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夏の嵐のように 7

〜 夏の嵐のように 7 〜

【 フローラとカール 】

 まだまだ子どもだと思われていたアリスにそんなことがあったなんて、誰が想像できたで
しょう。両親の目にはアリスはいまだ幼子のように映り、自分の恋に夢中だったフローラも
それどころではなかったのです。
そんな中で、これまでそれほど熱心でなかった家事をアリスが急にいそいそとお手伝いする
ようになったのを見て『ハハーン、これは、スターリングと何かあったんだね』と感づいた
のはクラリッサおばあさんだけでしたが、無粋な真似の嫌いなおばあさんは何も言いません
でした。
 そうこうする間にもフローラとカールの仲がいよいよ親密になってきたのを知ったおばあ
さんは『やれやれ、これで生きている内にどうにかひ孫の顔が拝めそうだ。孫娘が二人とも
花盛りなのは良い事だね』と喜びます。

 やがて月日は流れて秋も深まったある日、町の皆に祝福されブレールスフォードの教会で
結婚式をあげたカールとフローラは、ホテルの支配人をしている彼の勉強を兼ね、この冬を
通して欧州を巡る長きハネムーンへと旅立ちました。二人は明日の午後シカゴから出航する
貨客船に乗る予定で、今夜はミルウォーキーに一泊します。
 そこでカールがホテルにチェックインし、将来の夢を語り合いながらレストランで楽しい
夕食を終えた二人が部屋に戻ると、まもなく、ルームサービスが冷えたシャンパンを持って
きました。
「これは?」
「はい、これは、当ホテルから新婚のお客様への、心ばかりのお祝いでございます」
「へぇー、気がきいてるね」
「ありがとうございます、お客様、どうぞごゆっくりお寛ぎくださいませ」
 カールはその中年のメイドに手馴れた様子でチップを渡しました。
「ねえ、カール、どうしてわたしたちが新婚だって、分かったのかしら?」
「そりゃあ、僕たちの乗ってきた車を見れば、誰だって分かるんじゃないかな」
「あ、そうだったわね、でも、なんだか恥ずかしい」
「いいじゃないか、僕は、僕の花嫁さんを自慢したいんだ」
「もう、カールったら・・・」
 そんなたわいもない話をしながらフローラは、さっきのメイドに『どうぞごゆっくり』と
言われたのが気になっていました。それはまるで、これからこの部屋で繰り広げられていく
二人の秘め事を、そのメイドが見透かした上での言葉であったような気がしてしまうのは、
やはり彼女にとって特別なこの夜を強く意識してのことだったのでしょう。

「ね、ねえ、カール、シャンパン、いただかないの?」
「うーん・・・いや、やめておこう
大事な事の前に酔っぱらって、君をがっかりさせたくないからね」
「大事なこと?」
「これから二人でする事・・・分かるよね?」
『アッ』と言って頬を染めたフローラはうつむいてしまいました。
「じゃあ、僕が先にシャワーを使わせてもらうよ」
 カールがシャワーを浴びる間に、ふと、フローラは、二人でする事というのには、一緒に
シャワーを浴びる事も入るのかしらと思ってしまいましたが、そんなことを考えてしまった
自分がとても恥ずかしくなり、彼がバスルームから出るなり、急いで着替えを手にして入れ
替わった彼女は、火照る身体を冷たい水に打たせました。
 タオルで水滴をぬぐったフローラは、『その時になったら開けるんだよ』とおばあさんに
渡された包みの中から出てきたネグリジェを見て耳たぶまで赤くします。ごく淡いピンクの
薄絹で作られたそれは、千夜一夜物語の挿絵に描かれた妖艶な美女の着る薄物そのままに、
ボディラインはおろか、乳首も恥丘の蔭りすらも透けさせて、見る者に劣情を催させずには
おかない、とても扇情的なものでした。
 この場になってまた旅装に戻るわけにもいかず、迷いつつもそれを身に着けたフローラが
居間に戻ると、初夜を迎えて緊張しているであろう彼女を気づかって、カールが備え付けの
蓄音機に針を落とすところでした。蓄音機から甘いセレナーデが流れ出し、振り向いた彼は
言いかけていた言葉も途中で忘れて息を呑み、フローラの悩ましい姿を見つめます。
『こ、これは、おばあさまが勝手に・・・』と言いかけたフローラでしたが、彼女にもこう
なる事を予想できなかったわけではなく、心のどこかで愛する人を魅了したいと思ったのも
事実でしたから、それ以上言い訳もできず、はにかんで後ろを向いてしまいました。

「恥ずかしがらなくていいんだよ、フローラ、僕のために着てくれたんだね?
とてもすてきだよ」
 カールはフローラに近づくと彼女を抱き寄せ、接吻します。それは、今までの軽いキスと
違い、カールの舌が口に入ってきた時にはフローラはビックリしましたが、彼の舌に自分の
舌を舐められている内に、いつしか二人はお互いの舌を絡ませ合うようになりました。
 初めて交わされる濃厚なキスにうっとりしているフローラの乳房に手を重ねたカールは、
彼女の耳元で囁きます。
「フローラ、君とのキスはシャンパンより甘く刺激的で、酔ってしまいそうだ
だけど僕は唇だけじゃなく、君のすべてを知りたい・・・いいよね?」
 一瞬の躊躇いの後、小さく頷いたフローラは胸元の留め紐を解き、カールがネグリジェを
肩からはだけさせると、それは衣擦れととも足元へ落ちていきました。
「隠さないでフローラ、僕にきれいな君を見させておくれ
そうだ、腕を上げて、髪をかき上げてごらん」
 そう言われたフローラは、顔をわずかに背け、羞恥に震えながら、乳房を覆っていた手を
おずおずと上げていきます。そうするツンと上を向いた張りのある美乳も、くびれた腰も、
快楽の門を隠して濃すぎず薄すぎず、見栄えよく茂った草叢も、一糸まとわぬ彼女の裸身の
すべてが彼の前に露わとなりました。
「なんて、君は・・・
きれいだよフローラ、まるで生まれたてのビーナスのようだ」
 固く目を閉じていても熱く注がれるカールの視線を痛いほど感じていたフローラは、突然
彼に抱きかかえられて目を見開き、情熱的な彼の瞳の色を見て、いよいよその時が来たのを
知りました。

 ベッドの上へ横たわらせられたフローラが、ともすれば身体を隠したくなる手にシーツを
固く握り締めさせ、胸をドキドキさせながら待っていると、ベッドが揺れ、カールがにじり
寄ってくるのを感じました。彼女がそちらへ顔を向けるとバスローブを脱いでやはり全裸と
なっていた彼のペニスが見えてしまい、フローラが慌てて目をそらしている内に、カールは
彼女の上に覆い被さります。
「恐がらないでフローラ、僕に任せておくれ」
 唇に彼の唇が触れ、一瞬、先ほど受けた深いキスを期待したフローラでしたが、カールの
唇はすぐにそこから離れて首筋を吸い伝いながら、しだいに胸元へと下がっていき、それは
口へのキスより甘美な快感を彼女に与えていきます。
その間にも、仰向けでもひしゃぐことのない彼女の充実した果実がカールに弄られていき、
ぷくっと膨れた先端に口付けされたフローラは、恥じらいゆえにそれまでこらえていた甘い
吐息を洩らし始めます。
そんな彼女の声を聞いて、どうしようもなく情欲の炎をかきたてられてしまったカールは、
貪るようにフローラの胸を吸っていきました。

 ようやく彼の唇が離れ、初めて異性に触れられた乳房を愛撫され続けてさすがにヒリヒリ
してきたフローラが喘ぐ息をホッとつかせたのもつかの間、カールは、ふくらはぎを掴んで
グッと身体を屈曲させ、彼女の腰を上に向けさせました。物心ついてこのかた、他人の手で
こんな格好をさせられたことなどもちろん一度もなかったフローラは、一瞬、何が起こった
のか理解できませんでしたが、カールの方に顔を上げた彼女は、陽に晒されたことなどない
自分の下腹部がでんぐり返しにされて、彼の目の前で露わになっているのを見ます。
カールの顔が下がっていき、彼が何をしようとしているのかが分かったフローラは、すでに
秘部を濡らしている自分がとても淫らに思え、それを知られまいと抗いましたが、彼の腕に
押さえつけられ、なすがままに秘裂を開かれてしまいました。
いまだ男を知らぬ泉からムッとするほどに立ち昇る牝の匂いが、彼の唇を誘います。
見られていると思うだけで顔から火が吹きそうなそこをカールに口付けされて、フローラは
気が狂わんばかりの羞恥心に苛まれますが、彼女にできたのは、ただ顔を手で覆うことだけ
でした。
『お、おばあさまの、うそつき!
 あそこにキスされるのが、こんなに恥ずかしいなんて、教えてくださらなかったわ!』
 しかし、そんな思いも、押し寄せてくる快楽の波間にやがて沈んで、肉体はその持ち主を
裏切って彼女を官能の渦に巻き込んでいき、こうして自分を欲しいままに圧しひしぐことの
できる彼の力強さに、いつしかフローラは、支配される喜びに目覚めていきます。
彼の舌先がすぼめられて蕾の芯を穿つと、掘り当てられた泉から彼女の雫がとめどなく溢れ
出すようなるまで、そう時間はかかりませんでした。

 快感に酔ってしまった彼女は、処女口に彼の熱い強張りがあてがわれたのに気づきません
でしたが、侵入してきた亀頭に膣の狭まりを突き破られそうになって、ズキンと痛みが走り
ました。
ハッと我に返り、自分の身に何が起きようとしているのかを知って顔を蒼ざめさせた彼女が
思わず相手の胸に手を突いて身体を引き離そうとしましたが、時すでに遅く、カールの腰が
グッと突き出され、フローラは鋭い痛みに叫びを上げますが、処女を貫いて奥深くまで挿入
されたカールのペニスに膣を一気にこじ開けられて、これまで経験したことのない圧迫感に
息が詰まり、その声は途中で断ち切られたように消えていきました。
「ごめんよ、フローラ、痛かったんだね
今夜はもう止めようか」
「い、いいの・・・
だって、これで本当に、あなたの妻に成れたんですもの・・・わたし、うれしい
だからお願い、もう一度、キスして」
「ああ、もちろんだよ、僕のハニー」

 目に涙をにじませながらも、健気に破瓜の苦痛に耐えていたフローラは、カールから再び
濃厚なキスと敏感になっていた乳房への愛撫を受けている内に、その快感がしだいに苦痛を
忘れさせ、自分の肉体が彼のものを受け入れていくのが分かりました。
しばらくして、彼がゆっくり抽挿し始めると、こなれていなかった彼女の膣がどんどん彼の
ものに馴染んで愛液を滴らせ、湿り気を帯びた淫靡な音が部屋に響くようになり、カールは
腰の動きを一層早めていきます。
 それから間もなく、彼の背中に腕を回してしがみついていたフローラの膣がうねり始め、
今度は反対に彼のものを締めつけてくるようになりました。膣の中でカールのペニスが一瞬
膨れ上がり、彼女の子宮めがけてどくどくと精液をほとばしらせ、その熱いたぎりを受けて
絶頂を迎えたフローラは背中を激しく仰け反らせました。

 アクメに硬直した肉体を弛緩させ、絶頂の余韻にひたるフローラは、自分の腹の上で息を
喘がせているカールの身体の重みも、その彼によって、自分がもはや処女ではなくなったと
いうことも、すべてが物憂く、どこか遠い出来事のように感じられていました。
そんな気だるさの中、カールのペニスがずるりと彼女から引き抜かれる感触に、彼女はただ
ぼんやりと今夜の事はもうこれで終わったのだと思います。
 しかし、フローラの初夜のお勤めは、本当はまだ始まったばかりだったのです。初体験を
終えたばかりの彼女が知るはずもありませんでしたが、一度たぎった精力のありあまる若い
男の性欲がたった1回のセックスで静まるわけもなく、彼女は再びカールに挑まれます。

 フローラを四つんばいにさせたカールは自らのものを再び彼女の奥深くまでうずめ、手で
すくった重みまでもが快感を誘うたわわな果実を鷲掴みにし、フローラの腰をリズミカルに
突き上げて、ベッドを軋らせます。
相手の顔も見られず、まるで獣のように後ろから犯されるこの体位を、初めは嫌がっていた
フローラでしたが、さっきとは異なる部分を刺激され、動きが自由になった分、より激しく
膣内をかき回されて、腰がとろけるような快感に心を奪われていった彼女には、もうそんな
ことは気にならなくなっていました。
そればかりか、一度射精して余裕のできたカールに、のぼりつめそうになるたび腰の動きを
止められて何度もじらされると下腹部がじんじんと疼いてしまい 彼のものを求めて彼女は
知らず知らずの内に自分から尻を突き出すようになっていました。

 性の快楽に目覚め始めた新妻のそんな甘える仕草があまりにかわいらしすぎて、カールは
少し悪戯をしてみたくなります。
 彼女をいかせぬままペニスを抜いて、かたわらで仰向けになった彼は、自分は疲れたから
フローラが続きをするようにと言います。
今まで自分の体内に入っていた、二人の体液でぬらぬらと濡れたいきり立つ怒張へちらりと
視線をむけた彼女は顔を真っ赤にしました。
もちろんカールにしても、処女を失ったばかりのフローラがまさかそこまでしてくれるとは
思っていませんでしたが、うれしい誤算というべきか、彼女はだんな様の要求ならばそれが
どんなに恥ずかしい事でもすなおに従わなければいけないと思っているようでした。
「カール、わたし、どうすればいいの?」
「僕の上に跨って・・・もう少し前に来ないとうまく入らないよ・・・
いいよフローラ、それじゃ今度は自分で入り口を開いてごらん」
お嬢さま育ちの彼女が恥じらいながら秘部をぱっくりと開いていくあられもない姿態に目を
奪われたカールのものは、これまでにも増して硬く張り詰めていきます。

「カ、カール、お願い、そんなに見ないで・・・
だってこれじゃ、あそこの中まで見えてしまうんですもの」
「そんなに恥ずかしいのかい? だったら、僕のでそこを隠せばいいんだよ
入り口を開いたまま、僕のものを持ってそこにあてがってごらん」
 両手で開いていたものを片手で開き続けるには、より強く指を押し付けなければならず、
突き立てた指先がぬるぬる滑って、ややもすると中に入ってしまいそうです。
フローラの右手がカールのものに触れた瞬間、まるで焼けた鉄の棒のように熱く感じられ、
反射的に離してしまいましたが、勇気を出して握ってみると、それは彼女の指に余るほどの
太さでした。『こんなものが本当にわたしの中に?!』と思いながらも、フローラはそれを
正しい位置にあてがいました。後はもうだんな様の命令を待つまでもなく、することは一つ
しかありません。
「ンッ・・・ンンッ・・・キ、キツイの、カール、あなたの、もう少し、小さく、して
でないと、あたしの、広がっ、ちゃうンッ」
「そ、そんなの無理だよ、君があんまり愛らしすぎて、こうなったんだから
でも、このままじゃ、僕ももうもたないから、手伝うよ」
「アッ! ダ、ダメッ!!」
 カールはフローラの腰のくびれを掴んで押し下げ、下からも腰を突き上げて彼女を一気に
貫きました。彼女の下腹部を激しい膨満感が襲い、子宮もろとも内臓が押し上げられるその
勢いで肺の空気が押し出されたような錯覚を起したフローラは首を大きく仰け反らせて口を
ぱくぱくとさせます。

 両手を後ろに衝いて息を喘がせていたフローラがやっと少し落ち着いてくると、内側から
ギチギチと圧迫してくる彼のペニスが、自分のお腹の中のどの辺まで挿入されているのかが
はっきりと認識でき、こんなに大きなものを受け入れられた女の肉体の不思議さに我ながら
驚いてしまいました。そして、こんなにキツキツな状態で、はたして動けるものなのかしら
とフローラは思いましたが、その答えはこの後、すぐに分かることになります。
「もう平気かい、フローラ
ね、やればできたじゃないか、ほら、フローラのかわいい下の口が僕のを根元まで咥えてる、
これならもう中は見えないよ」
「わたしの下のお口って?・・・カールのを咥えてる?・・・アッ!」
 まだ初心なフローラにはカールが何を言っているのかがよく分かりませんでしたが、彼の
方を見ると、だんな様の視線はある一点に集中しています。そこは、フローラからは身体の
真下になって自分では見えませんでしたが、目に見えずともその感触が十分すぎるくらいに
感じられる、今まさに繋がっている二人の性器が、だんな様からは丸見えらしいのです。
それは、言わばセックスそのもの、カールからされていた時は無我夢中でそんなことを気に
留めるゆとりもありませんでしたが、だんな様から要求されたとはいえ、卑猥な言葉を口に
出すのはもちろん聞くのさえ恥ずかしがっていた自分が、今、自ら進んでセックスしている
ことに、フローラは気づいてしまいました。

「イッ、イヤァァッ、お願いッ! 見ないでェ!!」
 羞恥に耐えきれずカールのものを抜こうと腰を浮かせたフローラでしたが、彼をまたいで
太ももを大きく開いた状態で体内を深々と貫くものの上まで尻を持ち上げることは叶わず、
彼女の膣は再びそれを呑みこんで、子宮を衝き上げられます。
それはまるで小指用の指サックが無理やり親指にねじこまれていくように、彼の張り詰めた
ペニスに膣壁がゴリゴリと拡張させられ、さらに縦にも引き摺られて、下腹部がはち切れて
しまいそうでした。
 それでも淫らに交わるお互いの性器を引き離したい一心で、それを何度か繰り返している
内に、これまで感じたことのない快感がフローラを襲ってきます。それに魅せられた彼女は
もう最初の目的も忘れ、誰に教えられたわけでもなく、女の本能で腰を使い始めました。
「いやァァァ!、わたしのこわれちゃうゥッ!!
でも、止まらない! 止められないのッ!!
カールゥ、わたし、わたし、どうしたらいいのォ!」
「いいんだよ、フローラ、君も気持ちよくなれたんだね?
君がこんなに情熱的だったなんて、なんてすばらしいんだ!
いつものおしとやかな君もかわいいけれど、ベッドの上の淫らな君はもっとすてきだ
だからフローラ、ぼくのためにもっと乱れておくれ」

 カールの手が、彼女が腰を振るたびにゆさゆさと揺れる乳房へ伸ばされます。柔らかく、
それでいて弾力のある乳房が彼の指からこぼれ、熱くしこった乳首を指の叉に固く挟まれた
フローラが切ない吐息を漏らしました。
だんな様の許しを得て、もはや恥じらいも消し飛んだ彼女は、愛人の胸に豊満な乳房を押し
付けてしなだれかかり、彼の口を貪るように吸い、彼も彼女の尻肉を強くつかんで引き寄せ、
絡み合う肉体の触れるところ全てにフローラは官能を呼び起されてしまいます。
肉欲の虜となった彼女はより強い快楽を追い求めて淫らに尻をくねらせ、逆巻く波のごとく
次から次に沸き上がってくるエクスタシーの高まりに普段の彼女からは想像できないような
艶めかしい声を上げていきます。
まるで発情した牝がひたすら牡の精を求めるように、ますます激しくなっていく新妻の腰の
動きにとうとう堪えられなくなったカールが彼女の尻を掴んで射精すると、フローラもまた
上りつめて絶叫し、そのまま彼の上で失神してしまいました。

「・・・ラ・・ローラ・・フローラ、気がついたかい?」
「ぅ・・・ん・・・カール?・・・わたし?」
「いけたんだね?」
「いけた?」
「すごく気持ち良さそうだった・・・僕のを気に入ってくれてうれしいよ、フローラ
もちろん僕だって・・・とても上手だったよ、君の・・・やり方
今夜は初めてで疲れただろう? でも、明日もまた君とこうしたい・・・いいや、これから
毎日、もっともっと愛し合おうね、僕のかわいい奥様」
 カールにお尻を優しく撫でられて、フローラは思わず甘たるい声をもらします。
「ィャ、恥ずかしい・・・」
 それは、たった一晩で彼の愛撫に即座に反応するようになってしまった自分の肉体のこと
だったのか、それとも、あれほど不安がっていたセックスを待ち望んでしまうようになって
しまった自分の心のことだったのか、おそらくその両方だったのでしょう。
しかし、夏の嵐のような、激しく、めくるめく官能の世界を知ってしまった今、フローラは
自分が彼と愛を交わすために生まれてきたように思え、まだ体内に入ったままのだんな様の
感触に満ち足りた幸せを感じます。
 そのままカールと抱き合って眠りに落ちていったフローラは、まどろみの中、夏の終りの
あの夜のことがふと思い出され、愛の行為が身も心もとろけさせるほど甘美なものと知った
自分が、おばあさまの言葉の通り、それに溺れそうな予感がして少し怖い気もしましたが、
こうして直接だんな様の体温を感じていると、もうそんなことはどうでもよく思えました。

 いつの間に蓄音機が止まったのか、セレナーデの甘い音色もすでに止んで、部屋にはもう
二人の寝息しか聞こえません。
けれど、それはほんの暫しの幕間にすぎず、若い恋人たちはこれからもより激しく高らかに
愛の変奏曲を奏でていくことでしょう。


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