胸までドーランを塗るんだ、だから…」
「だったら、わたしをお母さんだと思えばいいのよ、それなら恥ずかしくないでしょう?」
「そんなこと言ったって……お姉ちゃんは、恥ずかしくないの?」
「わたし?…そう…本当をいうと、少しだけ…」
「だったら、なんで?」
「だって、マルセルがあんなふうに淋しそうにしてるのがほっとけなくて…
それでね、さっきあなたとお話ししてて考えたの、わたしにもあなたのお母さんの代わりが
何かできないかって…
だから、マルセル…まだお乳は出ないけど…お母さんのだと思って、吸って」

 ペリーヌ様のお言葉で自分が言った事を思い出した少年は、ようやくお嬢様が自分に何を
してくれようとしているのかが分かりました。
『おいらの…ために?』そう思うと、そんなことをされるのはきっととても恥ずかしいはず
なのに、そうまでして自分を慰めてくれようとされているお嬢様の思いやりがうれしくて、
少年は目頭が熱くなるのを感じます。
「いらっしゃい、マルセル」
 声に誘われ、少年はお嬢様への前に向き直りました。
 月明かりに浮かび上がったお嬢様の真白い胸の膨らみは、マルセルの母親の舞台衣装から
零れんばかりの豊満さには比ぶるべくもありませんでしたが、造形の粋を極めたニンフ像の
ような凛とした佇まいと少女期特有の危うい儚さとが渾然となって、今まで見たどんなもの
よりも美しく映り、苺マシュマロのように淡く色付いたその頂は堪らなく甘そうで、少年に
それを味わってみたいと思わせます。
 そのまま吸い寄せられるように手を前について顔を近づけさせていったマルセルの鼻先が
今まさに乳房へ触れなんとして、ハッとなった少年が最後の確認を取るように見上げると、
お嬢様が微笑みを返してくれました。

「ほんとに、いいの?」
「ええ…」
 そうはいっても、女の子の胸に直接口を付けるのはやはり気恥ずかしかったのでしょう、
おずおずと伸ばされていった舌先がとうとう乳首に触れて、お嬢様の肩がわずかに撥ねると
少年は動きを一瞬止めましたが、お嬢様は何もおっしゃらなかったので、そのまま目の前の
乳房を舐めてみました。
すると、そこにはかすかな塩み以外とりたてて味はしませんでしたが、鼻腔の奥に匂いとも
つかない甘たるさが満ち、乳輪の舌に吸い付く触感もとても心地よいものでした。
「ねえ、お姉ちゃん、もう片っぽうもいい?」
 マルセルにそう乞われたお嬢様は、何もおっしゃらず、少年の口の前にもう片方の乳房を
差し出されます。
それからも少年に子犬のように左右の乳房を二度三度と舐めるたび、お嬢様は肩を震わせて
いらっしゃいましたが、どうやらそれは、くすぐったさを我慢されていたようでした。
 ペリーヌ様が痛がったりしていないのを知り安心したマルセルは、もう少し強めに舐めて
みることにして、舌を押し付けて舐め上げると、乳房がフルッと揺れては元に戻ります。
こんなに柔らかいのに弾力もある乳房の動きが面白くて、マルセルはわざとそれを揺らして
みたり、周囲をなぞってフルリフルリと乳首に円を描かせたりしました。
そうしている内にもペリーヌ様の息は忙しくなっていき、熱を帯び始めた乳頭もむっくりと
立って、とても敏感になったそこを尖らせた舌の先で突かれたお嬢様は思わず声をお上げに
なります。

「アンッ!」
「お姉ちゃん、痛かった?」
「もう、マルセルったら、わたしのおっぱいで遊ぶんですもの…あんなこと…
あんなの、お母さんにすることじゃないわ」
 そうおっしゃられたペリーヌ様でしたが、本当は、乳房に触れられている内に、どこかで
味わったことのある身体がどうしようもなく熱ってしまう感覚がご自分の中に湧き上がって
くるのを自覚されて、それが何故だか知らずふしだらなことに思えていたところに、少年の
前でうわずった声を上げてしまったのが恥ずかしかったのです。
ご自分の言葉でマルセルが意気消沈してしまったのを見たペリーヌ様は、強く言い過ぎたと
後悔され、これは元々少年を慰める為に始めた事なのだから、もう何をされても怒るまいと
決心されます。
「ごめんよ、お姉ちゃん…おいら…おいら…」
「あっ…わたし、怒ったわけじゃ…
そうね、ちゃんと言わなかった、わたしも悪かったわ
ね、だから、もうそんな顔しないで」
「怒ってないの?」
「ええ、もちろんよ
だけど、赤ちゃんって、お母さんのおっぱいを舐めるんじゃなくて、吸うものでしょ?
わたしは今、あなたのお母さん代わりなんだから、マルセルもそうして…」

 ペリーヌ様が背中を地面に倒され両腕を広げてなすがままの姿勢となられると、その上に
四つん這いで覆い被さった少年は、小鳥が軽くついばむように、二つの乳首を交互にキスを
していきましたが、慣れてくるにつれて、それはしだいに強く、長くなっていきました。
『アンッ…知らなかった…お乳って、こんなに強く吸われるものなの…
 お母さん、わたしもそうだったの?…ううん、きっと、マルセルが男の子だからなのね…
 アアンッ、またッ!』
 押し付けられた唇に窪んだ乳房が、今度は出るはずもない母乳を出そうとでもいうように
音を立てて吸い上げられ、息が続かなくなると最後まで固く咥えていた唇から唾液でぬめる
乳首がヌルッとすべって離れ落ち、引っ張り上げられていた乳房が胸の上で弾みました。
浅い谷間を右に左に、そしてまた右にと少年が口を移すたび、そうしたことを繰り返されて
息を喘がせるようになられていたペリーヌ様は、先ほどの身体の奥の方が火照る感覚を再び
味わわれます。

 前にも確かにこの感覚を感じたことがある…その思いは消えるどころかどんどん強まって
いき、それが確信にまで変わった時、ペリーヌ様の脳裏に甦ってきたのは、その小さな胸の
奥底に封じ込めたはずの、あのクロアチアでの出来事でした。
 命の危機にあった青年を助ける為とはいえ、自らを犠牲にして純潔を捧げられたあの夜の
事は、けっして思い出したい類のものではありませんでしたが、それでも初めての殿方との
体験は、その一つ一つが女にはいつまでも忘れられないものなのでございます。
 衆人環視の只中で全裸となられ、処女の身を貫かれていくその一部始終を野卑な兵隊達の
目に晒さねばならなかった、気も遠くなるような羞恥と激しい苦痛に満ちたそれらの記憶の
ひとコマひとコマが、ペリーヌ様の心に浮かんでは消えていきます。
それは、ご幼少の頃に楽しまれた、お父様のお持ちだったゾートロープ(回転のぞき絵)を
覗くのにも似ていましたが、それにはその時々の情景だけではなく、ご自分の肉体に生じた
感覚までもがことごとく焼き付けられていて、一巻が終わるとすかさず次の一巻がカラカラ
回りだします。

 そして、それらのゾートロープの一巻には、ペリーヌ様ご自身、その渦中ではお気付きに
ならなかった…いいえ、そうされることを、その時も、そして、今も、拒まれておいでだと
言った方が正しいのでしょうか…お嬢様の肉体が女として目覚められた、まさにその瞬間が
描き記されていたのです。
 その中のペリーヌ様は、すでに乙女の門を穿たれておしまいになられていて、体内深くに
喰い込んだ殿方のものの感触だけでもお辛かったのに、そのうえ転々と柔肌を吸われ乳房を
弄られて、それがご自分の苦痛を少しでも和らげようとする青年の愛撫だということもまだ
知らず、更なる辱めにお心を苛まれていらっしゃいました。
 次いで輪転し始めたゾートロープは、その愛撫によって、ペリーヌ様の肉体が少女らしい
慎みから解き放たれて、しだいに下腹部の深い部分に溜まっていった熱が辛さも恥じらいも
何もかもを溶かして滴る甘い蜜と変え、一人の女として青年のすべてを受け入れていかれた
ご様子を余すところなく映し出していきました。

 そうして、お嬢様にはまだ早すぎた、子供(少女)から大人(女)への、けして後戻りの
叶わぬ分水嶺を心ならずも越えた、あの忘れ得ぬクロアチアでの出来事を再体験されていく
内に、ペリーヌ様は、過去の記憶と現実の境がしだいに曖昧となられて、今、乳房を吸って
いる目の前の少年にあの青年の姿が重なってきて、年下の男の子にそんな事ができるはずが
ないと頭の片隅では思いつつ、ご自分がマルセルによって貫かれている幻影に囚われます。
『わたしの中に…とても熱いものが…
 これは、あの伯爵様?…それとも、マルセルなの?…
 ううん、ちがう…きっと、これって夢なんだわ…あの夜の…
 目を覚まさなきゃ…あの夜の事は、もう忘れなきゃ…
 でも…あそこが…熱い…とても熱いの…』

 けれども、あまりにも生々しいその幻影は、ペリーヌ様を捕らえて離さず、お嬢様の幼い
肉体をより一層切なくさせていきます。そして、もうこれ以上少年に肌を許してはいけない
と告げるペリーヌ様の少女らしい清らかなお心とは裏腹に、愛を交わす為に神に遣わされた
かのようなお嬢様の肉体は、すでに三度殿方を知られて…いいえ、たったの三度でと申した
方が正しいのかもしれませんが…苦痛でしかなかったはずの交合で芽吹いてしまっていた、
性愛への疼きに抗えず、マルセルの手をご自分の乳房に導いてしまいます。
 突然自分の手が女の子の胸に触れて驚いたマルセルは思わず手を退けようとしましたが、
ペリーヌ様は上から掌を被せて少年の手にご自分の乳房を包ませました。
『お姉ちゃん?! どうしてこんなことを?』
 少年がペリーヌ様を見ると、その瞳は潤んで何かを訴えているようでしたが、まだ子供の
マルセルにお嬢様の揺れる心の内が分かろうはずもありませんでした。
ペリーヌ様は、夢うつつな中であの夜青年伯爵から受けた愛撫の記憶をなぞらえるように、
少年の手にご自分の乳房を弄らせていきます。

 手の中の少女らしい膨らみは、それでも少年には十分な大きさと重さを感じさせ、唾液に
塗れた乳輪の掌に貼り付く感触も、固くなった乳頭が指に当たる手応えも、何もかもが口で
吸うのとはまた異なる快感を与えて、少年はすぐに自分からペリーヌ様の乳房を玩ぶように
なっていきました。
 サーカスの練習の賜物か、歳の割りに力強いマルセルの手で、しこりのある未熟な二つの
膨らみを跡が付くくらいきつく握り絞められ、固さの中に柔らかい果肉を予感させる色付き
始めのサクランボにも似た淡い色合いの乳頭を捻り上げられて、ペリーヌ様は息を喘がせて
いらっしゃいましたが、ドロワーズの下に隠された部分はその痛みにすら切なさを覚え熱く
濡れそぼっていきました。
 お可哀想に、その持って生まれた肉体が接した殿方を惑わせ、年端も行かない少女の身を
情け容赦なく貪られてこられたこれまでのご体験で苦痛に耐えることを強いられたあまり、
お嬢様のお身体は荒々しくされることでより一層反応するようになってしまわれていたので
ございます。
女として殿方を受け入れる準備を着実に整えていくペリーヌ様の上気した肉体から立ち昇り
始めたシトロンの花のような酸味を帯びた甘い匂いが少年の中に眠っていた本能の早過ぎる
目覚めを促します。
 その胸に燃え上がった炎のような衝動に衝き動かされて、ペリーヌ様の上に覆い被さって
がむしゃらに乳房を玩んでいくマルセルの姿はもはや母親を恋しがる子供のそれとはとても
申せませんでしたが、かといって、自分が年上の少女の肉体に何を求めているのかは、少年
自身にもまだよく分かっていませんでした。

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