【 身じたく 】
館の責任者との面接も終わり、部屋に戻ったパットとイザベルが姉妹揃って一緒に働けるようになったことを喜んでいると、『もう夜も遅いので、ちゃんとしたお食事は用意できませんが、よろしければどうぞこれをお召し上がりになってください』と言って、ジェーンがクッキーとホットミルクを持って来てくれました。
ちょうどお腹がすいていた二人は美味しそうにそれをいただきましたが、ホットミルクは甘さの中にちょっと不思議な香りがして、それをジェーンに聞くと、彼女は微笑みながら、『それはわたくしの家に伝わるハーブの香りで、心と身体を落ち着かせてよく眠れるようにしてくれるのですよ』と教えてくれました。
やがて夜も更け、ジェーンが部屋を下がってまもなく、眠気にさそわれた二人はベッドに横になるやいなや眠りに落ちていきました。けれども、隣のベッドで安らかな寝息を立てているイザベルを余所に、パットの眠りは、その身に起きた下町での出来事を引きずるような淫らな夢にうなされて、浅く苦しげでした。
・・・不意に、パットはベッドの傍らに誰かが立っているような気配を感じましたが、どうしても起きられなくて、自分はきっと寝ぼけているんだと思いました。
けれどもそれはパットの思い違いではなく、確かに誰かがいて、その何者かの手が彼女の身体を覆うキルトの上掛けを剥いでいきます。
パットは初め、それをイザベルの他愛ない悪戯と思い、相手がまだ自分を眠っていると信じ込んでいるのならば、黙ってこのまま様子をみていて、後で姉妹の前にパッと飛び起きて、逆にビックリさせてやろうと考えます。
ところがパットがその機を窺っている内に、相手は彼女の寝間着の留め紐を解き、一気に前をはだけさせ、さらに下着までずり下ろそうとします。
いくら姉妹のする事とはいえ、さすがにこれ以上寝ている振りができなくなったパットは、慌てて下着にかけられた相手の手を掴んで止めさせようとしますが、何とした事でしょう、意識ははっきりとしているのに金縛りにあったみたいに身体がまったく自由にならず、腕を上げるどころか指の一本さえ動かせません。そればかりか、一毫すら開かない唇と瞼が少女から言葉と視界を奪っていました。
『あたしの身体、どうなっちゃったの?』
そんなパットの不安を意に介さぬように、とうとう下着が足首から抜き取られてしまい、乙女の隠すべき部分を被っているのは、夜陰の投げ掛けるベールのみとなりました。
けれど、すでに闇の中に閉ざされていたパットにとってそれは無いも同じで何のよすがともならず、温かく湿った下着の中で下腹部に圧し付けられていた産毛のような若草一本一本が乾いた夜気に触れて立っていくムズムズする感覚が、もはやそこが何物にも覆われていないことを一層際立たせて、自分がいま全裸である事実を少女に強く意識させるのでした。
けれど、間もなく閉じたままの瞼を透して光を感じたパットは、それさえも奪われたのを知り、部屋の明かりを点けた何者かの視線が、いまや完全に無防備となってしまった自分の素肌に向けられているのを痛いほど感じます。そして、それと同時に、突然の明るさに抗議するように呻くイザベルの声が隣のベッドの方向からするのが聞こえて、これまで姉妹だとばかり思っていた相手が、実は違っていたのに気付かされます。
『イザベル、じゃないの? じゃあ、今、ここにいるのは誰!?』
もちろん目をつぶったままのパットにはそれを確かめる術はありません。これから自分は何をされるのか、突然の侵入者への恐怖にも悲鳴さえ上げることが叶わないパットは姉妹に向かって心の中で一生懸命に助けを求めますが、いくら双子といってもそれが聞えるわけもありませんでした。
いきなり胸に触れてきた何者かの手は大きく、力強くて、それは明らかに大人の男のものでした。小さな乳房を強く、しかも異性に揉みしだかれて、苦痛とショックを受けた少女の口からは微かな呻きが洩れますが、それも砂漠に吸い込まれる一滴の水のように虚しく夜の静けさにまぎれるばかりです。
パットが何の抵抗もできないのを確かめた侵入者は人形も同然の彼女の太ももを広げて、まるでこれから股間にメスを入れられようとしている解剖台上のカエルのように、日焼けの跡もない真っ白な下腹部をむき出しにすると、ぷっくりした恥丘に開く割れ目に指をかけ、反射的に身を固くする少女には構わず、内側の柔肉ごと拉げていきました。
目一杯に広げられた局部を覗き込む侵入者の息が湿った粘膜にかかってヒヤリとします。
初潮を迎えて以来、お母さんから大事にしなければいけないとは教えられていてもメンスの時に面倒くさいと思うのがせいぜいで、普段から勝気で自分が女の子だという自覚に乏しいパットには、そこが性器であるという認識はまだまだ薄く、排泄器官としてしか見ていないようなところがありましたが、かと言って、誰とも知れぬ異性にお小水の出る部分を間近に見られて平気なはずはありません。
そんなに顔を近づけられたら臭ってしまうのではないかと気が気でなくなったパットは、緊張したせいでかえっておしっこがしたくなってしまいました。
もし今、他人の目の前で、こんなに大きくなった自分が小さな子供のようにおもらしをしてしまったらと思うと、パットは堪らなく恥ずかしくなって必死に我慢しますが、むき出しになった下腹部が冷えてくるにつれて尿意がますますひどくなってくるのを感じて、寝る前にホットミルクなんか飲まなければよかったのにと悔やみました。
けれどもパットを辱める行為はそれで終わりではなく、侵入者はそこが性器であることを否応なく少女に思い知らせて、そんな事を忘れさせます。
下腹部に指を挿入されたパットの身体がビクンと撥ね、膣を内側から擦られるたびに彼女の口は声なき苦悶の叫びを上げていきました。
『こんなの、夢よ、そうに決まってる……だって……だって、この館の中で、それも姉妹が寝ているすぐ横で、あたしにこんな事が起きるはずないもの……
早く目を覚まさなきゃ……夢から醒めれば、もうこんな事はみんな終わって、この部屋にはあたしたちだけ、他には誰もいやしないんだわ……
ンッ!…イタイッ!……ヤメテッ……ダメ、そんな奥までッ!
なんで?……なんでなの?……なんでこんなにもはっきり感じるの?……まるで……まるであの時みたいに……本当に……本当にあたし、夢をみてるの?……
もしかしたら……本当は、あたしはあのダウンタウンの不良たちから逃げられなくて、この館に来てイザベルと一緒に働けるようになれたっていう方が夢だったの?……
あそこで男の子たちにイヤラシイコトをされてる間、ずっとイザベルに助けてって思ってるうちに、そんな夢をみたの?……
ああ、あたし、分からない……これは夢?、それとも本当の事?……どっちが本当の事でどっちが夢なの?……もし、いま目が覚めたら、何が見えるの?……
イザベルと二人だけの寝室?……それとも……
ダメッ……恐くて目を開けられない……だって、もし見えたのが街の不良たちだったら、あの男の子が最後にしようとしていたコト、あたし、きっとされちゃう……
それとも、もう?……
ヒリヒリして……熱くて……気持ち悪いのに……あそこが変なの……
おねがいよぅ……もう…やめてェ……夢…なら…早く……終わって……』
それがどれほど続いたのか、夢と現実の区別もつかないまま、筋肉が弛緩しているように身体が動かない中で触覚だけがより鋭くなっていったパットの下腹部はどんどん熱くなっていき、おしっことは明らかに違うねっとりした分泌液がとめどなく溢れ出ます。
自分の膣が意思とは関係なく別の生き物のようにヒクヒク蠢いてしまう感覚は、性にうといパットにとって嫌悪を催させずにはおかないものでしたが、いつしか自分の中に苦痛以外の何かが芽生えていくのを感じていました。
少女自身には説明できないその何かは次第に大きくなっていきます。もしこのままそれに呑込まれてしまったら、二度と這い上がれない底なし沼の暗い底に堕ちていきそうで、恐くなったパットは必死にそれを受け容れまいとしますが、まだ未熟な肉体は持ち主を裏切り、これまで経験したことのないそれに魅入られてうずき、無垢な少女のままの心と大人になりかけた身体の狭間でパットは戸惑うのでした・・・
――夏休み2日目――
「ヤ……オネガ……モ……ヤメ……」
「………さ…、………さま、おじょうさま?」
「ウ……ンンッ……………ダ…レ?」
「わたくしです、ジェーンでございますわ」
「ジェーン…さん? ここは……あたし……どうして……」
「大丈夫ですか? お嬢様」
「だいじょうぶ?……」
「ええ、なんだかうなされていらしたようなので……何か、怖い夢でも見られたのかと存じまして」
「ゆめ?…………アッ!」
「まあ、やっぱり、そうなのですのね?
お可哀想に、ここに初めていらして、きっとご不安な事があって、それで悪い夢を見られたのですわね?
何かわたくしでお役に立てることがあるかもしれませんから、お嬢様がどんな夢を見られたのか、お聞きかせくださいますか?」
「あ、あの…………
ううん、ごめんなさい、どんな夢だったか、あたし、忘れちゃったわ……
それに……あたし、もう平気だから……」
「そう、でございますか? お嬢様がそうおっしゃるなら……
それでは、もうお昼も近うございますので、お食事のご用意をいたしましょうね」
「もう、お昼なの? あたしたち、そんなに?」
「はい、朝にお起こしに参りましたが、お起きになれなかったのも無理もありませんわ。
昨日は緊張されていた上、お疲れのご様子でしたもの」
「どうりで……そういえば、あたし、お腹がペコペコよ
ねえ、イザベル、あなたも早く起きなさいよ」
「まあ、お嬢様ったら、ウフフフ」
昼食のあと、ジェーンに連れられてあらためてこの館を案内された二人は、建物の内外に施された重厚な装飾は言うに及ばず、中庭を飾る手入れの行届いた庭園や花々の咲き乱れる温室、小船の浮かぶ池畔に建つ瀟洒な東屋を見て、まるで小宮殿にでもいるような気持ちがしました。
実際ここはさる貴族が所有していた古い城館を改装したもので、往時には狐狩りやカモ猟が執り行われた森と湖沼に囲まれ、高い城壁を巡らせた敷地内は周囲から隔絶された静けさを湛えています。
やがて夏の陽も傾き、夕食の済んだパットとイザベルは今夜から仕事につくよう伝えられます。
「その前に、お嬢様たちはお風呂をお使いになってくださいまし」
そう言われた姉妹がシャワーを早々に浴び終え、浴室を出ようとした時、ドアが開いて、袖をまくり上げスカートの端をからげたジェーンと鉢合わせになりました。
膝上までたくし上げられた濃紺のスカートから覗いた彼女の肉感的な白い太ももは、少女のものとは違う成熟した女の色香を漂わせて、姉妹をドキリとさせます。
学院にある共同のシャワールームでは、同級生やクラブの仲間たちの前で脱衣をしたり、丸裸のままふざけ合ったりして、他の人に裸を見られても、それは気心の知れた同じような年頃の女の子同士ですから、そんなに気にする事もなかったのですが、知り合ったばかりのジェーンの前に裸身を晒して、20代の半ばくらいに見受けられる大人の彼女からすれば、恥毛もまだ完全に生え揃っていない自分たちはどんなにか青臭く見えているだろうと、急に自らの肉体の幼さを意識してしまって、思わず二人は前を隠しました。
「まあまあ、こんなにお早く?
お嬢様たち、シャワーだけではいけませんことよ」
そう言って、ジェーンは姉妹の背中を押して浴室に戻らせます。
「昨日もお伝えしましたように、当館の責任者はとても衛生に気を配られておられます。
当館でお客様に接する者は清潔を旨として、仮初にもお客様に失礼のないよう、常日頃から身体の隅々まで磨き上げておくようにとのたってのお言葉でございますから、お嬢様たちがそれにお慣れになるまでは、わたくしにお手伝いさせてくださいまし」
「え? お手伝い?」
「はい。それでは……そうですね、まず初めはイザベルお嬢様からにいたしましょうね。
どうぞ、そのままお立ちになっていてくださいまし」
ジェーンは香水入りの化粧石鹸を地中海産の上等な海綿に泡立てていきました。
髪をタオルで巻いたイザベルの首筋にジェーンが海綿をあてがうと、馥郁たる薔薇の香りが匂たち、なめらかなクリームのように肌に吸い付きながら少女の肩を滑り降りていきます。
他人に素肌を触れられて、初めは落ち着かない様子のイザベルでしたが、まだ微妙ながらも円やかさを増しつつある曲線を彼女に優しくなぞられていく感触は、そうとは知らぬ内に、未だ異性を知らぬ少女が夢想するような恋人の愛撫にも似た陶酔を彼女にもたらしていったのでしょうか、それが股間に触れた時に発せられた小さな呻きも決して嫌悪をともなうものではありませんでした。
やがて文字通り全身を隈なく洗われたイザベルは、身体の奥に残る火照りに寄りかかった壁のタイルの冷たさも心地よく、軽く息を喘がせながらもうっとりとしていました。
「さあ、イザベルお嬢様、そのままでは湯冷めしてしまいます。
先に寝室へお行きになって、パットお嬢様のお手入れが終るまで少々お待ちくださいまし」
「え……ええ、そうするわ。
ありがとう、ジェーンさん、こんなに気持ちいいの、初めてよ。
パット、あなたもきっと気に入るわ、だって、ジェーンさん、とっても上手なんですもの」
「そうなの?」
とはいっても、小さな子供でもないのに他人に身体を洗ってもらうなんてバカみたい、と考えていたパットはジェーンに洗われてもくすぐったいばかりで、ちっとも気持ちいいとは思えませんでした。それでもやはり双子とは似ているものなのでしょう、先ほどイザベルの気持ちよがったところを触れられると次第にパットも大人しくなって、彼女の為すがままになっていきました。
「さあ、これでよろしいでしょう。
お嬢様たちのお肌は本当におきれいで、わたくしも磨きがいがございますわ」
「お帰りなさい、パット、どうだった? 気持ちよかったでしょう?」
「なに?……あ、うん……そうね……」
「さあ、お嬢様、お身体を冷やしてはいけませんわ……」
少しボーっとなっていたパットを寝室に連れてきたジェーンは、羽織らせたバスローブの紐を締めようとして、彼女の前に膝をつきました。
「あら? 大変、お嬢様のここ、少し赤くなっていらっしゃいますわ」
「エッ! ホント?」
「ええ、この熱さですもの、きっと汗でかぶれてしまわれたのですね?
痒くなっていらっしゃいませんか?
そうですわ、丁度ここによいお薬がございますから、わたくしが塗って差し上げましょう」
「エエッ!? い、いいわよ、ほっとけば治るから」
「いいえ、たかがかぶれと侮って放っておくのはいけませんわ。
それとも、他に何か思い当たられることがおありなのでしたら、それに相応しいお手当てをせねばなりませんが」
「他に?………ァッ……ううん、そ、そんなのあるわけ、ないじゃない……
ただ、ちょっと恥ずかしいから、それだけよ!」
「あら、ごめんなさい、わたくしったら、つい……
でも、なにしろここは女性にとって大切なところなのですから、もう一度よく確かめさせてくださいまし」
ジェーンに自分の女の子の部分をまじまじと見られた上に、治療のためとはいえ、そこへ直に触れられて薬を塗られる事を思えば、パットが恥ずかしさを覚えるのも当然でしたが、彼女が顔を赤らめた理由は、何もそればかりではありませんでした。
それは、もし自分のあそこが本当にかぶれているのなら、ジェーンが言うように夏の暑さでパンティの中が蒸れたせいなどではなくて、昨日、街の不良少年たちに乱暴されかけた時にあそこを不潔な指で散々に弄くりまわされた挙句、自分より子供とは言えそれをオチンチンなどとバカにして呼ぶにはあまりに凶悪に見えた最後に洗ったのが何時なのかも分からない少年の固くなった性器を擦り付けられて、危うく処女を奪われかけたせいなのか、それともその後、あそこが何ともなっていないか気になって自分で調べた時に、触り過ぎてしまったせいなのか、何れにしても人にはとても言えない理由でそうなったとしか、パットには思えなかったからです。
『そういえば、今日、起きる前に見た夢………ジェーンさんに起こされた時には、あたし、ちゃんと寝間着を着ていたんだから、あれはたしかに夢の中の出来事のはずなのに、まるで本当にあった事みたいに、触られた感触が今もまだあそこに残ってるような気がする……
あたしがあんないやらしい夢を見たのは、やっぱり昨日、あんな目に会ったせいなんだわ。
あんな事があったなんて、誰にも、イザベルにだって、絶対言えやしない……
でも、もしこれ以上断ったら、きっと何かあったんだって、疑われちゃうかもしれない……
ジェーンさんに問い詰められたら、なんて言い訳するの?
それなら、いっそ……』
そんな思いに小さな胸を締め付けられたパットは、ようやく覚悟を決めます。
「あの……ジェーンさん、わがままを言ってごめんなさい。お薬を……お願いします」
「お嬢様? はい、分かりましたわ。
でも、そんなにお顔を赤くされてなくても、女同士なのですもの、恥ずかしがる必要なんてちっともございませんことよ」
ジェーンはエプロンのポケットから小瓶を取り出すと、中からトロリとした液体を指先に垂らしました。
「わたくしも同じ物を使っておりますが、これはとっても効きますのよ。
さあ、塗りやすいように、もう少しおみ足をお開きになってくださいまし……
では失礼して……最初はちょっと沁みるかもしれませんが、我慢してくださいましね」
言われるままにおずおずと股を開いたパットの割れ目にジェーンの指が触れ、薬を塗っていきます。パットが心ならずも他人から受ける性器への接触はこれが初めてではありませんでしたが、やはり自らの肉体をもって知り尽くしている同性からの敏感な部分への触り方はやさしく、安心できました。
けれども、『中にも塗っておかないと効きませんから』と言われ、有無を言うひまもなく割れ目を広げられて陰唇の内側にも薬を塗られていくと、さすがにこんなことを頼んだのをパットは後悔しました。
しかも、『中』とはそれだけでなく、もっと奥までの事だとパットが知った時には、すでにジェーンの指が膣の中にまで挿入されてしまっていました。これまで、あそこにタンポンを入れるのがなんだか恐くて、あの日にもナプキンしか使っていなかった彼女は呻きますが、自分から頼んでおいていまさら拒絶することもできません。
膣内のヒダに薬を塗り込まれていく感触に、パットの脳裏には今朝の夢のことが生々しく甦って、あの時は出せなかった悲鳴が口から洩れそうになりますが、姉妹の見ている手前、あまり大げさにすれば如何にも自分が弱虫に見られそうで、バスローブのすそを持ち上げている手を固く握り締めて耐えるしかありませんでした。
「さあ、お嬢様、終りましたわ」
「あ…ありがとう…ジェーン…さん」
「そうですわ、念のため、イザベルお嬢様にもお手当て、しておきましょうね?」
「エ? わ、わたしも? わたしはいいわ、だって、わたしはなんともないもの」
「いいえ、いけませんわ、お二人は双子なのですもの、きっと体質も似てらっしゃいます。
今は何ともなくても、後で同じようになるかもしれませんわ。
もしお嬢様たちのお身体に不都合でも起きましたら、わたくしが叱られてしまいます。
これは予防にも効目がございますから、わたくしのためとお思いになって、是非そうさせてくださいまし」
「で、でもぉ〜」
「イザベルゥ〜、あたしばっかりなんて、ズルイと思わない?
それに、イザベルが言ったとおり、ジェーンさんはとっても、お上手よ」
「そ、そんなぁ〜、パットのイジワル……」
そんなこんなで、パットばかりかとうとうイザベルまでジェーンの手当を受けさせられてしまいました。彼女のお薬が秘部の粘膜に染み込んでいくにつれて、初めスーっとしていたあそこが後から熱くなっていくのを感じながら、それがこの薬の効き方なのだろうと二人は思っていました。
そして、姉妹はこの館での初仕事のための衣装を着けることになりましたが、用意されたものを見てびっくりしてしまいます。
「あ、あの、ジェーンさん、あたしたちの服は?」
「あら、ごめんなさいまし、お嬢様たちにはまだお知らせしていませんでしたわね?
今夜、お嬢様たちには、お客様たちに楽しんでいただくためのお芝居に出ていただきたいとウイリアム様がおっしゃっておいででした」
「あたしたちのするお仕事って、お芝居なの?
お芝居なんて、わたしにできるかしら?」
「あら、イザベル、あなた、学院祭でやった詩の朗読、とっても上手だったじゃない」
「それなら、あなただって、あの時のスピーチ、堂々としてて、かっこよかったわ」
「でも、いきなりお芝居だなんて……」
「そうよね、練習もなしにできるかしら……」
「お二人とも、ご心配なんて要りませんわ。お嬢様たちはただ舞台に上がって、立っているだけでよろしいのだそうですから。あとは他の者が何とかするそうですわ」
「ふぅ〜ん、そうなの……それで、どんなお話なの?」
「なんでも、アラビアの盗賊にさらわれた、ある国のお姫様にまつわるお話だそうです。
お嬢様たちはそのお姫様の役だとか、ほら、衣装がこちらに」
「エエ〜、衣装って、これ? だって、これって、ただの布切れじゃない」
「あら、でもこれ、とてもスベスベしていてきれい、シルクのシフォンだわ
でも、これじゃ着れないわね。ねえ、ジェーンさん、着るものは他にあるんでしょう?」
「ウフフフフ、驚かれるのもご無理ありませんわね。
では、わたくしが着せて差し上げますので、バスローブを脱いでいただけますか?」
ジェーンが衣装と言ったのは本当に極薄のベールのようなものが数枚あるきりで、姉妹が不思議に思うのも、もっともでした。しかし、それだけに、それをどのように使ったら衣装らしくなるのか興味深々だった二人は、湯浴みの後の裸身を晒して傅く侍女に着付けを全て任せていた昔のお姫様ならいざ知らず、すでに大事なところも見られているとはいえ他人の前でまた裸になるのは気が進まなかったのですが、ジェーンの言うとおりにします。
二人の見ている前で、ジェーンは4枚の大きなベールに鋏を入れていきます。
1枚は細長く3つに断ってその1枚をさらに4つに裁ってそれぞれの一片を筒状にさっと縫い、下腹部の前後に垂らすよう2枚ずつ細紐に通して、姉妹の腰に巻いて下帯にすると、残り2枚の細長い布を真ん中でひねって、ブラ代りに胸を覆いました。そして、もう1枚のベールを2等分したものを上に被せて、トップスにします。あとの2枚には深く切り込みを入れ、腰に結んで、これで完成です。
「さあ、できましたわ」
「スゴイ! あっという間にできちゃった!」
「ジェーンさんのエプロンって何でも入っているのね、まるで魔法のエプロンみたい!」
「ありがとうございます。でも、これはお世話させていただく者のほんの嗜みですわ」
「でも、ホントにこれで全部なの? こんなんじゃ、裸と一緒じゃない?」
「そうよね、これじゃ……透けちゃうわ」
「まあ、そんなことをお気になさるなんて……
そうですわねぇ、こう言えばお分かりいただけますかしら……
お嬢様たちも、肩も露わに背中を大きくあけたものや、透けるように薄いジョーゼット地のフォーマルドレスで着飾った淑女方を御覧になったことがあると存じます。
そのように、肌を多少見せるのは決して恥ずかしいことではなく、むしろレディの魅力を増すものなのでございますわ。お嬢様たちもそろそろレディのお仲間入りをなさっても良いお年頃だとはお思いになりませんか?
それに今夜のお芝居の舞台、アラビアはこの国に比べてとても熱いところなのだとか……
そのためなのでしょう、あちらの国のお姫様は熱さを凌がれるのに、このような薄絹だけで過ごされるのが当たり前だそうですわ。
お嬢様たち、アラビアンナイトに出てくるジニーのようで、お可愛らしくてとてもお似合いでございますよ。はい、ジニーというのはあちらにすむという精霊で、ピーターパンに出てくるティンカーベルのようなものでございます。
それから、お芝居の会場はそんなに明るくございませんし、お胸やお腰のところも布地が重なっていて下は透けませんから、そんなにご心配なさらずとも大丈夫でございますよ」
「そう……なのかしら」
「う〜ん、ジェーンさんがそう言うなら……」
「お気に召していただいて、ようございましたわ。
それでは、お時間も迫ってきておりますので、そろそろ会場へまいりましょう」
双子のいる左翼館4階から今夜の会場のある主館2階への下り階段まで、長い回廊を歩く二人は腰に結んだベールが風をはらんで下腹部がスースーとして、今、自分たちのあそこが剥き出し同然となっているのを感じ、とても頼りない気持ちがしましたが、夏とはいえ夜もすでに深まり空気もだいぶ涼しくなっているはずなのに、こんな薄着でも不思議と肌寒さはなく、それどころか、二人の身体は熱って肌も汗ばみ始めていました。
それは、これから向う場所で初めての仕事がうまくできるかしらと緊張しているせいだと二人は思っていましたが、実は先ほどジェーンに塗られた薬の本当の薬効がじわじわと効き始め、元々敏感な部分の感覚がより一層鋭敏になって、歩くたびに股間に纏わり付く薄衣がさわさわとあそこに触れるくすぐったいような感触が少女たちにそれとは気付かないうちに性的快感を呼び起こし、それで身体が熱ってきていたのだとは知る由もありませんでした。
やがて回廊も終り、階段へのドアが開かれて、そこを通り抜けようとした時、イザベルは背後にクスクスと笑う少女の声をたしかに聞いた気がして振り返りましたが、そこには誰の姿もありません。
この建物はかなり昔のものだと聞いていた彼女は、まさかここには幽霊が住み付いているのかしらと怖くなって、急いで前の二人に追い付くとパットの手をぎゅっと握るのでした。
「さあ、つきましたわ、ここがお芝居の会場でございます。
それでは、わたくしはここでおいとまさせていただきますわ」
「あの……ジェーンさんは一緒にいてくれないの?」
「ジェーンさんが一緒じゃないと、なんだか心細いわ」
「まあまあ、お嬢様たち、まるで子供のようなことをおっしゃって……
では最期に、これからレディになられるお嬢様たちに少しだけご忠告を。
中にはウイリアム様たちがお待ちでいらっしゃいますので、どんなことでも、そのご指示にお従いくださいまし。それから、お客様のなさることに決して逆らわないこと、そうすればみなさま、きっとお優しくしてくだいますわ。
では、明朝……お部屋へお伺いさせていただきます。
それではごきげんよう、お嬢様方」
そういうとドアを開いて姉妹を中へうながしたジェーンは、再びドアを閉めて、自室へと下がって行きました。
中は楽屋のようになっていて、そこにはウイリアムと、他に数人の男たちがいました。
ウイリアムは入ってきた姉妹を値踏みするように見詰め、やがて納得して頷きます。
「ちょうど良いところへ来ましたね、そろそろ前の出し物も終る頃です。
それにしても、ジェーンは相変わらずいい仕事をしてくれている、これならお客様も喜んでくれるでしょう。
もうすぐ出番ですが、その前に、役柄上もう幾つか、小道具を着けていただきます……
しっかりと着けられましたか? では後を向いて……」
「アッ! なっ、なに!?」
「おや、ジェーンから二人の役柄を聞いてませんでしたか?」
「ア、アラビアの、盗賊にさらわれたお姫様の役、なんでしょ?」
「ええ、その通りです。でも、それだけではありませんよ。
そのお姫様は、哀れにも奴隷として売られてしまうのです。
ですからこのようなものも必要なのですよ、お分かりいただけましたか?」
「でも、これって?!」
「パット! さっきジェーンさんが言ってたでしょ?」
「あ……そ、そうね……わ、分かりました、ウイリアムさん」
「お分かりいただけて良かった。では、もう一つだけ注意を。
お二人はこの芝居の主役なのですから、何があろうと、最期まで芝居を続けていただかねばなりません。これだけは守っていただきます。さもないと……
おお、前の舞台が今終ったようです!
ではジョーカー、後は頼んだぞ。
サムソン、ゴリアテ、おまえたちもな……」
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