〜 レディ・ペリーヌ物語 3 〜
【 旅の続き ―イタリアでのいくつかの出来事 その2 前編― 】
市場での出来事があった翌日、ベローナへの街道を進んでいらしたペリーヌ様達の馬車を
一人の男の子が呼び止めました。
空腹でもう歩けないから馬車に乗せていって欲しいと頼んできたその子は、名をマルセルと
いいましたが、その男の子をひと目見たペリーヌ様は、この子こそ、昨日、市場で食べ物を
盗み、その巻き添えにご自分をあんな目に合わせた張本人だとお分かりになりました。
そんな泥棒をするような子と一緒に旅はできないとお思いになられたお嬢様は、マルセルの
頼みを断ろうとなさいましたが、お嬢様より1つ年下のこの男の子が預けられていた親類の
家から家出までしてサーカスで巡業をしている両親を追って一人で旅をしていると聞いて、
不憫に思われたマリ様は、ご自分達とマルセルの向かう先は同じだから一緒に連れていって
あげましょうとおっしゃいました。
もしここでお嬢様が昨日市場でマルセルのしたことを話されたとしても、それだけでは、
お優しいマリ様はたしなめられこそすれ、そんなことをしなければならないところまで追い
詰められた男の子をやはり放ってはおかれないでしょう。
だからといって、マルセルの所為でご自分の身に起こった出来事まではとても話せません
でした。もしそんな話をしてしまえば、着衣の下に隠れた肌のあちこちに生々しく残る爪の
喰い込んだ痕や、裂傷の出血こそ止まったものの凌辱の限りをし尽くされてまだ熱を持って
ズキズキしている下腹部が検められて、その痛々しさをご覧になったマリ様が良人の遺した
大事な娘をまたしても守れなかったとご自分を責められるに決まっています。
そう思うと、ペリーヌ様にそれ以上反対することはお出来になれませんでした。
このように、お嬢様のマルセルに対する最初の印象はあまり芳しいものではございません
でした。
ですが、陽気なこの少年といるとマリ様はとてもお楽しそうでしたし、一緒に連れて行って
もらう恩返しにとサーカス仕込みのとんぼを切って写真師商売の客寄せを買って出たりして
マリ様を一生懸命手助けする様子を見ていると、お嬢様はマルセルが根っからの悪い子では
ないように思えてきます。
それに、本当はあの市場での一件がマルセルのあずかり知らぬことであったことをお嬢様も
分かっておいででしたから、このうえ少年を恨み続けたのでは、ご自分の言葉を頭ごなしに
否定したあのパニーニ売りと同じになってしまうと、お嬢様は悟られたのです。
それから一週間ほどが過ぎた頃、マルセルともすっかり打ち解けてきたペリーヌ様の身に
またもある事件が降りかかってきたのでございます。
それはとある小さな村でいつものようにマリ様がご商売を始めようとしていた時のこと、
そこへペリーヌ様達のとよく似た家馬車が乗り込んで来たのですが、間の悪いことにそれは
同じ写真師の一行だったのです。
その一行は、ひょろりとして頼りなさそうな風貌をした写真師ピエトロと、それとは反対に
小男ながらも厚かましげな顔をして一癖も二癖もありそうな客引きロッコの二人組でした。
挨拶がてら商売敵の偵察に来たロッコは、相手が女子供しか居ないのを知ると、とたんに
横柄な態度をとり、この村での商売を譲れと言ってきました。
正義感のお強いペリーヌ様はその理不尽な要求に憤られますが、争い事のお嫌いなマリ様は
お嬢様を宥められ、次の村へ向かわれたのでございます。
それでこの一件はもう終わったと思われたのですが、困った事にマリ様達とロッコ達とは
ベローナを目指して同じ街道を進もうとしていたのです。
前の村では、マリ様の召されるサリーを珍しがって集まっていた村人達もロッコ達相手では
すぐに散ってしまい、商売が上手くいかなかったのがまるでマリ様の所為だとばかり逆恨み
したロッコは、馬車を飛ばしてマリ様達が店開きをされた次の村の広場へ乗り寄せ、またも
客を横取りしようとしました。
「ちょっと待った皆の衆、騙されちゃあいけませんぜ
そこで妙ちくりんな服を着ている女に、まともな写真なんか撮れっこねぇんだ
そいつらは写真を撮ると言っちゃあ、金だけをふんだくる、インチキ写真師なんですよ
それに比べて、こちらの立派な紳士を見てやってくだせぇ
これぞヨーロッパ一、いや世界一の写真師、ピエトロ大先生その人でござーい」
「アー、オッホン」
「あ、そこのお客さん、そんなとこに座ってないで、わしらんとこにおいでなせぇ」
そうして強引に客を横取りしようするロッコに当然ペリーヌ様は怒り、食ってかかろうと
なさった時、マリ様の凛としたお声がざわつく広場に響きました。
「お待ちください、あなたは今、わたくしをインチキ写真師と言われましたが、何を証拠に
そんなことをおっしゃるのですか?」
「そんなの無くたって、どこの世界に女の写真師なんぞがいるっていうんだい
なあ、皆の衆、そうだろう?」
「それではあなたは、何の証拠も無しに、わたくしをイカサマ師呼ばわりしたのですね?
皆さんお聞きください、わたくしの良人はギリシャから写真師として旅をしてきて、その間
わたくしもずっとその手伝いをしてまいりました
残念ながら良人は過日、ボスニアで亡くなってしまいましたが、わたくしは良人の遺志を
継いで写真師をしながら旅を続け、幸いな事にこれまでお客様からさしたるお叱りをお受け
することも無くここまで来ることができました
そのわたくしの、どこがイカサマなのでしょう?」
「おお、そうだそうだ、奥さんの言うとおりだ!」
「あんた、子ども二人かかえて、苦労したんだねぇ…あたしゃ、あんたを信じるよ」
『クソッ、村の奴らめ…こいつぁまずいぜ、なんとかしなきゃ…』
「しょっ、証拠なら、ある、あるとも
おいピエトロ、あれを出せ」
「あれって…あれのことか? いや、あれはいかんだろう…」
「いいから、よこせってんだよ」
村人達がすっかりマリ様の味方についてしまったのを知ったロッコは、相棒が嫌がるのも
構わず一枚のポートレートをひったくりました。
「皆の衆、見てくれ、これが世界一と謳われるピエトロ大先生の傑作写真だ
これに比べたら、そこの女の写真なんざ見られたもんじゃねぇってこと請合いだぜ」
「おじさん、そんなに言うんなら、わたしにも見せてもらえるかしら?」
「これ、ペリーヌ、およしなさい」
「いいのよお母さん、人前に出るのが苦手なお母さんが、あんなにがんばってくれたんです
もの、今度はわたしの番よ」
「ヘヘヘ、恥をかいてもいいんなら、さ、腕の差をじっくり見てみるんだな」
「そうね、よく見てみるわ……」
「まあ、これ、本当にあのおじさんが撮ったの?」
「フン、あんまり出来がいいんで驚えちまったようだな」
「おじさん、証拠って、ホントにこれでいいのね?」
「ったりめぇよ」
「じゃあ…みなさーん、こちらの写真はたった今このおじさんからお借りしたものでーす
そして、もう一つはわたくしの母が撮ったものでございまーす」
「おい、おめぇ、まさか?!」
「どちらの写真が良く撮れているか、ごらんになってくださーい」
「や、止めろ、尼っ子!」
ペリーヌ様はロッコから写真を受け取られると、背中に隠し持っていた宣伝用のご自分の
写ったポートレートと並べて村人達の前へ掲げられました。
相手は女子どもと侮り、例えそれがどんなものでもこれが証拠だと突きつければすぐに引き
下がると思い込んでいたロッコは焦り、お嬢様を止めようとしましたが、周りを取り囲んだ
村人達に邪魔されて近づけませんでした。
「これ、あんただろ? へぇー、まるで生き写しだよ!」
「どうせ撮ってもらうんなら、わしゃあ、やっぱりあんたんとこにするよ」
「それに比べて、こっちはどこのお大尽さんかね? 顔も分かりゃしない」
「あはははは、違えねえや」
「オ、オイ、おれにも見せてくれ……」
「むうう、こりゃあ…ロッコ、おれたちの負けだ」
「ありがとう、おじさん、とってもいい証拠だったわ」
「チキショウ、この尼っ子め、この借りはきっと返すから覚えてろよ!」
そう捨て台詞を残し、ロッコは相棒ともども馬車に逃げ込んで村を離れて行きました。
それからはマリ様の商売は大盛況で写真の撮影や焼付けに追われ、その日はこの村の宿に
泊ることとなられました。やがて陽も落ち、食堂で夕食を済まされた後、宿の部屋に入って
お二人だけになると、マリ様はお嬢様にお話しをされます。
「ねえ、ペリーヌ、昼間のことだけど…」
「昼間の? ああ、あの人たちのことね?
わたしたちが女子どもだと思ってバカにするんですもの、ホントにいやな人たちだったわ
わたしがやりこめてやったら、すごすご逃げ出しちゃって、いい気味よ
ね、お母さんもそう思うでしょ?」
「ええ、そうね…
でも、あなたのやったことは、ちょっと意地悪だったんじゃないかって、お母さん思うの」
「えっ、どうして? だって、あれはみんな、本当のことじゃない」
「それはそうだけど…ペリーヌ、人ってね、助け合って生きていくものなの
ほら、いつか、お母さんが産気づいた見ず知らずの奥さんから赤ちゃんをとりあげたことが
あったでしょ? ああいったふうによ」
「ええ、あの時のお母さん、とても立派だったわ」
「ありがとうペリーヌ、あの時はあなたもよく手伝ってくれて、お母さん、あなたがとても
誇らしく思えて嬉しかったわ
だけどねペリーヌ、人は時にはいがみ合ってしまうこともあって…そういう時、お母さんは
とても悲しくなるの…そして、それはきっと相手も同じだと思うのよ
ねえペリーヌ、今日、あなたがあの人たちにしたことは、どうだったかしら?
もし立場が逆だったら、あなたはどう思う?」
「それは……きっと、くやしかったと思うわ」
「くやしいだけですむのならいいけれど、人はとても些細なことで相手からひどく恨まれて
しまうこともあるの…
あなたはそうなりたい?」
「そんなの…いやだわ……
分かったわ、お母さん、わたし、もうあんなことはしません」
「良かった…じゃあ、そろそろ寝ましょう、お母さん、少し疲れてしまったわ」
「はい、お母さん」
同じ商売をしながら、同じ街道を同じく馬車で走っていれば、どちらが先でどちらが後に
なろうとも、追いつ追われつ、これから先何度でもあのロッコ一行と鉢合わせにならざるを
得ないのをご存知だったマリ様は、こうして愛娘を諭されたのですが、その杞憂がこれほど
早く現実のものになろうとまでは予想されていませんでした。
同じ頃、居候の身を遠慮して宿代を少しでも減らそうと馬車の屋根の上で寝そべっていた
マルセルは、下でなにやらコソコソと話し声がするのに気付いて耳をそばだてました。
「おいロッコ、本当にやるのか?」
「シー、こんなとこでおれの名前を呼ぶんじゃねぇ、バレちまうじゃねぇか
いいかピエトロ、あいつらの写真機をここでくすねちまえば、この先もう商売の邪魔をされ
なくてすむんだ
あと2時間もすりゃあ、みんなグーグー寝息を立てちまうから、やるならそん時だな」
「お、おい待てよロッコ、俺を置いていくなよ」
「だから、名前を呼ぶんじゃねぇって、ピエトロ」
『こりゃあ、たいへんなことを聞いちゃったぞ!』
ロッコ達が立ち去った後、屋根を飛び降りたマルセルが後片付けをしていた宿屋の主人の
ところへ駆けつけ事の次第を告げると、主人は村の男衆を集めさせました。
やがて、待ち伏せされているとも知らずやって来たロッコ達がお嬢様達の馬車の中に入り、
物色し始めた時、屋根の上で控えていたマルセルが大声を上げます。
「ドロボー、ドロボーが来たぞぉ」
それを合図に10人余の男達がわらわらと馬車を取り囲み、覆いを外したランタンの光で
照らします。騒ぎを聞きつけ、部屋を飛び出してきたマリ様達が宿の庭に見たのは、男衆に
捕らえられたロッコ達の姿でした。
「マルセル、マルセル、どこにいるの、無事なら返事をして」
「おばちゃん、おいらはここだよ」
「まあ、マルセル、そんなところにいたの?
夜中にこんな騒ぎが起きて、あなたがそれに巻き込まれたんじゃないかって心配したわ
マルセル、あなた、どこも怪我してない?」
「奥さん、あんたは良い子をお持ちだ
こいつらを捕まえられたのは、この子のお手柄なんだから、褒めておあげなさい」
「え? それって、どういう?…」
「ああ、奥さんには心配させないよう、何も話していませんでしたね
実は、こいつら、奥さんの馬車から写真機を盗もうとしたんですよ
それをこの坊主が気付いて、わしらに教えたってわけです」
「まあ、そんな事が……」
「さ、お前ら、とっとと立つんだ
町の警察に突き出してやるから、覚悟するんだな」
「あ、あの、お待ちください…
これは、その…何か、誤解があったようですわ
この人たちは…そう、写真機のことで相談があって、夜に訪ねていらっしゃることになって
いたのですが、わたくしがそのことをつい忘れてしまってお出迎えできなかったのです
それできっと、わたくしが馬車にいると思って中に入ったのですわ
そうですわね、ロッコさん」
「エッ?…ハ、ハイ、そのとおりで…」
「それで、ご相談の件は、もうよろしいのかしら」
「それはもう…おれたちで何とかできそうなんで…」
「そうですか…良かった、これで誤解は解けましたから、どうぞ、ロッコさんたちを自由に
してあげてください」
「奥さん…本当にそれでいいんですか?」
「ええ、もちろんですわ」
宿屋の主人は不承不承、ロッコ達を縛り上げた縄をほどきに行きました。
「ふん、お前たち、今回だけはあの奥さんに免じて許してやるが、今度また悪さをしたら、
その時は分かってるな」
「あ、ああ、それはもう肝に銘じて」
「ところで、お前の顔、どうもどこかで見た気がするが…わしの思い違いかな?」
「きっとそうに違いありぁせん、あっしらがこちらに寄ったのは今日が初めてなんで」
「そうか…なら、さっさと失せろ」
「へ、へい、そうさせていただきやす」
そうしてロッコ達は、そそくさと夜の闇に消えていきました。
「みなさん、こんな夜分にお騒がせして申し訳ございませんでした」
「みんな集まってもらってすまなかったな、一杯奢るから食堂に来てくれ」
「あの、それなら、わたくしが…」
「なーに、世の中ってもんは相身互い、それに宿の客を守るのは主人の役目ですからね
奥さんは気にしないでください」
「ありがとうございます、ご主人
さ、今夜はもう大丈夫だから、マルセルも一緒にお部屋で寝ましょう」
「うん、だけどおばちゃん、ほんとにあれで良かったの?」
「ウフフ、あれでいいのよマルセル、けど、子どものあんたにはまだ分からないかもね」
「あー、ペリーヌ、なんだよそれぇ」
「まあ、ペリーヌったら…ウフフフフ」
マリ様は、ご自分のしたことをお嬢様が理解してくれたことに喜ばれました。けれども、
好事、魔多しと申しましょうか、間もなくペリーヌ様は、その身をもって人の恨みの怖さを
思い知らされておしまいになるのです。
翌朝、前日に何度も気を張り過ぎた所為でマリ様が発熱され、この村でもう一日お休みに
なられることになりました。
「ごめんなさいマルセル、ご両親に会うのが遅れてしまって」
「そんなのいいんだよ、おいら、今日はみっちりバロンに芸を仕込んでやるからさ
だから、おばちゃんはしっかり休んで、早く元気になっておくれよ」
「ありがとう、マルセル
それで、ペリーヌはどうするの?
わたしのことは気にしないで、あなただってまだ子どもなんだから、たまには一日中遊んで
くるといいわ」
「そうね、じゃあ…馬車の中のお掃除をして…パリカールをきれいに洗ってあげて…それが
終わったら、この辺をゆっくりお散歩しようかしら
きれいなお花が咲いてたら、お母さんに持ってきてあげるわね」
「まあ、ペリーヌは欲張りさんね」
「ウフフ、そうかも、じゃ、行ってきます、お母さん
さ、マルセルも行きましょう」
「あ、待ってよ、ペリーヌ」
マルセルがやる気なさげなバロンに芸を教えているのを傍らで見ながら、お嬢様が馬車の
掃除やロバの世話を終わらせると、お日様はもう大分高くなっていました。
普段から食が細く朝食もあまりお口にされなかったお母様に消化の良いものをと、お嬢様が
宿の主人にスープを部屋へ運んでもらうよう頼まれると、その主人はお嬢様達にもスープと
パンを出してくれました。
「あの、わたしたちはいいんです…旅の途中では、お昼はよく抜いてましたから」
「なに、代金はいらんよ、これは朝から家の手伝いをしたあんたと昨日大活躍だった弟さん
へのご褒美なんだから遠慮なく食べなさい」
「ありがとう、おじさん、じゃあ、いただきます
さ、マルセルもお礼を言って」
「うん、ありがとう」
「(エヘヘ、弟さんだって…おいらたち、昨日からすっかり姉弟扱いだね、ペリーヌ)」
「(あら、いいじゃない、マルセル、わたしもお母さんも、あなたが弟なら大歓迎よ)」
「おや、内緒話かい? ほんとにあんたら仲がいいな
ところで嬢ちゃん、あんた午後はどうするんだね?」
「お母さんにお花を摘んできてあげようと思うんだけど、どこかいい場所はないかしら?」
「ああ、それならこの近くにちょうどいい所がある、ベローナへの街道と今は上流が崩れて
通れないが川の土手の上の旧街道に挟まれた森があるんだ
その森の真ん中は開けた丘になっていて、川の見晴らしがとってもきれいなんだ
秋にはわしらもキノコなんか採りに行くんだけど、今なら色々な花が咲いていると思うよ」
「まあ、すてきそうなところね」
「気にいったかい? なら、村からの近道を教えてあげよう
街道を少し行くと村外れに十字路があるからね、そのすぐ先の右側にある細い道に入るんだ
その道はずっと川まで続いてて迷ったりしないし、もし森に迷っても丘に登れば川が見える
から浅瀬を渡って旧街道を下れば元の街道に出られる
まあ、嬢ちゃんの足でも一番奥まで行って帰って2時間とかからないはずさ」
「教えてくれてありがとうおじさん、わたし、行ってみます」
宿の主人に聞いた林道はすぐに見つかり、ペリーヌ様は花々を追う蝶のように奥へ奥へと
進んでいかれました。やがて川を望む緩やかな崖の上まで辿り着かれたお嬢様は膝をついて
5メートルほど下の川原を覗き込まれます。
「あ、あそこにきれいなピンクのお花があるわ
どこか下りられるところ、ないかしら?…」
と、突然、何者かが背後から襲ってきて、口と鼻を手で塞がれたお嬢様は気絶させられて
しまわれたのでございます。
これを遡ることおよそ1時間、木立に隠れ、村外れの十字路を見張る男達がいました。
それから少ししてペリーヌ様が森の奥へ通ずる林道に入られると男達はすぐ二手に分かれ、
一人は馬車で街道を進み、もう一人は気配を殺しながらお嬢様の後を追っていって、ついに
襲いかかったのです。
その男は、お嬢様を荷物のように肩に担ぎ、川原へ下りて草むらの上に横たわらせると、
ピュウウと口笛を吹きました。
すると、先ほど別れた男を乗せた馬車が川の反対側の土手の上を走って来ました。
「お前、よくこんな道を知ってたな」
「なあに、行商人をしてた若ぇ頃、この辺にもよく来てたんだよ、その頃は、その土手道も
ずっと上まで続いててな、山の娘っ子が村まで野菜なんかを売りに来てたんだ
で、近道だってんで、ちょうどここら辺で川を渡って、そこの森を抜けてたんだが、帰りが
遅くなりゃあ、もう他に誰も通らねぇし、月明りも途切れ途切れで隠れるとこに困らねぇと
きてる…こりゃあしめたってんで、悪仲間とつるんでよ、そんな娘を森ん中へ担ぎ込んじゃ
よってたかって輪姦わしてたんだ
オボコもよかったが、やっぱ犯んなら、もう男と乳繰り合ってる娘が一番だったな
始めは嫌がってても最後にゃヒーヒー言ってヨガって、てめぇから腰振ってくるんだからな
ヘッヘッヘ、だもんで、おれはこの辺にくわしいのさ
ま、何人か孕ませちまってからこっち、来てなかったんだがな」
「お前、そんな事をしてたのか!」
「変な顔すんなよ、よく言うだろ、若気のいたりってやつさ
それにしても、あすこで待ち伏せしていりゃあ、何とかなるとは思っちゃいたが、まさか、
向こうからこんな都合のいい場所まできてくれるとはな
ここなら、やることすまして、すぐにトンズラできるぜ
飛んで火にいる夏の虫ってのは、このこった」
「なあ、本当にやるのか? 俺はどうも気が進まんのだがなあ」
「今さら何言ってやがる、どのみちもうかっさらっちまったんだ、やるしかねぇだろう
いいからおめぇは、言われたとおりの用意をしな
その間におれがこの尼っ子の用意をしてっからよ」
「わ、分かったよ」
「ヘッヘッヘ、自分が何をされるかも知らねぇで、よくオネンネしてやがるぜ
おれたちに恥をかかせてくれた礼を、今からたっぷり返してやるからな」
そうほくそ笑みながら、男はお嬢様の服を脱がしていきました。
「フン、やっぱガキだな、パイオツがまるで小いせえぜ
こんな半人前のくせに生意気言いやがって、罰でもくれてやるか」
「ア、ン…」
「おっほう、こいつは驚いた、眠ってるとカワイイ声出すじゃねぇか
どれ、もう片っぽも…」
「アアン…」
「ヘヘヘ、いい声で啼きやがる
だが、遊んでばっかもいられねぇ、まずは手でも縛っとくか……」
「これでもう、目を覚ましても逃げられめぇ?
これからおめぇの股座を思いっきりおっぴろげて、とびっきり恥ずかしい格好をさせてやる
から、楽しみにするんだな……」
「どうだ、尼っ子、男に大事な所を見られちまってるご感想は?
恥ずかしいか?…恥ずかしいだろう?…だがな、そんなのはこれからおめぇがされることに
比べりゃ、恥ずかしい内にゃ入らねぇんだよ…
ヘ、ヘー、おケケも生えてねえガキでも付くもん付いてんじゃねぇか…って、たりめぇか
そういや、おれもここんところご無沙汰だったなぁ…いくらガキでも女は女、小っせえ分、
こいつの穴っぽこはさぞかし…」
お嬢様のあられもないお姿を見ている内に劣情をいだき始めた男は、ごくりと生唾を呑み
込み、目の前のピッタリ閉じている秘部に指を突き入れます。
「ウ、ン…ンフ…ン…ンンン…」
「ウヒョヒョヒョ、キュウキュウ締め付けてきやがる
よーし、もう一本…マクが破れようが、かまやしねぇ……
ん?…こりゃあ、もう開通済みじゃねぇか
もしかして、この尼っ子…ほんとに裏の商売もしてたんじゃねぇか?
だったら…い、いいよな…」
「なあ、こっちの用意はできたぞ、そっちはどうだ」
「な!…なんだ、おめぇか、急に後ろに来てびっくりさせんなよ…ああ、できてるぜ
だが、ちっとばかし、計画変更だ」
「変更って…おい、お前、なんでズボンなんか下ろしてるんだ?
まさか、お前!」
「ヘっへっへ、その、まさか、さ」
「お前、本気か!?
しかしなあ、いくらなんでも、そこまでするのはまずいんじゃないか?」
「そりゃあ、この尼っ子が生娘だったらな…だが、こいつは、なんたってこの歳でもう男を
何人も咥え込んでる、とんでもねぇアバズレだったのさ
だったら、いまさら咥えたナニの数が一本や二本増えようと、どうってこたぁねぇだろ?
ただ裸にむかれるよりおれ様にぶちかまされる方がこいつにとっちゃよっぽどいい薬だし、
いきがけの駄賃でおれもちったぁ楽しめるってもんだ
なんだったら、用が済んだ後、おめぇもどうだ?
自分をけなしたこの尼っ子に、恨みの一つも晴らさねぇか?」
「お前がそうまで言うのなら、どうせここまで付き合っちまったんだ、言うとおりにするさ
だがな、俺は、本当はもうこの母娘とは関わり合いになりたくないんだ
だから、そっちは遠慮させてもらうよ」
『なんだ、いくじがねぇなぁ…だが、まあ、それならそれで…』
「ヘヘヘ、だったら仕方ねぇな、女が男に逆らったらどんな目に遭うか、世の中の道理って
もんを、おれがおめぇの分までこの尼っ子の体にいやというほど教えてやるぜ」
「ああ、任せるからさっさと始めてくれ
だが、あんまり長引かせるなよ、母親が騒ぎ出すとやばいからな」
「まあ、そんなに急かしなさんなって、おれ様の大砲でこいつをすぐにイカせちまうからよ
そいでもって、おれと繋がったまんま虫の息になってるとこで用事を済ませりゃいい
その後は、思う存分突いて突いて突きまくって、こいつの腹ん中にオボコでも孕ますくれぇ
濃いぃのをたっぷり吐き出してやる
そん時ゃあ、こいつも足腰立たなくなってるだろうから、その間におれたちゃおさらばさ」
「お前…まあいい、俺はあっちで待ってるからな」
相棒が離れた後、男はお嬢様に生まれ故郷の人々が祈りを捧げる時によくしていた身体を
深く折って地にひれ伏すのに似た姿勢を取らせました。けれどもここでは、お嬢様ご自身が
欲望という名の祭壇に捧げられた供物なのです。
お嬢様の腰を持ち上げた男は、その花園に自分の怒張したものを擦り付けます。
「ほれほれ、おめぇの大事なとこに当たってるのが何だか分かるか?」
「フ…ウウン…」
「ヘッヘッヘ、こいつ、眠ったまんま感じてやがる
そうか、分かるんだな、そうさ、こいつはおめぇの大好きなものさ
欲しいか?…欲しいんだろう?
じゃあ、ちょっとだけ味見させてやる」
「ン…ンン…」
「そ〜ら、先っぽが入っちまったぜ
早く起きねぇと、このままズブッと挿れちまうぞ?
それでもいいのか?…いいんだよな?…よーし…」
猫が捕まえて殺した鼠をなお玩ぶように、気絶している相手を散々にいたぶって楽しんだ
男は、お嬢様にさらなる恥辱を与えようと、腰を突き出しました。
「ンフッ!……
ここは……わたし……」
頬を地面に擦られて目覚められたペリーヌ様が初めに感じられたのは、ご自分の下敷きに
なった若草から立ち昇る青い匂いでした。それに次いで、お顔が横を向いているせいで首が
ねじれている上に胸も下に圧しつけられて息苦しいのをお感じになり、手をついてお身体を
起こそうとなさいましたが、普段ならなんでもないその動きが、何故かお出来になれません
でした。
気絶されていたお嬢様は、まだ意識が朦朧とされていて、ご自分の身に何が起きたのかを
お分かりになっていらっしゃらなかったのです。
両腕が肩から背中へ窮屈に折り曲げられて縛られた手を無意識に振りほどこうとされている
内に、お嬢様は腰と下腹部に強い圧迫を感じられます。
お嬢様がそこまで感じられるのに数秒が必要でしたが、明暗の境界を成す曙光が直前まで
夜に閉ざされていた大地をゆっくりと昼の領域へと変えていくように、そして、地面の表を
温めた熱が次第に奥へと伝わっていくように、ペリーヌ様の意識と感覚は、確実に目覚めて
いました。
やがてお嬢様は、腰とは違い下腹部の圧迫が外からではなく体内で、浅い部分から奥へと
繰り返し起こっていることを感じ取っていかれます。そして、一番奥を突かれる衝撃を感じ
られた瞬間、ゾワッとした寒気が全身を駆け抜けて、お嬢様の意識とすべての感覚は一つに
なり、ご自分の今置かれている状況をご理解されたのです。
今、ご自分は誰とも分からぬ男に犯されている…それは、総毛立つほどのおぞましい感覚で
ございました。
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